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2008年1月22日

 「ふろ上がり古女房に二度惚(ほ)れる」と川柳にある。ふろ上がりの女性が若返るのは間違いないが、身近にあり過ぎて普段気づかない美しさに気づく、その効果が貴重である

庶民文化を象徴する「銭湯文化」は北陸人が築いたといっても過言ではない。東京にあった銭湯タイル画の七割は九谷焼ともいい、江戸東京博物館の「たてもの園」には、経営者が故郷の七尾から大工を呼んで建てた天守閣顔負けの銭湯がある。京都や大阪にも文化財と呼べる銭湯建築が残る

そのお風呂屋さんが重油高、スーパー銭湯の増加で「経営はもう限界」といい、廃業が相次いでいる。銭湯文化の古里・北陸で、このまま衰退していくのを見過ごすのはつらい。廃れさせない努力が必要だし、応援もしたい

数年前、本紙と公衆浴場組合が銭湯川柳を募ったところ、こんな新作が届いた。「久しぶり妻と手をつなぐ風呂帰り」。銭湯「二度惚れ」の力が、ほのぼのと受け継がれていてうれしくなったものだ

目新しいもの、遠くにあるものは立派に見える。が、何事も足もとにある良さを見つける目が大切だ。銭湯は「ふるさと学」の立派な教室になる。


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