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飛び込み出産:北九州で3年半に109件 半数が異常分娩 背景に経済的理由

 経済的な理由などで健診を受けないまま出産間際に医療機関に駆け込む「飛び込み出産」が、5基幹病院を含む北九州市で3年半に109件あり、半数以上が早産などの異常分娩(ぶんべん)で、胎児・新生児の死亡率も通常の約12倍だったことが市医師会の調査で分かった。医師会は「今後、地域で産科医不足が進めば、妊婦の受診機会がますます減り、リスクの高い飛び込み出産は増える可能性がある。行政的支援も含めた対策を考える必要がある」と深刻化への警鐘を鳴らしている。

 同市で20日にあった市民フォーラム「安心してお産ができるまちづくり」(厚生労働省研究班主催)で、九州厚生年金病院(同市)の中原博正医師が報告した。飛び込み出産の実態調査はあまり例がない。

 調査は04年1月~07年6月、同医師会が市立医療センターなど5カ所の基幹病院と、市内の診療所など約30の一次医療機関を対象に実施。飛び込み出産数は基幹病院が分娩総数の1・5%にあたる計97件、一次機関も計12件あった。妊婦の年齢は30代が40%、20代が36%。10代も15%いた。

 うち99件の分析結果によると、半数以上の52件が早産や胎盤早期はく離などの異常分娩。出生1000例に対する死産と新生児死亡数を表す「周産期死亡率」は40で、通常3・3(05年)の約12倍に達した。妊婦健診を一度も受けていないため、妊娠中に異常を発見できず、対策や管理が不十分だったためとみられる。

 また、分べん費用の未払いが約3割に上り、出産後に病院に乳児を置き去りにしたケースも2件あった。医師会は「(妊婦が)経済的、社会的問題を抱えるケースが多い」と分析している。

 総務省と厚労省が昨年実施した緊急調査では、06年に救急搬送された妊婦の受け入れを病院が断った理由として「初診」が148件あり「増加傾向にある」という。ある産科医は「飛び込み出産は非常にリスクが高く、医師や設備に余裕がないと受け入れられないことがある。妊娠したら必ず健診を受けてほしい」と話す。

 津田裕文・北九州産婦人科医会長は「産科医不足が進めば、地域で健診が受けられずに飛び込み出産が増える可能性もある。医療機関だけの対応は限界があり、背景を分析して行政と対策を考えたい」と話している。

【柳原美砂子】

 2008年1月21日

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