【発明の名称】 |
粉体自動分級装置 |
【発明者】 |
【氏名】倉本 成史
【氏名】鳥淵 浩伸
【氏名】若槻 伸治
【氏名】佐々木 令晋
【氏名】藤澤 伸彦
【氏名】蔭山 学
|
【要約】 |
【課題】ふるいの目詰まりや粒子の凝集を起こさずに、大量の粉体を効率良くかつ精密に分級することができる、粉体自動分級装置を提供する。
【解決手段】電成ふるい1と、該電成ふるい1の上流側に1つの空間を構成する上流側ハウジング2と、前記電成ふるいの下流側にもう1つの空間を構成する下流側ハウジング2’と、を備えてなり、原料粉体を液状媒体に分散させた状態で前記電成ふるい1により分級する粉体自動分級装置であって、原料粉体を液状媒体に分散させてなる分散体6を前記電成ふるい1の上流側から下流側に向けて強制的に通過させる駆動力付与手段と、前記分散体6を前記上流側ハウジング2内に循環させる機構と、前記電成ふるい1を下流側から洗浄する機構と、をさらに備えてなる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】電成ふるいと、該電成ふるいの上流側に1つの空間を構成する上流側ハウジングと、前記電成ふるいの下流側にもう1つの空間を構成する下流側ハウジングと、を備えてなり、原料粉体を液状媒体に分散させた状態で前記電成ふるいにより分級する粉体自動分級装置であって、原料粉体を液状媒体に分散させてなる分散体を前記電成ふるいの上流側から下流側に向けて強制的に通過させる駆動力付与手段と、前記分散体を前記上流側ハウジング内に循環させる機構と、前記電成ふるいを下流側から洗浄する機構と、をさらに備えてなることを特徴とする粉体自動分級装置。 【請求項2】前記駆動力付与手段として、超音波印加手段を備えてなる、請求項1に記載の粉体自動分級装置。 【請求項3】前記駆動力付与手段として、前記上流側ハウジング内の分散液を加圧する手段、および/または、前記下流側ハウジング内を減圧する手段を備えてなる、請求項1または2に記載の粉体自動分級装置。 【請求項4】前記電成ふるいを移動および/または回転させる手段をさらに備えてなる、請求項1から3までのいずれかに記載の粉体自動分級装置。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、種々の粒子径を有する粉体を精密に所望の粒度範囲の粒子に分級する粉体自動分級装置に関する。 【0002】 【従来の技術】各種分野で取り扱われる粉体はその種類、目的、用途によって、必要とされる平均粒子径及び粒子径の分布が異なる。特に、液晶表示素子用スペーサー、異方導電フィルム用導電性粒子、液体クロマトグラフィー用充填剤、フィルム用滑剤あるいは静電荷像現像用トナーといった用途に用いられる粉体の場合、粒子径の分布を狭くする必要がある。中でも、液晶表示素子用スペーサーとして用いられる粉体は、粒子径分布を特に狭くする必要があり、種々の方法により作製した原料粉体を目的とする粒子径および粒子径分布となるように精密に分別して使用する必要がある。 【0003】従来、粉体の粒子径分布を狭くするために用いられる分級装置としては、サイクロン、沈降塔、あるいはふるい等を乾式または湿式で用いるものが知られている。しかしながら、旋回流中の遠心力と重力とのバランスを利用して分級を行うサイクロンでは、その構造上、分級ゾーンをショートパスする粒子が存在するため、粒子径分布を狭くすることに限界があり、また少量ではあるものの粒子径分布から大きく外れた粒子が含まれるといった問題を有している。また、媒体中での沈降速度の差を利用して分級する沈降塔においては、温度、振動などの要因によって沈降速度が変化するため、分級精度を上げることが困難であり、また粒子径の小さいものについては、沈降速度が極めて小さいため分級に多大な時間が必要となる。沈降塔を改良し、下方より媒体を供給し上方よりオーバーフローさせる装置も提案されているが、上記した沈降塔と同様の問題を有している。 