トップ :: B 処理操作 運輸 :: B03 液体による,または,風力テ−ブルまたはジグによる固体物質の分離;固体物質または流体から固体物質の磁気または静電気による分離,高圧電界による分離




【発明の名称】 粉体の分級方法
【発明者】 【氏名】倉本 成史

【氏名】鳥淵 浩伸

【氏名】若槻 伸治

【氏名】佐々木 令晋

【氏名】粟嶋 優

【氏名】蔭山 学

【要約】 【課題】電成ふるいを用いた分級方法において、ふるいの目詰まりや粒子の凝集を起こさずに粉体の分級を行う方法、それにより分級された粒子、およびその用途を提供する。

【解決手段】原料粉体を液状媒体に分散させた分散体を、電成ふるいを備えた分級装置に通すことによって、前記原料粉体を所望の粒度範囲の粒子に分級する方法において、(1) 開孔径が、目的とする粒子の平均粒子径および(Nw−σw)のいずれか小さい方よりも小さい電成ふるいを用いて下分級を行う、(2) 開孔径が、目的とする粒子の平均粒子径および(Nw−2σw)のいずれか大きい方よりも大きい電成ふるいを用いて上分級を行う、(3) 電成ふるいの開孔径をH3(μm)、線数をx(LPI)としたときに、1000/H3≦x≦25000/(5+H3)を満たす、(4) 電成ふるいの片面または両面に、サポートが設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 重量分布において平均粒子径がNw、粒子径の標準偏差がσwの原料粉体を液状媒体に分散させた分散体を、電成ふるいを備えた分級装置に通すことによって、前記原料粉体を所望の粒度範囲の粒子に分級する方法であって、前記電成ふるいとして、その開孔径H1が、目的とする粒子の個数分布における平均粒子径および(Nw−σw)のいずれか小さい方よりも小さいものを用いて分級を行い、前記電成ふるい上に残存した粒子を回収することを特徴とする粉体の分級方法。
【請求項2】 重量分布において平均粒子径がNw、粒子径の標準偏差がσwの原料粉体を液状媒体に分散させた分散体を、電成ふるいを備えた分級装置に通すことによって、前記原料粉体を所望の粒度範囲の粒子に分級する方法であって、前記電成ふるいとして、その開孔径H2が、目的とする粒子の個数分布における平均粒子径および(Nw−2σw)のいずれか大きい方よりも大きいものを用いて分級を行い、前記電成ふるいを通過した粒子を回収することを特徴とする粉体の分級方法。
【請求項3】 原料粉体を液状媒体に分散させた分散体を、電成ふるいを備えた分級装置に通すことによって、前記原料粉体を所望の粒度範囲の粒子に分級する方法であって、前記電成ふるいの開孔径をH3(μm)、線数をx(LPI)としたときに、1000/H3≦x≦25000/(5+H3)
を満たすことを特徴とする粉体の分級方法。
【請求項4】 原料粉体を液状媒体に分散させた分散体を、電成ふるいを備えた分級装置に通すことによって、前記原料粉体を所望の粒度範囲の粒子に分級する方法であって、前記電成ふるいの片面または両面に、前記電成ふるいと同等の大きさを有するサポートが設けられており、前記サポートの少なくとも一部は前記電成ふるいと接着されていることを特徴とする粉体の分級方法。
【請求項5】 請求項1から4のいずれかに記載の粉体の分級方法により分級された粒子。
【請求項6】 請求項1から4のいずれかに記載の粉体の分級方法により分級された粒子を本体とする、液晶表示素子用スペーサー。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、粉体の分級方法、分級された粒子、およびその用途に関する。さらに詳しくは、種々の粒子径を有する粉体を精密に所望の粒度範囲の粒子に分級する分級方法、それにより分級された粒子、およびその用途に関する。
【0002】
【従来の技術】各種分野で取り扱われる粉体はその種類、目的、用途によって、必要とされる平均粒子径及び粒子径の分布が異なる。特に、液晶表示素子用スペーサー、異方導電フィルム用導電性粒子、液体クロマトグラフィー用充填剤、フィルム用滑剤あるいは静電荷像現像用トナーといった用途に用いられる粉体の場合、粒子径の分布を狭くする必要がある。中でも、液晶表示素子用スペーサーとして用いられる粉体は、粒子径分布を特に狭くする必要があり、種々の方法により作製した原料粉体から目的とする粒子径および粒子径分布となるように精密に分別して使用する必要がある。
