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知的障害者に職員が暴力・暴言、柏原の施設を大阪府調査

2008年01月21日

 大阪府柏原市の知的障害者更生施設「高井田苑」で、利用者である重度の知的障害者を殴る、けるなど、職員による暴力的な対応が続いてきたことが、職員や利用者らの証言で分かった。府は昨年末、立ち入り調査に着手。改善を求め近く指導する方針。大阪弁護士会も人権侵害の疑いがあるとみて調査に乗り出した。

 府の調査や職員によると、主導しているのは施設幹部ら中心的な職員。他の利用者や職員に乱暴したり指示に従わなかったりした障害者を、拳や平手でたたくほか、けることもあったという。

 このほか、作業を怠ると胸ぐらをつかんで怒鳴る▽すれ違いざま気晴らし的に「邪魔」と頭をたたく――など、施設内では威圧的な対応が日常的で、幹部職員らは「言うことを聞かないのは、なめられているからだ」と、力で従わせる必要性を説いていたという。

 「犬や猫でもトイレのしつけをすれば、できるようになる」など、幹部が利用者を「動物」や「犬猫」に例えてしつけの必要性を説いたとの証言も複数ある。

 同苑は99年に開所。当時勤務していた職員は、「罰として角材を足に挟んで正座させるなど、開所直後から暴力的な対応は始まっていた」と話す。内心「変だ」と思っている職員も少なからずいるが、上層部の「力わざは必要」という理屈に施設全体では流れがちだったという。

 朝日新聞社の取材に対し久門良也施設長は、暴力は否定。その上で「対等では利用者に言うことを聞いてもらえない。怖いこともないといけない」と話している。

 利用者の身の安全に危機感を抱いた関係者が昨年11月、公益通報者保護法に基づいて大阪府に通報した。府障害保健福祉室は「利用者への支援の仕方にかなり乱暴な点があると確認された。実効性のある再発防止策が必要だ」としており、研修実施などを文書で通知する方針。

 府の調査以降、施設内での暴力はやんでいるという。

 同苑には20〜50代の50人が暮らし、軽作業や生活訓練をしている。大半が重度の知的障害者。職員は約20人。社会福祉法人「武田塾」(田中義郎理事長)が運営している。

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 社会福祉法人武田塾の田中義郎理事長は「分からないことが多いので、府には厳しくチェックして欲しいと伝えている。人権面で、幹部の理解が足りない部分があったのではないか」と話している。

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