【0004】一方、ふるいは一定の目開きを通過するか否かで分級を行うものであり、目開き10μm以上のものについては一般に細線を編んだふるいが用いられ、それ以下のものについては金属箔などをエッチングにより微細な孔をあけたものや、電成ふるいと呼ばれる、メッキによって矩形の孔を有するスクリーンを作製したものが用いられている。これらのふるいの中でも、エッチングにより孔をあけたものや電成ふるいは、細線を編んだものと比較して目開きが非常によくそろっており分級の精度を向上させることができ、特に電成ふるいは、エッチングにより孔をあけたものと比較して、厚みより小さな孔加工が可能であり、サイドエッジがなく断面形状がきれいであるという利点を有している。 【0005】しかしながら、ふるいを分級装置として使用した場合、操作中にふるいが目詰まりを起こしたり、粒子が凝集することによって分級速度が著しく低下するといった現象がしばしば観察される。この現象はふるいの目開きが小さくなるほど、また、分級しようとするふるい上の粉体が大量になるほど、顕著にかつ短時間で発生しやすくなり、その結果、分級精度が低下することとなる。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の課題は、ふるいの目詰まりや粒子の凝集を起こさずに、大量の粉体を効率良くかつ精密に分級することができる、粉体自動分級装置を提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、電成ふるいを湿式にて用いる分級装置において、原料粉体を含む分散体を電成ふるいの上流側から下流側へ強制的に通過させるための駆動力付与手段を設けることにより、分級効率を向上させて、粉体粒子が電成ふるいに堆積することを抑制することができ、さらに、前記分散体を前記上流側ハウジング内に循環させる機構を設けることにより、電成ふるいを通過しない粉体粒子を上流側ハウジング内から順次回収して新たな原料粉体を導入することができると同時に、分散体を流動させて、沈降等による粒子の濃度変化、電成ふるいへの粉体粒子の堆積等を防止することができ、さらに、電成ふるいを下流側から洗浄する機構を設けることにより、粉体が電成ふるいに堆積した場合にも容易に粉体を再分散することができることを見いだし、本発明を完成した。 【0008】すなわち、本発明の粉体自動分級装置は、電成ふるいと、該電成ふるいの上流側に1つの空間を構成する上流側ハウジングと、前記電成ふるいの下流側にもう1つの空間を構成する下流側ハウジングと、を備えてなり、原料粉体を液状媒体に分散させた状態で前記電成ふるいにより分級する粉体自動分級装置であって、原料粉体を液状媒体に分散させてなる分散体を前記電成ふるいの上流側から下流側に向けて強制的に通過させる駆動力付与手段と、前記分散体を前記上流側ハウジング内に循環させる機構と、前記電成ふるいを下流側から洗浄する機構と、をさらに備えてなることを特徴とする。 【0009】 【発明の実施の形態】本発明の粉体自動分級装置は、原料粉体を液状媒体に分散させた分散体をふるいに通すことによって湿式法により分級を行うものである。媒体として不活性ガスや空気などを用いる乾式法と比較して、液状媒体を用いた湿式法の方が超音波の照射効率、分散の安定性が高く、ふるいへの付着が少ない。原料粉体を分散させる液状媒体としては、用いるふるいの材質、開孔径、線数、および粉体の性状あるいは粒子径分布などによって適宜選択すればよいが、分級速度を上げるためには、好ましくは粘度が50cP以下、より好ましくは20cP以下のものを用いるとよい。また、液状媒体は原料粉体に対して不活性であることも必要であり、これらを考慮すると、液状媒体としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール類;ヘキサン、オクタン等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;等が挙げられ、これらの中でもメタノールおよびn−ヘキサンが好適である。