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王子紙、中国進出の誤算

 王子製紙は今、中国での事業展開に伴うリスクを身をもって学んでいる。

 同社は上海北西部の長江北岸、南通市の新工場で2007年から年産40万トン規模で印刷用紙を量産するはずだった。だが、許可申請の若干の変更として始まったはずの手続きが4年も遅れる事態となり、20億ドルを投じた工場は2010年まで操業できない。

認可取得に4年の歳月

 「日本でも規則は変わるが、まず話し合いがあってのことだ」。王子製紙の篠田和久社長は今回の経験について、こう語る。「中国では、それが予告なしに起こる。もっと透明性が必要だ」。

 中国での事業展開に苦労したことのある経営幹部なら、一様に篠田氏の話に共感するだろう。

 江蘇省の規制当局は2003年、王子製紙の工場建設を許可したが、同じ敷地にパルプ処理工場の増設を希望した同社に対し、中国政府の承認を要求。最終的に許可は下りたものの、同事業の出資比率10%を合弁相手である中国企業に割り当て、共同出資の事業にするという条件付きだった。

 王子製紙は低迷する日本の製紙業界で初めて大規模な海外進出を果たし、立ち上げの難題にもめげず、南通の工場を80万トン規模に拡張する計画を立てている。篠田氏としては120万トンまで規模を拡大したい考えで、費用は約10億ドルに上る見込みだ。

 日本のほかの製紙大手は国内でのコスト削減重視の路線を取っているが、王子製紙には業界の慣行に立ち向かった過去がある。同社は2006年、規模の小さい同業者の北越製紙に対し、前例のない敵対的買収を仕掛け、結局は失敗に終わっている。

 王子製紙が海外進出を図る理由は明白だ。日本国内では紙製品の需要が年率1〜2%程度の伸びにとどまる一方、中国では需要が急増している。古紙や木材チップのコストは昨年50%も急騰した。これは主に中国の需要拡大によるもので、おかげで王子製紙の収益にも悪影響が及んでいる。

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