【発明の名称】 |
液晶表示板用の接着性スペーサー、その製法および液晶表示板 |
【発明者】 |
【氏名】酒井 保宏
【氏名】佐々木 令晋
【氏名】若槻 伸治
【氏名】鳥渕 浩伸
【氏名】倉本 成史
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【要約】 |
【課題】電圧保持率が高く、しかも、駆動安定性と液晶配向特性に優れた液晶表示板、これを実現する接着性スペーサーとその製造方法を提供する。
【解決手段】粒子本体表面の少なくとも一部に熱可塑性樹脂を付着させてなる接着性スペーサーにおいて、粒子本体が表面処理された有機質無機質複合体粒子からなるものであり、粒子本体とその表面の熱可塑性樹脂のブロ−オフ帯電量の差の絶対値が100μC/g以上である。液晶表示板はこのようなスペーサーを用いる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】粒子本体表面の少なくとも一部に熱可塑性樹脂を付着させてなる接着性スペーサーにおいて、前記粒子本体が表面処理された有機質無機質複合体粒子からなるものであって、前記粒子本体と熱可塑性樹脂のブロ−オフ帯電量の差の絶対値が100μC/g以上であることを特徴とする、液晶表示板用の接着性スペーサー。 【請求項2】粒子本体となる原料粒子の表面の少なくとも一部に熱可塑性樹脂を付着させる接着性スペーサーの製造方法において、前記粒子本体が表面処理された有機質無機質複合体粒子からなるものであって、前記熱可塑性樹脂として前記原料粒子とのブロ−オフ帯電量の差の絶対値が100μC/g以上である熱可塑性樹脂を用い、前記原料粒子と前記熱可塑性樹脂の粉末を含む混合物に衝撃力を与えることにより、前記熱可塑性樹脂の付着を行うことを特徴とする、液晶表示板用の接着性スペーサーの製造方法。 【請求項3】電極基板間に介在させるスペーサーとして、請求項1に記載の接着性スペーサーが用いられてなる液晶表示板。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、不純物が液晶に混入しにくい液晶表示板用の接着性スペーサー、その製造方法および液晶表示板に関する。 【0002】 【従来の技術】テレビ、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、PHS(携帯情報端末)、カーナビゲーションシステム等の画像表示素子として、液晶表示板(LCD)が広く用いられている。液晶表示板のうちでも、TFT−LCDと呼ばれる液晶表示板は、高速応答や視野角拡大への対応が可能であり、ブラウン管(CRT)からの置き換えを目指して、13インチ以上の大画面TFT−LCDの開発が検討されている。大画面TFT−LCDを製造する際、液晶パネルの製造工程において、基板搬送時、基板切断時、液晶パネルの輸送時に、振動や衝撃が加わって、液晶パネル内部のスペーサーが動いて、下記■および■に示すような、液晶パネルの表示品位低下の問題がある。 【0003】■ 液晶配向の乱れや配向膜の損傷が生じて、光抜けが増加し、コントラストが低下する。 ■ ギャップムラや色ムラが発生する。 そこで、スペーサーの移動・脱落の防止を目的として、スペーサー粒子表面に接着剤をコートした接着性スペーサーが開発されている。接着性スペーサーは、基板上に乾式散布または湿式散布し、加熱(通常はシール樹脂を溶融させる位の温度140〜160℃)することによって、基板に接着、固定される。接着性スペーサーの製造は、簡便に実施できると言う観点から、衝撃力を用いて原料粒子表面を熱可塑性樹脂で被覆する方法が行われている(特開昭63−94224号公報、特開平1−154028号公報、特開平8−328022号公報および特開平9−235527号公報)。接着性スペーサーの製造は、また、熱可塑性樹脂を用いて原料粒子表面をポリマー鎖でグラフト化する方法も行われている(特開平5−188384号公報、特開平5−232480号公報、特開平7−300586号公報、特開平7−300587号公報、特開平7−301810号公報、特開平7−333623号公報、特開平8−43834号公報、特開平8−48979号公報、特開平8−328018号公報、特開平9−244034号公報、特開平9−194842号公報)。 【0004】ところで、液晶表示板には、電圧保持率が高く、しかも、駆動安定性と液晶配向特性に優れていることが求められる。これらの特性は、スペーサーの善し悪しによって影響されることが多い。しかし、従来のスペーサーはこれらの点で未だ満足できないものであった。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明が解決しようとする課題は、電圧保持率が高く、しかも、駆動安定性と液晶配向特性に優れた液晶表示板、これを得させる接着性スペーサーとその製造方法を提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するため、まず、従来の接着性スペーサーにおいて液晶の電気特性や配向特性を低下させている原因を探り、その原因が接着性スペーサーの製造に伴い生じる不純物にあることを見いだした。接着性スペーサーに用いられる熱可塑性樹脂には微量ではあるが、低分子量のポリマーやオリゴマー、モノマー等の不純物が存在し、これらが熱可塑性樹脂を原料粒子に付着させる際に接着性スペーサーに移る。グラフト化等により原料粒子の表面に付着させることが出来なかったポリマーも不純物となることがある。また、衝撃力を利用して原料粒子を熱可塑性樹脂で被覆して接着層を形成するときに、低分子量のポリマーやオリゴマー、モノマー等の不純物が生成する。このような原因により接着性スペーサーに不純物が残存することはグラフト化法と衝撃力利用法の両製造方法に共通であるが、衝撃力を利用して熱可塑性樹脂を原料粒子に付着させる方法の場合は衝撃エネルギーによって熱可塑性樹脂の分解や解重合が生じ、上記不純物が多く副生する可能性がある。これらの不純物はスペーサーを洗浄しても残存しており、完全に除去することが困難である。したがって、不純物は液晶中に溶出しやすく、溶出した不純物が液晶の電気特性の低下(電圧保持率の低下等)や配向特性の低下(プレチルト角の低下)等を引き起こし、液晶表示板の信頼性を低下させていたのである。 