もちろん、粒子の分散性を向上させるために、液状媒体に各種分散剤を添加してもよい。また、液状媒体として、各種のポリマー(ポリイミド等)の溶液を用いてもかまわない。 【0010】本発明の粉体自動分級装置は、電成ふるいを備えてなる。電成ふるいは、開孔径、単位あたりの開孔数の調整が容易であるばかりでなく、開孔径分布が非常に良好であるため、電成ふるいにより構成される本発明の粉体自動分級装置は、非常に精度の高い分級を可能にするものである。電成ふるいとは、メッキによって矩形の孔を有するスクリーンを作製したものである。電成ふるいの製造方法としては、高精度にクロスライン状に腐食させたガラス原板上に、真空蒸着、スパッタリング等の物理メッキ、あるいは電解メッキ、無電解メッキ等の化学メッキにより導電性被膜を形成した後、腐食部分の溝以外のメッキ層を除去し、これに電解メッキ等の方法でメッシュを形成し、ガラス原板から剥離する方法が挙げられる。このようにして作製されたメッシュはガラス原板から剥離後、必要に応じてさらに電解メッキを施してもかまわない。また、他の製造方法として、ガラス平板上に真空蒸着、スパッタリング等の物理メッキ、あるいは電解メッキ、無電解メッキ等の化学メッキにより導電性被膜を形成し、その被膜上にレジストを塗布した後、所定の形状のパターンを形成し、その後エッチングによりパターン以外の部分を除去し、ガラス原板から剥離後、電解メッキを施す方法も挙げられる。 【0011】電成ふるいの材質としては、金、白金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル及びこれらをベースとする種々の合金が用いられるが、ふるいの耐久性、耐蝕性やメッキ作業の容易さからニッケルを主成分とするものが特に好適に用いられる。電成ふるいは、前述のようにメッキにより線を太らせて孔径をコントロールして製造されるため、線幅とふるいの厚さがほぼ等しい。電成ふるいの開孔径と単位長さ当たりの線数は、粒子の性状あるいは粒子径分布等によって適宜選択することができる。線数が大きい程、ふるい全体に占める開孔部分の面積が大きくなり、ひいては開孔径が小さい場合であっても分級速度が大きくなる。しかしながら、電成ふるいの厚さが薄すぎると、破れやすく、取扱いが困難になると同時に、分級した粉体へ金属系不純物が混入するおそれがある。特に、分級された粒子を液晶表示素子用スペーサー等の電子材料用途に用いる場合、金属系不純物の混入は信頼性の低下の原因になるとともに、粒子径が10μm程度以下と小さいので分級に強いエネルギーが必要であり、電成ふるいが特に破れやすい。一方、線数が小さい場合、相対的にふるいが厚くなるため、強度は強くなるものの、開孔部分の面積が小さくなるので分級速度が小さくなる。その上、ふるいを作製するにあたりメッキ時間が長くなる等の問題もある。また、孔が深くなるため、圧損が大きくなり、粒子が詰まりやすくなる。これらを考慮すると、電成ふるいの線数は、好ましくは50〜3000本/1インチであり、より好ましくは100〜2000本/1インチとし、開孔径は、好ましくは0.5〜500μm、より好ましくは1〜400μmとするのがよい。 【0012】本発明の粉体自動分級装置は、前記電成ふるいとともに、該電成ふるいの上流側に1つの空間を構成する上流側ハウジングと、前記電成ふるいの下流側にもう1つの空間を構成する下流側ハウジングと、を備えてなるものである。このように、電成ふるいと上流側ハウジングと下流側ハウジングとから構成される分級機は、具体的には、例えば、上流側と下流側の2つのハウジング部材に電成ふるいが挟まれて固定されるか、あるいは、1つのハウジング部材の内壁に電成ふるいを密着させてはめ込むことにより上流側と下流側に空間を仕切ったものである。