「中盤情勢でリード? あくまで世論調査なので…」。大阪府知事選で報道各社の情勢分析が出そろった21日、リードが伝えられた橋下徹は、JR新大阪駅近くで街頭演説を終えた後、報道陣の質問に冷静を装った。一緒にいた陣営幹部も「これまでと同じように戦うだけ」と楽観ムードはない。
その理由について、自民府議は「これまでの選挙と戦い方が違う」ことをあげる。政党色を出さずに戦っているため、自民支持者の中には「党としてどこまで本気なのか」と支援を躊躇(ちゅうちょ)する声があるという。また、街頭などでも若い有権者ばかりが目立つため、実際の投票行動に結びつくかを疑問視する声もある。
この日の演説にも焦りがみられ、熊谷貞俊の「府民所得50万円アップ」という政策について「根拠を示していない。ビジネスも経済もまったく知らない学者あがりを大阪府のトップにしていいのか」と批判した。橋下が街頭演説でここまで対決姿勢を明確にするのは珍しく、自民府議は「危機感を感じているのでしょう」とつぶやいた。
一方、「橋下リード」を聞いた熊谷陣営。同行スタッフは熊谷本人には伝えていないといい、「ようやく演説にも自信を持ち始めたのに、余計な雑音を入れたくない」。
熊谷自身もこの日の演説で「サッカーの試合では動けなくなったチームが負ける。後半15分に足が止まらないようにしたい」とアピール。終盤戦に向けて決意を新たにしたが、危機感を強める陣営側では「組織固め」に躍起になっていた。
市議らによる“電話作戦”のノルマを2倍の4000件に増やしたほか、「こんな人を知事にしていいんですか?」と銘打った橋下の過去の発言をまとめたビラを約150万枚作成。折り込みチラシにしたり、橋下の支持層に配布するなど“ネガティブ・キャンペーン”も辞さない構えだ。
橋下が街頭演説で熊谷を批判したという話を聞いた民主府連副幹事長の吉村太一(69)は「正直厳しい情勢だが、選挙戦では先行逃げ切りの方がしんどい。相手も相当追いつめられているのではないか」。
これに対し、2陣営にやや差を付けられた梅田章二陣営の事務局長、谷真琴(58)は「調査は一断面を切り取っただけ。どの新聞でもまだ決めていない人が3、4割いる。『厳しい』というよりも『面白い』という感じ」と、挽回(ばんかい)に向けて強気の姿勢をみせる。
終盤、本人は政策を中心に訴え、陣営では電話作戦を中心に巻き返しを図るというが、谷は、きっぱりとこう言った。
「『追いつき、追い越せ』というのが合言葉。全有権者に政策を届け切ることができれば、勝算はある。最後は手を抜いたところが負けだ」(敬称略)
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