【0007】次に、この問題の解決策を種々検討した結果、粒子本体と熱可塑性樹脂の静電引力を積極的に利用すれば良いのではないかと着想した。すなわち、接着性スペーサーが静電引力を発揮すれば、この静電引力で上記不純物を原料粒子表面に引き寄せることができ、液晶中への不純物溶出を抑制することが出来るのではないかと考えた。そこで、粒子本体と熱可塑性樹脂の物理的物性、化学的物性を詳しく検討した結果、接着性スペーサーに静電引力を持たせる手段として、粒子本体と熱可塑性樹脂のブローオフ帯電量の絶対値に差を持たせることに着目して、実験により、これらの解決策が実効を奏することを確認して、本発明を完成した。 【0008】したがって、本発明にかかる液晶表示板用の接着性スペーサーは、粒子本体表面の少なくとも一部に熱可塑性樹脂を付着させてなる接着性スペーサーにおいて、前記粒子本体が表面処理された有機質無機質複合体粒子からなるものであって、前記粒子本体と熱可塑性樹脂のブロ−オフ帯電量の差の絶対値が100μC/g以上であることを特徴とする。本発明にかかる接着性スペーサーの製造方法は、粒子本体となる原料粒子の表面の少なくとも一部に熱可塑性樹脂を付着させる接着性スペーサーの製造方法において、前記接着性スペーサーを製造するために、前記粒子本体が表面処理された有機質無機質複合体粒子からなるものであって、前記熱可塑性樹脂として前記原料粒子とのブロ−オフ帯電量の差の絶対値が100μC/g以上である熱可塑性樹脂を用い、前記原料粒子と前記熱可塑性樹脂の粉末を含む混合物に衝撃力を与えるか、前記原料粒子の表面に前記熱可塑性樹脂をグラフトすることにより、前記熱可塑性樹脂の付着を行うことを特徴とする。 【0009】本発明にかかる液晶表示板は、電極基板間に介在させるスペーサーとして、前記接着性スペーサーが用いられてなる。 【0010】 【発明の実施の形態】<液晶表示板用接着性スペーサー>本発明にかかる接着性スペーサーは、粒子本体表面の少なくとも一部に熱可塑性樹脂を付着させてなる接着性スペーサーである。ここでいう付着とは、熱可塑性樹脂が粒子本体表面の少なくとも一部を単に被覆することでもよく、熱可塑性樹脂が、粒子本体表面の少なくとも一部にグラフトして、粒子本体の表面と化学結合によって結びつけられている状態でもよく、被覆と化学結合との両方が存在していてもよい。 【0011】本発明の接着性スペーサーは、湿式、乾式のいずれの散布方法であっても使用することができるが、接着性スペーサーの凝集がなく、均一に散布することができるので、乾式散布法に特に適する。 〔粒子本体となる原料粒子〕粒子本体となる原料粒子は、液晶表示板に使用する場合に液晶層の厚みを均一かつ一定に保持するものである。原料粒子の平均粒子径は、好ましくは1〜30μm、より好ましくは1〜20μm、最も好ましくは1〜15μmである。平均粒子径が上記範囲を外れると、接着性スペーサーとして用いられないことがある。 【0012】原料粒子の粒子径の変動係数(CV)は、好ましくは10%以下、より好ましくは8%以下、さらに好ましくは6%以下である。粒子径の変動係数が10%を超えると、液晶層の厚みを均一かつ一定に保持することが困難となり、画像ムラを起こしやすくなる。原料粒子の形状は、球状、針状、板状、鱗片状、破砕状、俵状、まゆ状、金平糖状等の任意の粒子形状で良く、特に限定されないが、液晶表示板の隙間距離を均一に一定とする上では球状が好ましい。これは、粒子が球状であると、すべてまたはほぼすべての方向について一定またはほぼ一定の粒径を有することができるからである。 【0013】原料粒子としては、種々のものがあり、特に限定はされないが、たとえば、有機架橋重合体粒子、有機質無機質複合体粒子等が挙げられる。これらの中でも、ビニル系架橋重合体粒子および有機質無機質複合体粒子が、電極基板、配向膜またはカラーフィルターの損傷防止や両電極基板間の隙間距離の均一性を得やすい点で好ましく、有機質無機質複合体粒子が最も好ましい。前記有機架橋重合体粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、ジビニルベンゼンを単独で重合あるいは他のビニル単量体と共重合させて得られるジビニルベンゼン架橋樹脂粒子(特開平1−144429号公報参照)等が挙げられる。 【0014】前記有機質無機質複合体粒子は、有機質部分と無機質部分とからなる複合粒子である。この有機質無機質複合体粒子において、前記無機質部分の割合は、特に限定はされないが、たとえば、前記有機質無機質複合体粒子の重量に対して、無機酸化物換算で、好ましくは10〜90wt%、より好ましくは25〜85wt%、より好ましくは30〜80wt%の範囲である。無機質部分の割合を示す無機酸化物換算とは、有機質無機質複合体粒子を空気中などの酸化雰囲気中で高温(たとえば1000℃)で焼成した前後の重量を測定することにより求めた重量百分率で示される。有機質無機質複合体粒子の無機質部分の割合が、無機酸化物換算で前記範囲を下回ると、有機質無機質複合体粒子が軟らかくなり、電極基板への散布個数が増えることがあり、また、前記範囲を上回ると、硬すぎて配向膜の損傷やTFTの断線が生じやすくなることがある。 【0015】このような有機質無機質複合体粒子としては、特に限定はされないが、たとえば、有機ポリマー骨格と、前記有機ポリマー骨格中の少なくとも1個の炭素原子にケイ素原子が直接化学結合した有機ケイ素を分子内に有するポリシロキサン骨格とを含み、前記ポリシロキサン骨格を構成するSiO2 の量が10wt%以上である、有機質無機質複合体粒子等を挙げることができる。有機ポリマー骨格としては、ビニル系ポリマーがギャップコントロールを制御できる高復元性を与えるため、好ましい。有機質無機質複合体粒子は、染料および/または顔料を含むことで着色されていてもよい。 【0016】有機質無機質複合体粒子の製造方法としては、特に限定されないが、たとえば、縮合工程と重合工程と熱処理工程とを含む下記の製造方法が挙げられる。縮合工程は、ラジカル重合性基含有シリコン化合物を用いて加水分解・縮合する工程である。ラジカル重合性基含有シリコン化合物は、次の一般式(1):【0017】 【化1】