前記下流側ハウジングには、前記電成ふるいを通過した粉体粒子を含む液状媒体の回収機構が設けられている。具体的には、例えば、下流側ハウジングの液状媒体を受器に導く排出管が設けられ、ふるいを通過した粉体粒子はここから液状媒体とともに取り出される。 【0013】本発明の粉体自動分級装置は、前記分散体を前記上流側ハウジング内に循環させる循環機構を備えてなる。具体的には、例えば、上流側ハウジングに分散体の導入管および排出管を繋ぎ、これに循環ポンプ等を接続すればよい。これにより、上流側ハウジング内の分散体は循環可能となり、順次、電成ふるいを通過しない粉体粒子を回収し、新たな原料粉体を導入することができる。また、分散体を循環させることによって、分散体の少なくとも一部を流動させておくことができ、これにより、沈降等による粒子の濃度変化、電成ふるい上での粉体粒子の堆積等を防止することができる。循環に際しての流量については、特に制限はないが、大きすぎる場合、電成ふるいを損傷して分級した粉体へ金属系不純物が混入するおそれがあり、小さすぎる場合、分散体の流動効果が小さくなるため、0.1〜10L/分程度が適当である。 【0014】分散体の流動をさらに効果的に行うには、例えば、分散体の一部を攪拌羽等で攪拌する方法や、ポンプによって吸引・吐出する方法を採用することが好ましい。ポンプによって分散体を吸引・吐出する場合、前記導入管から上流側ハウジングへ戻る分散体が電成ふるい面に衝突するようにし、かつ前記導入管から吐出する方向と電成ふるい面とのなす角度が好ましくは30〜90度、より好ましくは45〜90度となるようにすると、電成ふるいへの粒子の堆積をより効果的に防止することができる。本発明の粉体自動分級装置は、前記電成ふるいを下流側から洗浄する洗浄機構を備えてなる。具体的には、例えば、下流側ハウジングに洗浄媒体の供給管を設け、下流側のハウジングに洗浄媒体を導入できるようにされている。これにより、電成ふるいを下流側から適宜洗浄して、堆積した粉体粒子を取り除き、電成ふるいの目詰まりを防止することができる。特に、電成ふるいのふるい面が鉛直方向である場合(粉体粒子が水平方向に流れる場合)は、この洗浄が非常に有効である。なお、洗浄媒体としては、特に限定されないが、原料粉体を分散させる液状媒体と同じものを使用することが好ましい。 【0015】電成ふるいは非常に薄いため、簡単に傷ついたり、破れたりし、分級された粒子へ金属系不純物が混入するおそれがある。特に分級された粒子を液晶表示素子用スペーサー等の電子材料の用途に用いる場合、金属系不純物の混入は信頼性低下の原因となるため重大な問題である。そのため、電成ふるいの片面あるいは両面にサポート部材を設け、これを介してハウジング部材へ取り付けるようにすると、強度を上げることができるので好ましい。サポート部材の形状(孔の形状、大きさ)については特に限定されないが、例えばリング状のものや、リング状の外枠の中に網目を備えた格子状のものが好ましい。サポート部材の最も好ましい使用形態は、電成ふるいの上流側にリング状のサポート部材を設け、下流側に格子状のサポート部材を設ける形態である。なお、サポート部材が分級の妨げになってはいけないので、サポート部材の開孔率は50%以上であることが好ましい。また、格子状のサポート部材においては、開孔部分の1つの大きさが1cm2以下であることが好ましい。サポート部材は、電成ふるいと接するように設けることが好ましいのであるが、格子状のサポート部材の場合は、外枠のリング部分のみが電成ふるいと接するようになっていることが好ましい。 【0016】さらに、電成ふるいの取り付けに関しては、特に、後述するように超音波振動を印加する場合などには、電成ふるいが擦れて損傷し、分級された粒子へ金属系不純物が混入するおそれがあるため、エラストマー等からなるパッキン部材を介して取り付けることが好ましい。本発明の粉体自動分級装置は、前記分散体を前記電成ふるいの上流側から下流側に向けて強制的に通過させる駆動力付与手段を備えてなる。