中高年の日本人旅行者が中国チベット自治区などで高山病などにかかって死亡するケースが急増しているそうだ。
北京の日本大使館の調べでは昨年五月から十月までの半年間にチベット自治区五人、青海省二人、甘粛省で一人が亡くなっている。うち六人が六十歳以上だという。
どうやら二〇〇六年、チベット自治区と青海省を結び、鉄道として世界最高地点(五、〇七二メートル)を走る青蔵鉄道開通によるツアー人気が事故多発の伏線になっているようだ。過密スケジュール、心臓病などの持病があると高山病を重症化させる例もある。
日本アルプスの立山縦走でも人によっては低酸素などの影響で頭痛、吐き気、顔などにむくみがくる。この立山が三、〇〇〇メートル前後である。それよりも二、〇〇〇メートルも高い世界の屋根を突っ走る鉄道を甘く見てはいけない。
高山病を防ぐには腹の底から深い呼吸をする腹式呼吸のテクニックを身につける必要がある。ゆっくり歩き、決して走ってはいけない。十分に水分を取り、意識的にトイレに通い排せつをしっかり行うことも大事だ(日本勤労者山岳連盟編「海外トレッキング入門」)。
症状が改善しないときはすぐ低地へ。そうしないと呼吸困難に陥る。交通機関の発達で秘境がぐんと身近になった。その分、備えもいる。高所登山の生理学の知識の一つ、二つ持っておかねば。