【0018】(ここで、Ra は水素原子またはメチル基を示し;Rb は、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rc は、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)と、次の一般式(2):【0019】 【化2】
【0020】(ここで、Rd は水素原子またはメチル基を示し;Re は、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)と、次の一般式(3):【0021】 【化3】
【0022】(ここで、Rf は水素原子またはメチル基を示し;Rg は、置換基を有していても良い炭素数1〜20の2価の有機基を示し;Rh は、水素原子と、炭素数1〜5のアルキル基と、炭素数2〜5のアシル基とからなる群から選ばれる少なくとも1つの1価基を示す)とからなる群から選ばれる少なくとも1つの一般式で表される化合物またはその誘導体である。重合工程は、縮合工程中および/または縮合工程後に、ラジカル重合性基をラジカル重合反応させて粒子を得る工程である。 【0023】熱処理工程は、重合工程で生成した重合体粒子を800℃以下の温度で乾燥および焼成する工程である。熱処理工程は、たとえば、10容量%以下の酸素濃度を有する雰囲気中で行われる。縮合工程、重合工程および熱処理工程から選ばれる少なくとも1つの工程中および/または後に、生成した粒子を着色する着色工程をさらに含んでいてもよい。原料粒子は、染料および顔料からなる群から選ばれる少なくとも1つ等を含むことで着色されていてもよい。その色は、光が透過しにくいか、または、透過しない色が、接着性スペーサー自身の光抜けを防止でき画質のコントラストを向上できる点で好ましい。光が透過しにくいか、または、透過しない色としては、たとえば、黒、濃青、紺、紫、青、濃緑、緑、茶、赤等の色が挙げられるが、特に好ましくは、黒、濃青、紺色である。 【0024】なお、染料および/または顔料は、単に原料粒子に含まれるものでもよく、あるいは、染料および/または顔料と粒子本体を構成するマトリックスとが化学結合によって結び付けられた構造を有するものでもよい。接着性スペーサーは、粒子本体と熱可塑性樹脂とのブローオフ帯電量の絶対値に差を付けたものである。粒子本体のブローオフ帯電量は、粒子本体となる原料粒子に表面処理を施すことによって調節することも出来る。このような表面処理の方法については、特に限定はなく、原料粒子の核となる核粒子に対して、アルミニウムオキシドやアルミニウムキレート化合物等の有機アルミニウム化合物を用いる表面処理;1〜3級のアミノ基含有シランカップリング剤を用いるアミノ基表面処理;フェニルトリメトキシシラン等のフェニル基含有シランカップリング剤を用いるフェニル基表面処理等する方法を挙げることができる。表面処理方法としては、第2の接着性スペーサーに用いる原料粒子についての後述する表面処理法も採用することが出来る。核粒子としては、原料粒子として挙げた前述のものがそのまま用いられる。 【0025】接着性スペーサーの原料粒子として、表面にアミノ基を有するものが使用できる。たとえば、表面にアミノ基を有する架橋重合体粒子、表面にアミノ基を有する有機質無機質複合体粒子等が挙げられる。これらの中でも、表面にアミノ基を有する架橋重合体粒子や有機質無機質複合体粒子が、電極基板、配向膜またはカラーフィルターの損傷防止や両電極基板間の隙間距離の均一性を得やすい点で好ましい。表面にアミノ基を有する架橋重合体粒子としては、表面にアミノ基を有するビニル系架橋重合体粒子が特に好ましい。表面にアミノ基を有する原料粒子は、たとえば、有機架橋重合体粒子、有機質無機質複合体粒子等の核粒子とアミノ基含有表面処理剤とを反応させる方法(表面処理法。詳しくは後述);少なくとも1種のアミノ基含有化合物を含む原料を粒子化する方法、たとえば、アミノ基含有単量体を用い共重合反応を行って、表面にアミノ基を有する架橋重合体粒子や有機質無機質複合体粒子を製造する方法(アミノ基含有単量体共重合法。詳しくは後述)等により製造される。 【0026】上述の原料粒子のブローオフ帯電量は、一般に、+2000〜−2000μC/g程度であり、好ましくは+1500〜−1800μC/g程度、最も好ましくは+50〜−1500μC/g程度である。以下では、原料粒子表面にアミノ基を導入するための、上述した表面処理法とアミノ基含有単量体共重合法について詳しく説明する。 <表面処理法>これは、架橋重合体粒子、有機質無機質複合体粒子等の核粒子とアミノ基含有表面処理剤とを反応させることによって、原料粒子表面にアミノ基を導入する方法である。 【0027】表面処理法で用いられるアミノ基含有表面処理剤としては、アミノ基を含有するアルコキシシラン化合物であれば特に限定はなく、たとえば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ベンジル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−メチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ジメチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよびこれらシラン化合物のメトキシ基がエトキシ基に置換されたトリエトキシシラン化合物や、メチルジエトキシシラン化合物等のアミノ基含有シランカップリング剤を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。 【0028】核粒子とアミノ基含有表面処理剤とを反応させる方法については、従来公知の方法が採用され、特に限定はなく、たとえば、以下に示す方法を挙げることができる。 ■ アミノ基含有表面処理剤を含む処理液中に核粒子を浸漬した後、そのまままたは濾過した上で、乾燥する。 ■ アミノ基含有表面処理剤を含む処理液を核粒子に噴霧または塗布し乾燥する。 ■ アミノ基含有表面処理剤を気化させ、そのガスを核粒子と接触させる。 【0029】使用されるアミノ基含有表面処理剤の量は、特に限定されないが、核粒子の重量に対して、好ましくは0.1〜500重量%、さらに好ましくは0.5〜100重量%、最も好ましくは1〜50重量%である。これらの範囲内にあると表面処理効果が高いが、前記範囲を外れると表面処理効果が低くなるおそれがある。