駆動力付与手段によって原料粉体を電成ふるいの上流側から下流側へ強制的に通過させることにより、分級効率を向上させ、大量の粉体であっても速やかに分級することができる。 【0017】本発明において、前記駆動力付与手段としては特に制限はないが、例えば、その一例として超音波印加手段により超音波を印加する方法が好ましく挙げられる。具体的には、上流側ハウジング内に挿入された超音波照射チップにより媒体に超音波照射を行うものである。超音波を印加しながら分級を行うことで、媒体中に粉体粒子を分散させ、かつ、粉体粒子の凝集を防ぎ、電成ふるいに堆積しにくくすることができる。超音波印加手段を適用する場合、周波数は10k〜100kHzとし、振幅は1〜50μmとすることが好ましい。さらには、周波数は15k〜50kHzであることが好ましく、振幅は5〜30μmであることが好ましい。周波数が10kHzより小さい場合、可聴領域に入るため防音対策等の設備が必要となる。一方、周波数が100kHzを超える場合、媒体中での超音波振動の減衰が大きくなるため、粒子を分散させるのに必要なエネルギーが大きくなり、分級効率が低下するため好ましくない。また、振幅が1μmより小さい場合、粒子を単粒子として分散させることが困難になるばかりでなく、単粒子に分散したものも再凝集する恐れがあり、電成ふるい上に粒子が堆積しやすくなるために分級効率が低下する。一方、振幅が50μmを超える場合、粒子の分散性は向上するものの、電成ふるい自体に大きなシェアがかかるため、電成ふるいが損傷しやすい。特に電成ふるいは箔状であるため、短時間の運転で破損してしまい、分級の精度を低下させたり、電成ふるいの交換等に手間がかかるだけでなく、分級された粉体中への金属系不純物の混入を引き起こす恐れがある。 【0018】超音波印加手段を適用する場合、超音波照射チップの先端と電成ふるいとの間隔は0.05〜10mmとすることが好ましい。さらに好ましくは0.1〜5mmである。前記間隔が0.05mmよりも狭いと、電成ふるいに大きな力がかかったり、外的要因で分級機が振動した場合に電成ふるいと超音波照射チップが衝突することにより、電成ふるいが損傷し、分級した粉体へ金属系不純物の混入の問題がある。また、前記間隔が10mmよりも広いと、電成ふるい上に粒子が堆積しやすくなるため分級効率が低下する。その結果として分級の時間が長くなったり、あるいは短時間で行うためには強い超音波を印加する必要が生じるため、電成ふるいが損傷しやすくなる。 【0019】超音波印加手段を適用する場合、電成ふるいの面積が、超音波照射チップの断面積の0.25〜100倍であることが好ましい。さらに好ましくは1〜25倍である。0.25倍よりも小さい場合には、電成ふるいに対する分散体の相対量が少ないために分級効率が悪くなる。一方、100倍よりも大きい場合には、電成ふるい上に粒子が堆積しやすくなるため、分級効率が低下したり、分級精度が低下する傾向がある。超音波印加手段を適用する場合、超音波照射チップの少なくとも先端部分がセラミックであることが好ましい。超音波照射チップが金属からなると磨耗し易く、あるいは磨耗を防ぐために鋼などの硬い金属を用いると腐食が起こり易く、いずれの場合にも粉体中への金属系不純物の混入のおそれがある。セラミックを用いれば、磨耗や腐食が起こりにくく、しかも仮にセラミックが粉体中へ混入してしまったとしても、信頼性低下の原因とはなりにくい。また、セラミック以外の非金属の材料では、超音波の印加効率が低く実用的ではない。超音波照射チップの先端部分が最も超音波振動が激しいため、少なくとも先端部分がセラミックからなるものであればよいが、より効果的に金属系不純物の混入を防ぐためには、接液部全体がセラミックからなることが好ましく、さらにはチップ全体がセラミックからなることが好ましい。 