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支局長だより:医者に質問しよう=寺田浩章・横浜支局長 /神奈川

 正月が明けてから、風邪をひきました。何となくのどが痛くて、少し寒気がすると思って体温を測ったら、平熱よりも3度近く高い。以前でしたら市販の薬を飲んで、体を温かくして寝ていたところですが、最近は早めに医者にかかることにしています。

 近くの診療所に寄り、念のためにインフルエンザの検査してもらったところ陰性だったため少し安心しました。医者から「薬を数日飲めば大丈夫でしょう。回復が遅いようだったらまた来てください」と言われて、診察は終わりました。

 医者にかかった場合は、質問をするようにしています。今回は風邪でしたので「発熱が続いた場合は、どうしますか」と尋ねたくらいでしたが、疑問や不安な点があったら聞くことが大切です。

 このように思うようになったのは11年前、北九州で一人の医者に出会ってからです。普通の開業医ですが、「医者は偉くもなんともない。患者さんを助けるサービス業」という考えの持ち主でした。白衣は着ず、いすは患者と同じものを使っていました。「患者さんに満足して納得してもらうことが一番大切」と言い、いくつかの治療法を説明し、質問を受けることを喜んでいました。例えば、熱が出て脱水症状がある場合、「口から水分を補給した方が体の負担は小さいけれど、きついのなら点滴を打ちましょうか」と問いかけていました。

 医療不信がある中、患者と医者の関係を探る連載でこの医者を取材し、その後、市民の質問をもとに数人の医者が公開の場で話し合う「患者塾」という試みを始めました。「賢い患者になろう」が一つの狙いでしたが、参加した医者が口々に「患者さんの思いが分かり、私たちの方が勉強になる」と語っていたことが印象的でした。

 医者と患者の関係は対等とは言いがたいところがあります。「忙しいのに、質問して嫌がられたらどうしよう」「信用していないと受け取られないか」と心配して、医者への質問をためらいがちです。しかし、症状をはっきり伝えることで診断も的確になり、会話することによって納得して治療に専念できます。どうしても納得できない場合は、主治医からカルテの写しをもらって、他の医者の診断を受ける「セカンドオピニオン」という方法もあります。すべては勇気を出して質問することから始まります。

 先ほどの医者を中心に九州の地で月1回のペースで開かれてきた「患者塾」は昨年、通算100回を迎えました。初期にかかわった私は、神奈川でも開くことができないかと考えています。

毎日新聞 2008年1月21日

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