乾燥温度および乾燥時間は特に限定されない。乾燥温度は40〜250℃が好ましく、60〜200℃がさらに好ましい。乾燥時間は、10分間〜12時間が好ましく、30分間〜5時間がさらに好ましい。乾燥温度や乾燥時間が前記範囲を外れると表面処理効果が低下するおそれがある。 【0030】<アミノ基含有単量体共重合法>これは、アミノ基含有単量体を用いて共重合する方法である。表面にアミノ基を有する架橋重合体粒子を製造するために用いられるアミノ基含有単量体としては、たとえば、N,N−ジメチル−アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル−アミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有ビニル系モノマー等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。これらのアミノ基含有単量体を、たとえば、(メタ)アクリル酸エステルや、スチレン、ジビニルベンゼン等のビニル系モノマー等と共重合させることによって、表面にアミノ基を有する架橋重合体粒子を製造する。 【0031】表面にアミノ基を有する有機質無機質複合体粒子を製造するために用いられるアミノ基含有単量体としては、たとえば、前記表面処理法で用いられるアミノ基含有表面処理剤等を挙げることができ、これらが1種または2種以上使用される。このアミノ基含有表面処理剤等を、たとえば、前述の一般式(1) 、(2) または(3) 式で示すシリコン化合物と併せて用いて、有機質無機質複合体粒子の製造方法として前述した方法を行うことによって、表面にアミノ基を有する有機質無機質複合体粒子を製造する。〔熱可塑性樹脂〕熱可塑性樹脂は、粒子本体となる原料粒子の表面の少なくとも一部、すなわち、その表面の一部または全体に付着して、粒子本体の表面に熱可塑性樹脂の接着層を形成させるものである。この接着層は、粒子本体を単に被覆するだけであってもよく、粒子本体表面と化学結合していてもよく、被覆と化学結合の両方が存在していてもよい。この接着層は原料粒子と電極基板間の接着剤として作用する。 【0032】熱可塑性樹脂としては、たとえば、エチレン性不飽和単量体の単独重合体または共重合体を含む樹脂等を挙げることができる。上記エチレン性不飽和単量体としては、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸エステル(たとえば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、トリフルオロプロピル(メタ)アクリレート等)等を挙げることができる。 【0033】上記エチレン性不飽和単量体のうちでも、エチレン性不飽和単量体が、芳香族残基(たとえば、フェニル基等)、水素結合可能な残基(エステル基等)を含有していると、配向膜との分子間力が大きくなり、基板への接着力も大きくなるため、好ましい。エチレン性不飽和単量体が(メタ)アクリル酸エステルかスチレンである場合が特に好ましく、コロナ帯電5分後の帯電保持率がより高くなるからでもある。このような意味で、熱可塑性樹脂が、単量体単位として(メタ)アクリレートを必須成分とする(メタ)アクリル系樹脂、単量体単位としてスチレン化合物を必須成分とするスチレン系樹脂、および、単量体単位としてスチレン化合物および(メタ)アクリレートを必須成分とする(メタ)アクリル−スチレン系樹脂からなる群の中から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。 【0034】上記(メタ)アクリル系樹脂としては、スペーサー近傍での光抜けを抑制できる点で、単量体単位として炭素数6以上のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを45wt%以上(好ましくは50wt%以上、さらに好ましくは60wt%以上)含有する(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。(メタ)アクリル酸エステルやスチレンを重合して熱可塑性樹脂を製造する場合、ソープフリー重合することが特に好ましい。ソープフリー重合によれば、界面活性剤等の導電性不純物が少なく、ポリマーの分子量が高くなり、不純物の液晶中への溶出が少なくなるため、液晶表示板の信頼性がより向上し、電圧保持率が大きくなり易いからである。 【0035】熱可塑性樹脂は、上記のものに限定されない。たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;各種ポリアミド;各種ポリカーボネート;各種エポキシ樹脂等も熱可塑性樹脂として使用できる。熱可塑性樹脂としては、上記に挙げたものが1種または2種以上使用される。熱可塑性樹脂のガラス転移温度は、130℃以下が好ましく、120℃以下がさらに好ましい。熱可塑性樹脂の融解温度は、180℃以下が好ましく、150℃以下がさらに好ましい。上に述べた熱可塑性樹脂は、一般に、−10〜−2000μC/g程度、好ましくは−50〜−1800μC/g程度、最も好ましくは−100〜−1500μC/g程度のブローオフ帯電量を有し、コロナ帯電5分後の帯電保持率40%以上である。 【0036】熱可塑性樹脂は、染料および顔料からなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことで着色されていてもよい。その好ましい色としては、スペーサーの原料粒子の好ましい色として前述した色が挙げられる。熱可塑性樹脂の着色に使用できる染料および顔料としては、特に限定はなく、たとえば、スペーサーの原料粒子の着色に使用できる染料および顔料として前述したもの等を挙げることができる。熱可塑性樹脂の重量割合は、特に限定はされないが、粒子本体に対して、好ましくは0%を超え30%以下、より好ましくは0.1〜25%、最も好ましくは0.5〜20%である。熱可塑性樹脂の重量割合が30%を超えると、液晶表示板の画質低下を招く恐れがある。一方、熱可塑性樹脂の重量割合が少ないと、接着性が低下する。 【0037】粒子本体表面の少なくとも一部に付着する熱可塑性樹脂の厚みは、特に限定はされないが、粒子本体の半径よりも小さいことが必須で、好ましくは粒子本体の半径の1/2以下であり、好ましくは0.001〜1μmの範囲、さらに好ましくは0.01〜0.5μmの範囲である。