小野小町らが登場する「六歌仙」の世界と惟喬(これたか)、惟仁(これひと)両親王の皇位をめぐる争いに題材を取った初世桜田治助作品の219年ぶりの復活上演。国立劇場文芸課補綴(ほてつ)。
惟喬(亀蔵)と惟仁(松也)の両親王が皇位を争う機に乗じ、大伴黒主(菊五郎)は天下を狙う。深草少将(菊五郎)と小町姫(時蔵)は陰謀阻止に必要な宝剣を探すため、江戸の「けだもの店」に五郎又、おつゆという夫婦者として身を潜めている。ある日、五郎又は新しい女房を連れ帰った。おみき(菊之助)という名前だが、実は以前に命を助けた小女郎狐(こじょろうぎつね)の変じた姿であった。
王朝物語から一転して舞台はけもの肉を扱う店に移り、五郎又(深草少将)を挟んで、おつゆ(小町)とおみき(小女郎狐)の恋の騒動が展開される。おみきは前妻のおつゆを気の毒がり、おっとりとしたおつゆも嫉妬(しっと)しない。3人と大家夫婦(亀蔵、万次郎)のやりとりが楽しい。
続いて、本性を現した小女郎狐と黒主の家来、名虎(なとら)(松緑)一味との立ち回り。キツネ言葉も鮮やかな菊之助と犬のなりをした四天とのタテに見ごたえがある。大詰が京都「神泉苑(えん)」。「暫(しばらく)」の趣向で少将の家来、孔雀(くじゃく)三郎(松緑)が豪快に悪人たちを取り鎮め、善人を救う。
入り組んだ芝居を刈り込んで筋を通し、山場を作った。南北、黙阿弥以前の、上演の少ない歌舞伎作品の復活としても意義深い。27日まで。【小玉祥子】
毎日新聞 2008年1月21日 東京夕刊