首相官邸
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平成20年1月17日(木)午後
○ガソリンの暫定税率の問題について

 パネル使用
 これはですね、今日はちょっと、いつもいろいろな方々からご質問等があるものですから、ちょっと国会審議風にパネルを少し用意をさせてもらいました。皆様方のお手元にも資料は配らせていただいておりますので、あと、ご質問の時間もあるでしょうから、簡単にお話をさせていただきますけれども。

 今、25円下がるという話が、盛んに民主党の方からキャンペーン的に流されております。それは確かに、誰だって25円下がると言えば、それだけを取り上げれば、「それは結構ですね」ということになることは、私(官房長官)も否定はいたしません。しかし、どういう問題があるかということだけは、是非皆さん方にご理解をいただきたいなと思うのでありますけれども。

 やはり、まずこれは、ストレートに、国と地方を合わせて、財政収入上の大幅減少になります。国、地方を併せて2兆6,000億、うち地方は9,000億ということでございます。

 例えばこの9,000億、一番どこが大きな影響を受けるかと言うと、別に私(官房長官)が北海道出身だから言うわけではございませんが、県別に見ていくと、北海道が384億円の税収減と、これが最大になります。で、この9,000億に加えまして、更に地方道路整備のための臨時交付金というものもあるわけですね。これもなくなりますと、7,000億円の減になりますので、合計1兆6,000億、地方は減になると。したがいまして、大変大きな影響を受けるということになります。県によりましては、税収の15%以上が減ってしまうということになる。これはもう、税収不足で苦しんでいる自治体の財政を直撃するという問題がまず第一に生じます。

 その結果何が出てくるかというと、これは道路というのは皆さん、このハイウェイばかりではないわけですよね。身近な問題、私(官房長官)の地元で、また地元のことを言ってすみませんが、別に北海道新聞向けにだけ言っているわけではないんですけれども、例えば、札幌市だけで、年間除雪費が100億かかるんです。札幌市だけです。全道でいくと相当かかるわけですよね。こうした除雪も費用が出てこないとか、それから、道路の古い橋の耐震改修もしなければならない。確か去年、アメリカで橋がぼーんと落ちた画面をまだ覚えておりますけれども、ああしたこともできなくなるとか、或いは子供達のガードレールがないばかりに、車が突っ込んで子供達が死んだり、怪我をしたりするという事故だってあります。そういうところにも影響してきたり、それから、特に、大都会で開かずの踏切、今、連続立体交差事業というのがいろいろな所で行なわれておりますが、そういう事業にも、実は道路予算が使われているんですね。

 これなどは、正に、この後に出てくる地球温暖化対策にも、排ガスの問題として非常に大きな影響が出てくるわけであります。そうやって道路だけではなくて、更に地域によっては、じゃあどうしてもこの道路を作らなければならないから、他の予算を削るかということにだってなりかねない。そうすれば、社会保障への影響とか、福祉の方とか、教育予算へのしわ寄せだって出てくるということも、波及的には考えられます。

 それから、3点目の問題点、これも今更言うまでもございませんけれども、地球温暖化問題というのが、私(官房長官)は大変大きな問題としてあると思います。当初から、ガソリンは地球温暖化、ガソリン税はですね、地球温暖化対策を目指してやったわけではございませんけれども、お手元の表をご覧いただければ分かるとおり、実は、その日本の税金、或いはガソリンの価格そのものも、税負担が低いが故に、155円から160円くらいということで、日本は非常に低い数字なんですね、今、上がった上がったと言っても、155円前後。お隣の韓国は193円、今もう200円を超えたそうです。それから、他のこのイギリス、ドイツ、フランス等々は、大体今、240円から230円、或いは220円台というようなことで、日本と比べると、まだまだ数十円高い。その値段差は何かというと、この緑の部分がそうですが、正に税金の負担格差なんですね。これだけあれがあります。だから、細かい数字で恐縮ですけれども、イギリスなどは、小売価格の66%、3分の2が税金、日本はどうかというと、39%、61円分が税金ということであります。アメリカはどうかというと、ここはもう車がないと何も成り立たない国ですから、しかも税金はほとんど取らないという国ですから、これだけ低いのは、アメリカの今の実態なんだろうなと思っております。

 こういうことで、実は、OECDのいろいろな資料を見ると、日本は環境税という言葉は使っておりませんけれども、環境の改善に役立っている税という分類の中に、日本の揮発油税等々は、もう既に計算をされております。ヨーロッパの国々は、当初炭素税と言ったり、或いはガソリン税、灯油税と言ったりしておりますけれども、日本のガソリン税も正にそういう意味では、環境対策税制の中にも入っております。

 それから、もう一つご覧いただきたいのは、一番左端が1980年をとっておりますけれども、その時から日本は、ずうっと変わらないで横ばいなんですね。3枚目の図表をお配りしてありますけれども、日本はずうっと横一線で変わっておりません。それに対して、イギリス、フランス、ドイツ、特に一番今値段が高いのはイギリスですか。ここまで、今上がってきておりますから、1980年を100とすると、今イギリスはガソリンの税額で見ると、1980年と比べると4.5倍くらいになっているわけですね。日本は全然変わっておりません。

 これだけ諸外国は環境ということも考えて、これだけ税額を上げてきているわけです。日本は上げてきていないというようなことを、やはり考えなければいけないんだろうなと思っておりまして、これからサミットが開かれる時に、日本が環境問題を訴える、その時に日本はガソリンの値段を、税金を下げました。油の値段を下げましたと言った時に、はたして諸外国が、日本は環境問題に熱心に取り組んでいるねというふうに見られるかといえば、それは全く正反対の効果しかないんだろうなと思っております。

 それでは、ガソリンの値段が上がった人達への影響はどうなんですかと、ここは正に、昨年の年末12月に入って2回の会議を開き、補正予算或いは本予算の中で、様々な原油価格高騰対策というものを既に打ち出し、発表しているのはご承知のとおりであります。寒い地域では福祉灯油というようなものを自治体がやる場合には、そのかかった財政負担を、できるだけ緩和するために、特別交付税の配分で、自治体の財政を緩和しようといったようなことも既に手を打っているところでございますので、是非、そうした面もご理解をいただければと思います。

 すみません。8分30秒も余計に冒頭喋ってしまいましたことを、お詫びを申し上げます。もし、評判が良ければ、今後こういうものを続いてやりますから、どうぞ、こういうことはもっと説明した方が良いのではないかというご提言でもあれば、また今後、喜んで検討したいと考えます。私(官房長官)の方からは以上であります。


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