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【発明の名称】 ふるいの開孔径の測定方法
【発明者】 【氏名】倉本 成史

【氏名】鳥淵 浩伸

【氏名】若槻 伸治

【氏名】佐々木 令晋

【氏名】森川 真美子

【氏名】渡嘉敷 真一

【要約】 【課題】簡便な操作により、ふるいを実際に通過しうる粒子径を正確に表したふるいの開孔径を精度良く測定する方法を提供する。

【解決手段】開孔径が0.2〜50μmのふるいの開孔径を測定する方法であって、次の(a)〜(c)の条件を満たす粒度分布を有する粉体を前記ふるいによって分級した後、(a)10%径が予想されるふるいの開孔径よりも大きい(b)90%径が予想されるふるいの開孔径よりも小さい(c)10%径と90%径との差が2μm以上である前記ふるいを通過した粉体の最大粒子径を測定し、その値を前記ふるいの開孔径と定義することを特徴とする、ふるいの開孔径の測定方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】開孔径が0.2〜50μmのふるいの開孔径を測定する方法であって、次の(a)〜(c)の条件を満たす粒度分布を有する粉体を前記ふるいによって分級した後、(a)10%径が予想されるふるいの開孔径よりも大きい(b)90%径が予想されるふるいの開孔径よりも小さい(c)10%径と90%径との差が2μm以上である前記ふるいを通過した粉体の最大粒子径を測定し、その値を前記ふるいの開孔径と定義することを特徴とする、ふるいの開孔径の測定方法。
【請求項2】前記ふるいが電成ふるいである、請求項1記載のふるいの開孔径の測定方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ふるいの開孔径の測定方法に関する。
【0002】
【従来の技術】各種分野で取り扱われる粉体はその種類、目的、用途によって、必要とされる平均粒子径及び粒子径の分布が異なる。特に、液晶表示素子用スペーサー、異方導電フィルム用導電性粒子、液体クロマトグラフィー用充填剤、フィルム用滑剤あるいは静電荷像現像用トナーといった用途に用いられる粉体の場合、粒子径の分布を狭くする必要がある。中でも、液晶表示素子用スペーサーとして用いられる粉体は、粒子径分布を特に狭くする必要があり、種々の方法により作製した原料粉体から目的とする粒子径および粒子径分布となるように精密に分別して使用する必要がある。
【0003】一般に、粉体の粒子径分布を狭くするためには、いわゆる分級装置が用いられる。分級装置としては、サイクロン、沈降塔、あるいはふるい等が乾式または湿式で用いられる。しかしながら、旋回流中の遠心力と重力とのバランスを利用して分級を行うサイクロンでは、その構造上、分級ゾーンをショートパスする粒子が存在するため、粒子径分布を狭くすることに限界があり、また少量ではあるものの粒子径分布から大きく外れた粒子が残存するといった問題を有している。また、媒体中での沈降速度の差を利用して分級する沈降塔においては、温度、振動などの要因によって沈降速度が変化するため、分級精度を上げることが困難であり、また粒子径の小さいものについては、沈降速度が極めて小さいため分級に多大な時間が必要である。沈降塔を改良し、下方より媒体を供給し上方よりオーバーフローさせる装置も提案されているが、上記した沈降塔と同様の問題を有している。
【0004】これに対して、ふるいは一定の目開きを通過するか否かで分級を行うものであり、上記のような問題を有しないため、粒子径の小さいものの分級に適している。中でも、電成ふるいと呼ばれる、メッキによって矩形の孔を有するスクリーンを作製したものは、目開きが非常によくそろっており分級の精度が高く、しかも厚みより小さな孔加工が可能であり、サイドエッジがなく断面形状がきれいであり、優れたふるいである。ふるいを用いて分級を精度よく行うためには、ふるいの開孔径の大きさを正確に把握しておくことが前提となるが、従来知られた測定方法はいずれも問題を有する。例えば、電成ふるいについては、ふるい作製時のメッキ条件(速度・時間)により開孔径の大きさを決定する方法があるが、メッキ作製時の環境により開孔径の大きさが変動しやすいために精度が劣る。