【0020】上記セラミックとしては、従来公知のものから粉体および媒体の性質に合わせて適宜選択することができ、例えば、アルミナ、マグネシア、ジルコニア、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニア、ベリリア、トリア、スピネルおよびムライト等の酸化物系セラミックス;炭化珪素、炭化タングステンおよび炭化チタン等の炭化物系セラミックス;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化チタンおよびサイアロン等の窒化物系セラミックス等が挙げられる。これらのセラミックスのうち、耐蝕性および強度の点からジルコニア、安定化ジルコニア、部分安定化ジルコニアを用いることが好ましい。 【0021】なお、超音波振動の発振方式としては従来公知の方式を採用すればよいが、中でも、負荷変動に対して振動速度を一定に保つための回路構成を持った定速度型周波数追尾型の発振方式を採用すると、安定的に分散させることができ、かつ電成ふるいに過度のシェアがかからないため、好ましい。本発明においては、前記駆動力付与手段の好ましい例として、さらに、前記上流側ハウジング内の分散液を加圧する手段、および/または、前記下流側ハウジング内を減圧する手段を設ける方法が挙げられる。このように電成ふるいの上流側と下流側で圧力差を設けることにより、分級効率を向上させることができる。上流側ハウジング内の分散液を加圧する場合、その圧力が高すぎると、電成ふるいが損傷して、分級した粉体へ金属系不純物が混入するおそれがあり、低すぎると、上記効果が得られないので、1〜500kPaが好ましく、1〜300kPaがより好ましい。具体的には、上流側ハウジング内の分散液を加圧する手段としては、例えば、前述の分散体の循環機構を利用し、分散体の排出管に調整バルブ(リサイクルバルブ)を設け、排出側の流路を絞る方法が簡便で好ましい。もちろん、上流側ハウジングに別途加圧装置を接続してもよく、例えば、窒素ガス等で加圧する方法を採用することもできる。下流側のハウジング内を減圧する手段としては、下流側ハウジングに減圧装置を接続すればよく、さらに具体的には、例えばトラップを介して真空ラインに接続する方法を採ることができる。このように上流側ハウジング内の分散液を加圧したり、下流側ハウジング内を減圧したりする場合は、特に開孔径が小さい電成ふるいは損傷しやすいので、前述のようなサポート部材を電成ふるいの片面あるいは両面に設けて電成ふるいの強度を上げることが好ましい。 【0022】なお、本発明における駆動力付与手段としては、前述の超音波印加手段、あるいは、上流側ハウジング内の分散液を加圧する手段および/または前記下流側ハウジング内を減圧する手段のいずれか1つのみを採用してもよいが、複数を併用することがより好ましい。本発明の粉体自動分級装置は、さらに、前記電成ふるいを移動および/または回転させる手段を備えてなることが好ましい。分級中に電成ふるいを移動および/または回転させると、粉体粒子が電成ふるいに堆積することを抑制することができ、分級効率をさらに向上させることができる。特に、前述のように超音波振動を印加する場合には、電成ふるいの超音波照射チップと対向する部分には粉体が堆積しにくく、それ以外の部分には堆積しやすいので、電成ふるいの移動および/または回転により、超音波照射チップとの相対的な位置を変更できるようにすることが好ましい。つまり、電成ふるいを移動および/または回転させる手段は、超音波照射チップとは独立に設けることが好ましい。特に、電成ふるいを回転させる手段を設ける場合、電成ふるいの回転軸と超音波照射チップの軸とが一致しないようにすることが好ましい。 【0023】本発明の粉体自動分級装置に適用する分散体としては、その中に含まれる粉体粒子の濃度が好ましくは0.01〜50wt%、より好ましくは0.5〜30wt%であるものがよい。