厚みが上記範囲より小さいと、接着性が低下する恐れがあり、また、厚みが上記範囲より大きいと、配向膜やカラーフィルター等を覆う面積が広くなって、液晶表示板の表示品位が低下する恐れがある。 〔スペーサーにおける物理的、化学的特性の意義〕本発明にかかる接着性スペーサーは、前述のように、粒子本体と熱可塑性樹脂のブローオフ帯電量の差の絶対値が100μC/g以上であり、この静電引力により、熱可塑性樹脂由来の不純物(低分子量のポリマーや、オリゴマー、モノマーなど)を粒子本体表面に引き寄せて、液晶中への溶出を抑制する。 【0038】本発明にかかる接着性スペーサーは、前述のように、粒子本体となる原料粒子として、表面にアミノ基を含有する原料粒子を用いることで、原料粒子が正電荷を帯びやすくなっている。他方、熱可塑性樹脂は負電荷を帯び易い。そのため、静電引力により、上記不純物を粒子本体表面に引き寄せて、液晶中への溶出を抑制する。本発明にかかる接着性スペーサーでは、上述のように、粒子本体と熱可塑性樹脂の間に静電引力が働くため、粒子本体とこれに付着する熱可塑性樹脂からなる接着層との間の密着性が高まり、強い振動や衝撃を受けても、スペーサーが移動しにくくなる。 【0039】上述のように、接着性スペーサーでは、粒子本体と熱可塑性樹脂のブローオフ帯電量の差の絶対値が重要である。すなわち、粒子本体となる原料粒子と熱可塑性樹脂のブロ−オフ帯電量の差の絶対値は、100μC/g以上であることが必要であり、好ましくは150μC/g以上、さらに好ましくは200μC/g以上、最も好ましくは300μC/g以上であることである。ブロ−オフ帯電量の差の絶対値が大きいほど好ましいのは、この絶対値の大きさに比例して、粒子本体と熱可塑性樹脂との間の静電引力も大きくなるためである。ブロ−オフ帯電量の差の絶対値が100μC/g未満であると、この静電引力が弱いため、熱可塑性樹脂由来の不純物が液晶に溶出してしまうおそれがある。 【0040】粒子本体と熱可塑性樹脂のブロ−オフ帯電量については、両者の帯電量の差の絶対値が100μC/g以上であれば、特に限定はないが、粒子本体および熱可塑性樹脂のブロ−オフ帯電量がいずれも負値である場合や、粒子本体のブロ−オフ帯電量が正値で、熱可塑性樹脂のブロ−オフ帯電量が負値である場合が好ましく、前者の場合がさらに好ましい。粒子本体と熱可塑性樹脂のブロ−オフ帯電量がともに正値である場合は、配向膜への吸着が強すぎて、スペーサー近傍の配向膜が損傷を受け、光抜けが増加し、コントラストが低下するおそれがある。ブローオフ帯電量については、例えば、帯電序列等を参照して、核粒子の表面処理や熱可塑性樹脂の組成を選択することができる。 <接着性スペーサーの製造方法>本発明にかかる接着性スペーサーを製造する方法については、特に限定されないが、好ましいものとして、以下に述べる本発明の製造方法を挙げることができる。 【0041】そして、接着性スペーサーを製造するには、熱可塑性樹脂として、原料粒子とのブロ−オフ帯電量の差の絶対値が100μC/g以上であるものを用いる。本発明にかかる接着性スペーサーの製造方法には、熱可塑性樹脂の付着手段を異にする下記二つの方法がある。 〔衝撃力利用法〕この方法は、原料粒子と熱可塑性樹脂の粉末を含む混合物に衝撃力を与えて、原料粒子表面の少なくとも一部に前記熱可塑性樹脂を付着させることを特徴としている。 【0042】本発明にかかる接着性スペーサーは、この方法によって容易に得られる。この方法で用いられる原料粒子および熱可塑性樹脂については前述した。原料粒子はその表面が表面処理されていてもよい。表面処理の方法についても前述した。粒子本体表面を熱可塑性樹脂の粉末で被覆する場合、熱可塑性樹脂の粉末の平均粒子径は、粒子本体の半径よりも小さいことが必須であり、粒子本体の半径の1/2以下である。特に、その平均粒子径が2μmを超えると、原料粒子の被覆効率が低下するおそれがある。そのため、熱可塑性樹脂の粉末の平均粒子径は、好ましくは2μm以下、より好ましくは1μm以下、最も好ましくは0.5μm以下である。 【0043】原料粒子に対する熱可塑性樹脂の粉末の割合〔(熱可塑性樹脂の粉末/粒子)×100〕については、特に限定はなく、好ましくは0.1〜30wt%、より好ましくは1〜25wt%、最も好ましくは2〜20wt%である。熱可塑性樹脂の粉末の割合が30wt%を超えると、熱可塑性樹脂の被覆層の厚みが大きくなり、溶融した際に電極基板や配向膜やカラーフィルター等を覆う面積が大きくなり、液晶表示板の画質が低下するおそれがある。他方、熱可塑性樹脂の粉末の割合が0.1wt%未満であると、接着性が低下するおそれがある。原料粒子と熱可塑性樹脂の粉末を含む混合物に衝撃力を与える方法としては、特に限定はしないが、高速気流中衝撃法やボールミル法などを挙げることができる。 【0044】高速気流中衝撃法は、たとえば、原料粒子と熱可塑性樹脂の粉末とを混合し、この混合物を気相中に分散させ、衝撃力を主体とする機械的熱的エネルギーを混合物に与えることで熱可塑性樹脂の粉末の少なくとも一部が溶融して、原料粒子の表面に熱可塑性樹脂を付着させる方法であり、簡便かつ効率よく被覆させることができる。高速気流中衝撃法を利用した装置としては、特に限定はされないが、たとえば、奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステムや、ホソカワミクロン(株)製メカノフュージョンシステム、川崎重工業(株)製クリプトロンシステム等を挙げることができる。 〔グラフト化法〕この方法は、原料粒子の表面に熱可塑性樹脂をグラフト化して、原料粒子表面の少なくとも一部に前記熱可塑性樹脂を付着させることを特徴としている。 【0045】本発明にかかる接着性スペーサーは、この方法によって容易に得られる。この方法で用いられる原料粒子は、前述した原料粒子において、表面にエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、ハロアルキル基、シラノール基、アルコキシシリル基、イソシアナート基等の官能基を有するものである。官能基は、原料粒子の表面に1種のみ存在するほか、2種以上共存することもできる。原料粒子を表面処理することによって前記官能基を容易に導入することができる。