また、各種顕微鏡を用いて開孔部の長さを測定する方法では、数多くの開孔部について測定を行う必要があり煩雑である。また、ふるいに光を照射して透過した光量から開孔径の大きさを求める方法や、ふるいに流体を通過させ、その通過性(時間など)を測定することで開孔径の大きさを求める方法では、基準サンプルが必要であるが、線数等が変化した場合には透過した光量や通過性と開孔径の大きさとの関係が大きく変化するため、煩雑な工程が必要となる。さらに、上記のいずれの方法においても、ふるいの開孔径の大きさに分布がある場合には精度が落ちるという問題がある。また、小さい開孔径のふるいの場合、線部分の影響あるいは圧損のために通過しうる粒子径が開孔部分よりも小さくなる傾向があることから、上記の方法によって測定された開孔径は、実際にふるいを通過しうる粒子径を正確に表すものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の課題は、簡便な操作により、ふるいを実際に通過しうる粒子径を正確に表したふるいの開孔径を精度良く測定する方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明のふるいの開孔径の測定方法は、開孔径が0.2〜50μmのふるいの開孔径を測定する方法であって、次の(a)〜(c)の条件を満たす粒度分布を有する粉体を前記ふるいによって分級した後、(a)10%径が予想されるふるいの開孔径よりも大きい(b)90%径が予想されるふるいの開孔径よりも小さい(c)10%径と90%径との差が2μm以上である前記ふるいを通過した粉体の最大粒子径を測定し、その値を前記ふるいの開孔径と定義することを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】本発明では、実際の分級と同様の方法により分級を行ってふるいの開孔径を測定するので、精度良く測定を行うことができる。このとき分級に用いる測定粉体は、次の(a)〜(c)の条件を満たす粒度分布を有するものである。
(a)10%径が予想されるふるいの開孔径(予想開孔径)よりも大きい(b)90%径が予想されるふるいの開孔径(予想開孔径)よりも小さい(c)10%径と90%径との差が2μm以上である予想開孔径が測定粉体の10%径と90%径の間にあり、カット点付近の粒子径を有する粒子の割合が高いため、精度良く測定を行うことができる。また、測定粉体の10%径と90%径との差が2μm以上と大きいため、予想開孔径と実際の開孔径との間に差が生じても精度に影響を与えない。また、測定粉体の粒子径の分布が広いため、ふるいの開孔径のばらつきが大きい場合でも測定が可能である。なお、ここで用いる測定粉体は、その形状が球状であり、アスペクト比が1.5以下であるものが好ましい。
【0008】ふるいの予想開孔径は、電成ふるいについては、線数とふるい作製時のメッキ条件(速度・時間)からおおよそ推測することができる。この他にも各種顕微鏡を用いた観察や、その透光度等からおおよそ推測することが可能である。本発明によりふるいの開孔径の測定を行った後、該ふるいを用いて実際に分級を行うので、測定粉体としては、実際の分級の際に不純物とならないものを用いることが好ましく、実際に分級を行うものと同種のものを用いることが最も好ましい。分級には、有機架橋重合体粒子、無機系粒子、有機質無機質複合体粒子等の粉体が用いられる。
【0009】分級の方法としては、測定粉体を液状媒体に分散させた分散体を用いる湿式法が好ましい。媒体として不活性ガスや空気などを用いる乾式法と比較して、湿式法によった場合の方が超音波の照射効率、分散の安定性が高く、またふるいへの粒子の付着が少ない。特に液晶表示素子用スペーサーなどに用いる10μm程度以下の粒子径の小さいものは凝集力が強いため、乾式法では分散が不十分になる場合がある。測定粉体を分散させる液状媒体としては、用いるふるいの材質、開孔径、線数、および粉体の性状あるいは粒子径分布などによって適切に選択することができる。