濃度が0.01wt%未満の場合、分級に多大な時間を要することになり、一方、50wt%を越える場合、粉体を液状媒体に分散させることが困難となり、かつ電成ふるいの開孔部を目詰まりさせやすく、分級効率の低下や分級精度の低下を引き起こし、その結果として分級時間が長くなったり、あるいは短時間で行うためには、例えば強い超音波を印加する必要が生じるために電成ふるいが損傷しやすくなる。特に、液晶表示素子用スペーサーなどに用いる10μm程度以下の粒子径の小さいものを分級する場合、電成ふるいを目詰まりさせる傾向が強くなる。また、分級が進行することによって分散体の粒子濃度が変動すると、分級速度や分級精度が変化するおそれがある。そこで、分散体における粒子の濃度を上記範囲とし、かつ濃度の変動を抑えるためには、適宜液状媒体を追加して調整すればよく、そのためには、本発明の粉体自動分級装置には、液状媒体の供給ラインを設けておくことが好ましい。 【0024】本発明の粉体自動分級装置に適用する分散体の温度および/または液状媒体の温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは5〜70℃、さらに好ましくは5〜50℃であるのがよい。この温度範囲にあることで、粒子、媒体および電成ふるいの機能を損なわずに分級を行うことができる。また、熱可塑性樹脂を含有する粒子、例えば表面に熱可塑性樹脂成分を有する固着性スペーサーなどのように温度変化によって性状が大きく変化するものの場合、特に温度変化を小さくすることが好ましい。そのため、本発明の粉体自動分級装置には、液状媒体を保存しておく媒体タンクに温度制御装置を付けて一定温度の媒体を追加供給できるようにしたり、装置の接液部にジャケットを設けて温度コントロールできるようにしたり、あるいは分散体を循環する際に循環ラインに熱交換器を導入して温度コントロールできるようにすることが好ましい。なお、分級中の温度変化の幅は、30℃以内であることが好ましく、20℃以内であることがより好ましい。 【0025】上記した本発明の粉体自動分級装置は、各種粉体を、容易にかつ低コストで精密に、しかもふるいの目詰まりや粒子の凝集を起こさずに、大量の粉体であっても効率よく分級することができる。したがって、得られる粒子の粒子径は極めてそろっている。用いる粉体の平均粒子径、粒子径分布および電成ふるいの開孔径によって、分級により得られる粒子の平均粒子径および粒子径分布は異なるが、粒子径の標準偏差と平均粒子径の比Cvを2〜10%とすることができる。本発明の粉体自動分級装置により分級することのできる粉体としては、特に限定されないが、液晶表示素子用スペーサー、無電解めっき粉体およびその基材粉体、クロマトグラフィー用充填剤、各種標準粒子、免疫学的診断試薬用担体、ブロッキング防止剤、滑剤等の各種粉体を挙げることができる。また、その材質も特に限定されず、有機架橋重合体粒子、無機系粒子、有機質無機質複合体粒子等が挙げられる。 【0026】本発明の粉体自動分級装置で分級して得られる粒子の平均粒子径は、特に限定されず平均粒子径が0.5μm程度の小さなものから、平均粒子径が100μm程度の大きなものまで可能である。中でも、平均粒子径が10μm以下の小さな粒子を得る場合にも、低コストで精密に、しかもふるいの目詰まりや粒子の凝集を起こさずに分級を行うことができるのが本発明の大きな効果である。 【0027】 【実施例】以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨の範囲で設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。 (実施例1)図1および図2に本発明の粉体自動分級装置の一例を示す。図1は、本発明の粉体自動分級装置のうち、電成ふるい、上流側ハウジングおよび下流側ハウジングを含む分級機部分を示す断面図である。図1において、電成ふるい1は、上流側ハウジング2および下流側ハウジング2′によって挟み込まれる形で固定される。