熱可塑性樹脂は上記官能基と反応する反応性基を有する。反応性基としては、エポキシ基、オキサゾリン基、アジリジン基、カルボキシル基、アミノ基、イソシアナート基、アルコキシシリル基、シラノール基、水酸基等を挙げることができ、1種のみ存在するほか、2種以上共存することもできる。 【0046】原料粒子に対する熱可塑性樹脂の割合は衝撃力利用法と同様である。原料粒子を熱可塑性樹脂でグラフト化する具体的な方法としては、特に限定はされないが、たとえば、原料粒子と熱可塑性樹脂とを無溶媒または溶媒存在下で混合し、原料粒子表面の官能基と熱可塑性樹脂中の反応性基とが反応する温度に加熱することにより行われる。これとは別に、熱可塑性樹脂となる重合性基や重合開始基を有した単量体を原料粒子の表面で重合させて熱可塑性樹脂をグラフトさせてもよい。 <液晶表示板>本発明にかかる液晶表示板は、従来と同様、たとえば、第1電極基板と、第2電極基板と、スペーサーと、シール材と、液晶とを備えている。第1電極基板は、第1基板と、第1基板の表面に形成された第1電極とを有する。第2電極基板は、第2基板と、第2基板の表面に形成された第2電極とを有し、第1電極基板と対向している。このスペーサーは、液晶表示板用接着性スペーサーであり、第1電極基板と第2電極基板との間に介在してこれら両電極基板間の間隔を保持する役目をする。この間隔はスペーサーの粒子径とほぼ同じである。シール材は、第1電極基板と第2電極基板とを周辺部で接着する。液晶は、第1電極基板と第2電極基板との間に封入されており、第1電極基板と第2電極基板とシール材とで囲まれた空間に充填されている。 【0047】本発明の液晶表示板は、従来の液晶表示板において、従来のスペーサーの代わりに、本発明にかかる前記接着性スペーサーを電極基板間に介在させて電極基板の間隔を保持させたものである。液晶表示板には、電極基板、シール材、液晶など、スペーサー以外のものは従来と同様のものが同様のやり方で使用することができる。電極基板は、ガラス基板、フィルム基板などの基板と、基板の表面に形成された電極とを有しており、必要に応じて、電極基板の表面に電極を覆うように形成された配向膜をさらに有する。シール材としては、エポキシ樹脂接着シール材などが使用される。液晶としては、従来より用いられているものでよく、たとえば、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキセン系、フッ素系などの液晶が使用できる。 【0048】液晶表示板を作製する方法としては、たとえば、接着性スペーサーを面内スペーサーとして2枚の電極基板のうちの一方の電極基板に均一に散布したものに、本発明で用いられる粒子本体をシール部スペーサーとしてエポキシ樹脂等の接着シール材に分散させた後、もう一方の電極基板の接着シール部分にスクリーン印刷などの手段により塗布したものを載せ、適度の圧力を加え、140〜160℃の温度で1〜60分間の加熱により、接着シール材を加熱硬化させた後、液晶を注入し、注入部を封止して、液晶表示板を得る方法を挙げることができるが、液晶表示板の作製方法によって本発明が限定されるものではない。面内スペーサーとしては、接着性スペーサーの中でも、前述のように着色されたものがスペーサー自身の光抜けを生じにくいので好ましい。 【0049】液晶表示板を作製するのに当たって、接着性スペーサーの散布方法は、湿式、乾式のいずれであってもよいが、乾式散布した場合に、接着性スペーサーの凝集が起きにくく、均一に散布しやすい。本発明にかかる液晶表示板は、上記接着性スペーサーを用いたものであるため、基板への接着力が強く、スペーサーの移動が少なくなって、液晶層の厚みが均一化され、色ムラが発生せず、表示品位が高くなる。しかも、熱可塑性樹脂由来の不純物(低分子量ポリマー、オリゴマー、モノマー)の液晶中への溶出が抑制されるため、信頼性の高い液晶表示板となる。特に不純物の侵入を嫌うTFT−LCDにおいて、駆動安定性等の信頼性が高まって有用であり、さらに、接着性が高いためスペーサーの移動が防止され、液晶配向特性等の表示品位が向上する。したがって、振動や衝撃のかかり易い用途、たとえばカーナビゲーション等の車載用液晶表示板や、耐振動性および耐衝撃性が要求される12インチ以上のモニター用等の大型液晶表示板に好適に使用されるが、従来の液晶表示板と同じ用途、たとえば、テレビ、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、PHS(携帯情報端末)などの画像表示素子として使用してもよい。 【0050】 【実施例】以下に、本発明の実施例と比較例とを示すが、本発明は下記実施例に限定されない。以下の例中、原料粒子の平均粒子径と粒子径変動係数、粒子本体と熱可塑性樹脂のブローオフ帯電量、液晶表示板の駆動安定性、電圧保持率および液晶配向特性は、以下の方法で測定したものである。 <平均粒子径と粒子径の変動係数>試料を電子顕微鏡により観察して、その撮影像の任意の試料200個の粒子径を実測し、次式に従って、平均粒子径、粒子径の標準偏差および粒子径の変動係数を求めた。 【0051】 【数1】
【0052】 【数2】
【0053】 【数3】
【0054】<ブローオフ帯電量>鉄粉(商品名:DSP−128、同和鉄粉工業社製)を19(g)秤取し、試料を1(g)秤取して、これらをガラス容器に入れ、軽く混合した後、ペイントシェーカーで10分間激しく振とうして摩擦帯電させた。この混合物を0.2(g)秤取し、ステンレス網(綾織、400mesh)を張ったファラデーケージに入れ、5分間経過後にブローオフ粉体帯電量測定装置(MODEL TB−200、東芝ケミカル社製)を用い、窒素ガス圧力を1kg/cm2 に設定して、混合物の吹き飛しを開始した。吹き飛し開始から1分後(または値が飽和に達した後)のステンレス網上に残った鉄粉の電荷量F(C)から次式より試料1(g)当たりの帯電量を算出し、ブローオフ帯電量Q(C/g)とした。 【0055】Q=−F/(0.2×1/19) なお、ブローオフ帯電量の値の符号(プラスまたはマイナス)は、ステンレス網上に残った電荷の逆の符号が試料の符号となる。 <駆動安定性>液晶表示板を作動状態で50℃、1000時間駆動させた後、表示品位を評価した。 <電圧保持率>一対のパターン化されたITO電極付きガラス基板上にポリイミド配向膜を形成し、ラビング処理を行った後、TN配向となるように貼りあわせ液晶セルを作製した。次に、液晶電圧保持率測定システムを用いて、25℃において、初期の電圧保持率を測定して、電圧保持率が90%以上あるのを確認後、50℃、500時間後の電圧保持率(測定温度:25℃)を測定した。 <液晶配向特性>液晶表示板を駆動させた時の光抜けやざらつき感を目視で観察し、評価した。 <実施例1−1>γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランおよびビニルトリメトキシシラン(45/55重量比)を使用して、アルコキシシリル基の共加水分解・重縮合と、二重結合のラジカル重合を行うことにより、白色の有機質無機質複合体粒子(1−1)を得た。 【0056】この複合体粒子(1−1)は、平均粒子径5.0μm、粒子径変動係数3.2%、ポリシロキサン骨格の割合が、複合体粒子(1−1)の重量に対して、SiO2 換算量で55wt%(空気中1000℃で焼成した場合)であった。次に、複合体粒子(1−1)をトルエン−メタノール中に分散させた複合体粒子分散体(1−1)に対して、複合体粒子(1−1)に対して20重量%のアルミニウムアセチルアセトネートを添加し、65℃で加熱混合した。この混合物を冷却後、混合物中に含まれるトルエンおよびメタノールをエバポレーターを用いて加熱しながら留去した。得られた残留物を150℃で2時間真空乾燥した後、トルエンおよびメタノールで数回洗浄し、この残留物を濾過、乾燥し、解砕を行って、表面処理粒子(1−1)を得た(平均粒子径5.0μm、変動係数3.5%)。 【0057】次に、原料粒子としての表面処理粒子(1−1)35gと、熱可塑性樹脂としてのメチルメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート(35/65重量比)の共重合体(1−1)5gとを準備した。なお、表面処理粒子(1−1)のブローオフ帯電量は負値で、共重合体(1−1)のブローオフ帯電量も負値であり、これらのブローオフ帯電量の差の絶対値は329μC/gであった。表面処理粒子(1−1)と共重合体(1−1)とを混合した後、奈良機械製作所(株)製ハイブリダイゼーションシステムNHS−0型を使用し、高速気流中衝撃法により表面処理粒子(1−1)の表面を、共重合体(1−1)で被覆処理することにより、接着性スペーサー(1−1)を得た。 【0058】この接着性スペーサー(1−1)をスペーサーとして用いて、液晶セル(1−1)を作製し、その電圧保持率(50℃、500時間後)を測定したところ、98%であり、電圧保持率の変化はほとんどなかった。次に、接着性スペーサー(1−1)を用いて13インチTFT液晶表示板である液晶表示板(1−1)を作製し、所定電圧を印加したところ、液晶表示板(1−1)の駆動安定性は長期間安定であり、液晶の配向特性も良好レベルであった。 <実施例1−2〜1−4>実施例1−1において、アルミニウムアセチルアセトネートの代わりに表1にそれぞれ示す表面処理剤を用いて、実施例1−1と同様にして表面処理粒子(1−2)〜(1−4)を製造した。得られた表面処理粒子(1−2)〜(1−4)と表1に示す熱可塑性樹脂とを用い、実施例1−1と同様にして高速気流中衝撃法を行い、接着性スペーサー(1−2)〜(1−4)を得た。なお、実施例1−4では、複合体粒子(1−1)の代わりに、複合体粒子(1−1)を塩基性染料であるメチレンブルーで染着した濃青色粒子を用いた。表1には、用いた表面処理粒子および熱可塑性樹脂のブローオフ帯電量の値の符号(プラス+またはマイナス−)、これらのブローオフ帯電量の差の絶対値を記載した。 【0059】得られた接着性スペーサー(1−2)〜(1−4)を用いて、実施例1−1と同様にして、液晶セル(1−2)〜(1−4)および13インチのTFT液晶表示板である液晶表示板(1−2)〜(1−4)を作製した。実施例1−1と同様にして、電圧保持率(50℃、500時間後)を測定し、液晶表示板の駆動安定性および液晶の配向特性を評価した。結果を表2に示す。表2には実施例1−1の結果もあわせて記載した。 【0060】 【表1】
【0061】 【表2】
【0062】<実施例1−5および1−6>これらの実施例1−5および1−6は、本発明の技術範囲からは外れる参考技術である。実施例1−1において、原料粒子としてジビニルベンゼン−ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート−N,N−ジメチル−2−アミノエチルメタクリレート(60/20/20重量比)のビニル系架橋重合体粒子を用い、熱可塑性樹脂として表3に示したものを用いる以外は実施例1−1と同様にして、接着性スペーサー(1−5)〜(1−6)を製造した。表3には、用いた表面処理粒子および熱可塑性樹脂のブローオフ帯電量の値の符号(プラス+またはマイナス−)、これらのブローオフ帯電量の差の絶対値を記載した。 【0063】得られた接着性スペーサー(1−5)〜(1−6)を用いて、実施例1−1と同様にして、液晶セル(1−5)〜(1−6)および13インチのTFT液晶表示板である液晶表示板(1−5)〜(1−6)を作製した。実施例1−1と同様にして、電圧保持率(50℃、500時間後)を測定し、液晶表示板の駆動安定性および液晶の配向特性を評価した。結果を表4に示す。 【0064】 【表3】
【0065】 【表4】