【0010】分散体における測定粉体の濃度は、ふるい上への粒子の堆積を防止するため、通常の分級と比較して希薄であることが好ましい。具体的には0.01〜30wt%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜20wt%である。前記範囲よりも濃度が薄い場合、分級に多大な時間が必要となる。上記粉体を用いて分級を行った後、ふるいを通過した粉体の最大粒子径を測定し、その値を前記ふるいの開孔径と定義する。したがって、本発明により測定された開孔径は、実際にふるいを通過しうる粒子径を正確に表すものである。ふるいを通過した粉体の最大粒子径を測定する方法としては、コールターカウンター法、光散乱法、沈降法等の粒度分布測定や、各種顕微鏡を用いた粒子径測定等の一般的な方法を採用することができる。
【0011】本発明で測定の対象となるふるいとは、一定の目開きを通過するか否かで分級を行うためのものであり、開孔径が0.2〜50μmのものであれば特に制限はない。細線を編んだふるい、金属箔などをエッチングにより微細な孔をあけたもの、電成ふるいと呼ばれる、メッキによって矩形の孔を有するスクリーンを作製したもの等が挙げられる。一般に、目開き10μm以上の場合には細線を編んだふるいが用いられ、それ以下の場合には金属箔などをエッチングにより微細な孔をあけたものや、電成ふるいが用いられる。これらは細線を編んだものと比較して目開きが非常によくそろっており分級の精度を向上させることができるものである。特に電成ふるいは、厚みより小さな孔加工が可能であり、サイドエッジがなく断面形状がきれいであるため、開孔径、単位あたりの開孔数の調整が容易であるばかりでなく、開孔径分布が非常に良好であり、非常に精度良く分級を行うことができる。
【0012】電成ふるいの製造方法としては、高精度にクロスライン状に腐食させたガラス原板上に、真空蒸着、スパッタリング等の物理メッキ、あるいは電解メッキ、無電解メッキ等の化学メッキにより導電性被膜を形成した後、腐食部分の溝以外のメッキ層を除去し、これに電解メッキ等の方法でメッシュを形成し、ガラス原板から剥離する方法が挙げられる。このようにして作製されたメッシュはガラス原板から剥離後、必要に応じてさらに電解メッキを施してもかまわない。また、他の製造方法として、ガラス平板上に真空蒸着、スパッタリング等の物理メッキ、あるいは電解メッキ、無電解メッキ等の化学メッキにより導電性被膜を形成し、その被膜上にレジストを塗布した後、所定の形状のパターンを形成し、その後エッチングによりパターン以外の部分を除去し、ガラス原板から剥離後、電解メッキを施す方法も挙げられる。
【0013】図1に、電成ふるいを備えた分級装置の一例を示すが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。図1において、電成ふるい1は、ハウジング上部4およびハウジング下部4′によって挟み込まれる形で固定される。電成ふるい1の強度を上げるためのサポート2が設けられ、エラストマーからなるパッキン3を介してハウジング4、4′に接続されている。ハウジング上部4内には超音波照射チップ5が挿入され、これによりハウジング内の媒体に超音波振動が照射される。ハウジング上部4内には媒体の循環ライン6、6′及び媒体の供給ライン7が設けられている。測定粉体を液状媒体に分散させた分散体はハウジング上部4内に仕込まれ、媒体とともに電成ふるいの開孔径よりも小さい粒子がハウジング下部4′へと移動する。操作の経過に伴い、ハウジング上部4内に存在する電成ふるいの開孔径よりも小さい粒子が減少していき、最終的には電成ふるいの開孔径を境にして、粒子径の大きいもの(ハウジング上部4内に残留した粒子)と粒子径の小さいもの(ハウジング下部4′に移動した粒子)とに分級することができる。
【0014】
【実施例】以下に実施例によりさらに詳細に本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)ニッケル系で予想開孔径5.5ミクロンの電成ふるい(ふるいA)について、図1記載の装置を用いて、球状で平均粒子径が5.21μmで10%径が6.22μm,90%径が4.15μmである粉体1の分級を行った。分級にあたって、粉体の分散媒としてメタノールを用い、分散体濃度が2wt%の条件で5分間分級を行った。