電成ふるい1の下流側ハウジング2′側には強度を上げるためのサポート部材3が設けられ、エラストマーからなるパッキン部材4を介してハウジング2、2′に接続されている。上流側ハウジング2内には超音波照射チップ5が挿入され、これにより上流側ハウジング2内の媒体に超音波振動が印加される。上流側ハウジング2内には分散体6の導入管7および排出管8が設けられている。さらに、排出管8には排出側の流路を絞るためのリサイクルバルブ9が設けられており、導入管7からの分散体6の流量とリサイクルバルブ9の開度とを調整することにより、分散体6に圧力をかけることができるようになっている。また、導入管7側には、分散体6にかかる圧力をモニターするための圧力計10が設けられている。下流側ハウジング2′内には、洗浄媒体供給管11および電成ふるい1を通過した粒子を含む液状媒体の排出管12が設けられている。また、ハウジング2、2′の間には、移動および/または回転機構(図示せず)が備えられていて、これにより電成ふるい1は、移動および/または回転が可能となっている。 【0028】次に、本発明の粉体自動分級装置の全体を示す図2により、その好ましい運転手順を説明する。原料粉体は、液状媒体に分散させた分散体6として分散タンク13に仕込まれ、循環ポンプ14によって分級機15の上流側ハウジング2に供給される。超音波照射チップ5により超音波振動を印加し、さらに必要に応じて電成ふるい1を移動および/または回転させることにより、電成ふるい1の開孔径よりも小さい粒子が液状媒体とともに下流側ハウジング2′へと移動する。このとき、循環ポンプ14による分散体6の循環流量および排出管8に設けられたリサイクルバルブ9の開度を調整して上流側ハウジング2内の圧力を制御しながら、分散体6を分散体タンク13から上流側ハウジング2を経由して再び分散体タンク13へと循環させる。 【0029】分散体6を一定時間循環させた後、循環ポンプ14を停止し、導入管7に設けられた供給バルブ16および排出管12に設けられた排出バルブ17を閉め、洗浄媒体供給管11に設けられた洗浄バルブ18を開く。この操作により、洗浄媒体が下流側ハウジング2′内に流入し、電成ふるい1を下流側から洗浄して、電成ふるい1上に堆積している粉体粒子を排出管8から分散体タンク13に戻す。このようにして電成ふるい1を下流側から洗浄した後、洗浄バルブ18を閉め、供給バルブ16および排出バルブ17を開け、循環ポンプ14の運転を再開する。このような操作を一定時間毎に繰り返し行う。 【0030】操作の経過に伴い、上流側ハウジング2内に存在する電成ふるい1の開孔径よりも小さい粒子は減少していき、最終的には電成ふるい1の開孔径を境にして、粒子径の大きいもの(上流側ハウジング2および分散体タンク13内に残留した粒子)と粒子径の小さいもの(下流側ハウジング2′に移動した粒子)とに分級することができる。そして、電成ふるい1を通過した粒子(下流側ハウジング2′に移動した粒子)を含む液状媒体は、下流側ハウジング2′の排出管12から排出され、受器19に集められる。なお、分級が進むにつれて、分散体タンク13内の液量が減少した時には、液状媒体追加バルブ20を開け、媒体タンク21より液状媒体を追加すればよい。また、各バルブの操作は、シーケンス運転によって無人化して行ってもよい。 【0031】 【発明の効果】本発明の粉体自動分級装置によれば、ふるいの目詰まりや粒子の凝集を起こさずに、大量の粉体を効率良くかつ精密に分級することができる。
|
【出願人】 |
【識別番号】000004628 【氏名又は名称】株式会社日本触媒
|
【出願日】 |
平成12年6月16日(2000.6.16) |
【代理人】 |
【識別番号】100073461 【弁理士】 【氏名又は名称】松本 武彦
|
【公開番号】 |
特開2002−1161(P2002−1161A) |
【公開日】 |
平成14年1月8日(2002.1.8) |
【出願番号】 |
特願2000−182140(P2000−182140) |
|