【0066】<実施例1−7>実施例1−3で得られた表面処理粒子(1−3)をトルエンに分散させた表面処理粒子分散液を調製した。次いで、熱可塑性樹脂としてのメチルメタクリレート−スチレン−2−エチルヘキシルアクリレート−グリシジルメタクリレート(25/30/35/10重量比)の共重合体(1−7)を上記表面処理粒子(1−3)の1/2重量部用意し、トルエンに溶解させた共重合体溶液を調製した。なお、表面処理粒子(1−3)のブローオフ帯電量は負値で、共重合体(1−7)のブローオフ帯電量も負値であり、これらのブローオフ帯電量の差の絶対値は306μC/gであった。上記で得られた表面処理粒子分散液と共重合体溶液とを混合し、2時間室温下で攪拌した。混合液中に含まれるトルエンをエバポレーターを用いて加熱留去した後、150℃で2時間真空乾燥して、表面処理粒子(1−3)に熱可塑性樹脂をグラフト化した粒子を得た。得られた粒子をトルエンを用いてソックスレーで洗浄し、濾過、乾燥し、解砕を行って、接着性スペーサー(1−7)を得た。 【0067】得られた接着性スペーサー(1−7)を用いて、実施例1−1と同様にして、液晶セル(1−7)および13インチのTFT液晶表示板である液晶表示板(1−7)を作製した。実施例1−1と同様にして、電圧保持率(50℃、500時間後)を測定し、液晶表示板の駆動安定性および液晶の配向特性を評価した。電圧保持率(50℃、500時間後)は、95%であり、ほとんど変化しなかった。液晶表示板(1−7)に所定電圧を印加したところ、液晶表示板の駆動安定性は長期間安定であり、液晶の配向特性も良好レベルであった。 <比較例1−1>実施例1−1において、アルミニウムアセチルアセトネートを複合体粒子(1−1)に対して1重量%用いた以外は、実施例1−1と同様にして、比較表面処理粒子(1−1)を製造した。 【0068】次に、原料粒子として比較表面処理粒子(1−1)を用い、熱可塑性樹脂としてメチルメタクリレート−2−エチルヘキシルアクリレート(60/40重量比)の比較共重合体(1−1)を用いる以外は、実施例1−1と同様にして、比較接着性スペーサー(1−1)を得た。なお、比較表面処理粒子(1−1)のブローオフ帯電量は負値で、比較共重合体(1−1)のブローオフ帯電量も負値であり、これらのブローオフ帯電量の差の絶対値は78μC/gであった。得られた比較接着性スペーサー(1−1)を用いて、実施例1−1と同様にして、比較液晶セル(1−1)および13インチのTFT液晶表示板である比較液晶表示板(1−1)を作製した。実施例1−1と同様にして、電圧保持率(50℃、500時間後)を測定し、液晶表示板の駆動安定性および液晶の配向特性を評価した。電圧保持率(50℃、500時間後)は、80%に低下した。比較液晶表示板(1−1)に所定電圧を印加しても表示されず、液晶の配向特性(プレチルト角)の低下が認められた。 【0069】<比較例1−2>実施例1−5において、原料粒子として実施例1−5で用いたものと同様のジビニルベンゼン−ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート−N,N−ジメチル−2−アミノエチルメタクリレートの比較架橋重合体粒子(1−2)を用い、熱可塑性樹脂としてスチレン−ブチルアクリレート−N,N−ジメチル−2−アミノエチルメタクリレート(30/40/30重量比)の比較共重合体(1−2)を用いる以外は、実施例1−5と同様にして、比較接着性スペーサー(1−2)を得た。なお、比較架橋重合体粒子(1−2)のブローオフ帯電量は正値で、比較共重合体(1−2)のブローオフ帯電量も正値であり、これらのブローオフ帯電量の差の絶対値は41μC/gであった。 【0070】得られた比較接着性スペーサー(1−2)を用いて、実施例1−1と同様にして、比較液晶セル(1−2)および13インチのTFT液晶表示板である比較液晶表示板(1−2)を作製した。実施例1−1と同様にして、電圧保持率(50℃、500時間後)を測定し、液晶表示板の駆動安定性および液晶の配向特性を評価した。電圧保持率(50℃、500時間後)は、59%に低下した。比較液晶表示板(1−2)に所定電圧を印加しても表示されず、液晶の配向特性(プレチルト角)の低下が認められた。 <比較例1−3>実施例1−3において、表面処理剤として用いた3−アミノプロピルトリメトキシシランの量を、複合体粒子(1−1)に対して1重量%に変更する以外は、実施例1−3と同様にして、原料粒子である比較表面処理粒子(1−3)を得た。 【0071】次いで、実施例1−7において、表面処理粒子(1−3)の代わりに比較表面処理粒子(1−3)を用い、熱可塑性樹脂としてのメチルメタクリレート−スチレン−2−エチルヘキシルアクリレート−グリシジルメタクリレート(10/30/50/10重量比)の比較共重合体(1−3)を用いる以外は、実施例1−7と同様にして、比較接着性スペーサー(1−3)を得た。なお、比較表面処理粒子(1−3)のブローオフ帯電量は負値で、比較共重合体(1−3)のブローオフ帯電量も負値であり、これらのブローオフ帯電量の差の絶対値は65μC/gであった。 【0072】得られた比較接着性スペーサー(1−3)を用いて、実施例1−1と同様にして、比較液晶セル(1−3)および13インチのTFT液晶表示板である比較液晶表示板(1−3)を作製した。実施例1−1と同様にして、電圧保持率(50℃、500時間後)を測定し、液晶表示板の駆動安定性および液晶の配向特性を評価した。電圧保持率(50℃、500時間後)は、75%に低下した。比較液晶表示板(1−3)に所定電圧を印加しても表示されず、液晶の配向特性(プレチルト角)の低下が認められた。 【0073】 【発明の効果】本発明にかかる、液晶表示板用接着性スペーサーは、熱可塑性樹脂に由来する不純物の液晶への溶出を抑制することができ、液晶表示板の電圧保持率を高め、しかも、駆動安定性と液晶配向特性を良くする。本発明にかかる液晶表示板用の接着性スペーサーの製造方法は、上記接着性スペーサーを簡便かつ効率よく得させることができる。本発明にかかる液晶表示板は、上記接着性スペーサーを電極基板間に介在させているため、電圧保持率が高く、しかも、駆動安定性と液晶配向特性に優れている。
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【出願人】 |
【識別番号】000004628 【氏名又は名称】株式会社日本触媒
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【出願日】 |
平成10年2月9日(1998.2.9) |
【代理人】 |
【識別番号】100073461 【弁理士】 【氏名又は名称】松本 武彦
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【公開番号】 |
特開2002−268070(P2002−268070A) |
【公開日】 |
平成14年9月18日(2002.9.18) |
【出願番号】 |
特願2002−37359(P2002−37359) |
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