【0015】分級中ハウジング下部に流出した分散体を回収し、分級終了後にコールターマルチサイザーIIE型により粒子径測定を行ったところ、最大粒子径は5.76μmであった。上記粉体1の分級を再度行い、ハウジング下部に流出した分散体の粒子径測定を行ったところ、5.76μmであり、1回目と同じ値となり、再現性が確認できた。
(実施例2)ニッケル系で予想開孔径2.0ミクロンの電成ふるい(ふるいB)について、図1記載の装置を用いて、球状で平均粒子径が2.83μmで10%径が4.52μm,90%径が1.27μmである粉体2の分級を行った。
【0016】分級にあたって、粉体の分散媒としてメタノールを用い、分散体濃度が0.5wt%の条件で10分間分級を行った。分級中ハウジング下部に流出した分散体を回収し、分級終了後にコールターマルチサイザーIIE型により粒子径測定を行ったところ、最大粒子径は2.43μmであった。
(実施例3)ニッケル系で予想開孔径10ミクロンのナイロン製ふるい(ふるいC)について、図1記載の装置を用いて、球状で平均粒子径が9.10μmで10%径が8.21μm,90%径が11.48μmである粉体3の分級を行った。
【0017】分級にあたって、粉体の分散媒としてメタノールを用い、分散体濃度が10wt%の条件で2分間分級を行った。分級中ハウジング下部に流出した分散体を回収し、分級終了後にコールターマルチサイザー11E型により粒子径測定を行ったところ、最大粒子径は10.2μmであった。
(比較例1)実施例1において、粉体1のかわりに、球状で平均粒子径が4.95μmで10%径が5.45μm,90%径が3.22μmである比較粉体1(5%径が5.72μm)の分級を行った。
【0018】分級にあたって、粉体の分散媒としてメタノールを用い、分散体濃度が2wt%の条件で10分間分級を行ったところ、分散体のほぼ全量がハウジング下部に流出した。このハウジング下部に流出した分散体を回収し、コールターマルチサイザーIIE型により粒子径測定を行ったところ、5.4μm以上の領域で分布に不連続な部分が見られ、最大粒子径は5.57μmであった。上記比較粉体1の分級を再度行い、ハウジング下部に流出した分散体の粒子径測定を行ったところ、5.70μmであり、1回目と2回目ではばらつきが大きいことがわかった。このようにばらつきが大きい理由は、比較例1では、ふるいに引っかかる粒子が極めて少なく、開孔径が不正確であるためと考えられる。
【0019】(比較例2)実施例2において、粉体2のかわりに、球状で平均粒子径が3.58μmで10%径が5.16μm,90%径が2.27μmである比較粉体2(95%径が1.66μm)の分級を行った。分級にあたって、粉体の分散媒としてメタノールを用い、分散体濃度が0.5wt%の条件で10分間分級を行ったが、下部ハウジングに流出する液にほとんど粒子は存在せず、最大粒子径を測定することが出来なかった。
(比較例3)実施例3において、粉体3のかわりに、球状で平均粒子径が9.07μmで10%径が8.21μm,90%径が9.98μmである比較粉体3の分級を行った。
【0020】分級にあたって、粉体の分散媒としてメタノールを用い、分散体濃度が10wt%の条件で2分間分級を行ったところ、すべての分散体がハウジング下部に流出した。この、ハウジング下部に流出した分散体を回収し、コールターマルチサイザーIIE型により粒子径測定を行ったところ、比較粉末3と同様の粒度分布を示し、開孔径を求めることが出来なかった。
【0021】
【発明の効果】本発明によると、簡便な操作により、ふるいを実際に通過しうる粒子径を正確に表したふるいの開孔径を精度良く測定することができる。
【出願人】 【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
【出願日】 平成12年7月24日(2000.7.24)
【代理人】 【識別番号】100073461
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 武彦
【公開番号】 特開2002−39936(P2002−39936A)
【公開日】 平成14年2月6日(2002.2.6)
【出願番号】 特願2000−222986(P2000−222986)