【0003】一般に、粉体の粒子径分布を狭くするためには、いわゆる分級装置が用いられる。分級装置としては、サイクロン、沈降塔、あるいはふるい等が乾式または湿式で用いられる。しかしながら、旋回流中の遠心力と重力とのバランスを利用して分級を行うサイクロンでは、その構造上、分級ゾーンをショートパスする粒子が存在するため、粒子径分布を狭くすることに限界があり、また少量ではあるものの粒子径分布から大きく外れた粒子が残存するといった問題を有している。また、媒体中での沈降速度の差を利用して分級する沈降塔においては、温度、振動などの要因によって沈降速度が変化するため、分級精度を上げることが困難であり、また粒子径の小さいものについては、沈降速度が極めて小さいため分級に多大な時間が必要である。沈降塔を改良し、下方より媒体を供給し上方よりオーバーフローさせる装置も提案されているが、上記した沈降塔と同様の問題を有している。
【0004】一方、ふるいは一定の目開きを通過するか否かで分級を行うものである。目開き10μm以上のものについては細線を編んだふるいが用いられ、それ以下のものについては金属箔などをエッチングにより微細な孔をあけたものや、電成ふるいと呼ばれる、メッキによって矩形の孔を有するスクリーンを作製したものが用いられ、これらは細線を編んだものと比較して目開きが非常によくそろっており分級の精度を向上させることができるものである。特に電成ふるいはエッチングにより孔をあけたものと比較して、厚みより小さな孔加工が可能であり、サイドエッジがなく断面形状がきれいであり、優れたふるいである。
【0005】しかしながら、ふるいを分級装置として使用した場合、操作中にふるいが目詰まりを起こしたり、粒子が凝集することによってふるいわけの速度が著しく低下する現象がしばしば観察される。この現象はふるいの目開きが小さくなるほど顕著にかつ短時間で発生し、その都度ふるいの洗浄や粒子の再分散といった操作が必要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】したがって、本発明の課題は、電成ふるいを用いた精密な分級方法において、ふるいの目詰まりや粒子の凝集を起こさずに粉体の分級を行う方法を提供することにある。また、それにより分級された粒子、およびその用途を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため、本発明は、以下の構成を採用する。すなわち、本発明の第1から第4の発明の分級方法は、(重量分布において平均粒子径がNw、粒子径の標準偏差がσwの)原料粉体を液状媒体に分散させた分散体を、電成ふるいを備えた分級装置に通すことによって、前記原料粉体を所望の粒度範囲の粒子に分級する方法であり、本発明の第1発明の分級方法は、前記電成ふるいとして、その開孔径H1が、目的とする粒子の個数分布における平均粒子径および(Nw−σw)のいずれか小さい方よりも小さいものを用いて分級を行い、前記電成ふるい上に残存した粒子を回収することを特徴とし、本発明の第2発明の分級方法は、前記電成ふるいとして、その開孔径H2が、目的とする粒子の個数分布における平均粒子径および(Nw−2σw)のいずれか大きい方よりも大きいものを用いて分級を行い、前記電成ふるいを通過した粒子を回収することを特徴とし、本発明の第3発明の分級方法は、前記電成ふるいの開孔径をH3(μm)、線数をx(LPI)としたときに、1000/H3≦x≦25000/(5+H3)を満たすことを特徴とする。
【0008】本発明の第4発明の分級方法は、前記電成ふるいの片面または両面に、前記電成ふるいと同等の大きさを有するサポートが設けられており、前記サポートの少なくとも一部は前記電成ふるいと接着されていることを特徴とする。本発明の分級された粒子は、上記の本発明の第1から第4の発明のいずれかの粉体の分級方法により分級された粒子である。本発明の液晶表示素子用スペーサーは、上記の本発明の第1から第4の発明のいずれかの粉体の分級方法により分級された粒子を本体とする。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明では、電成ふるいを備えた分級装置を用いて粒子の分級を行う。電成ふるいとは、メッキによって矩形の孔を有するスクリーンを作製したものである。電成ふるいの製造方法としては、高精度にクロスライン状に腐食させたガラス原板上に、真空蒸着、スパッタリング等の物理メッキ、あるいは電解メッキ、無電解メッキ等の化学メッキにより導電性被膜を形成した後、腐食部分の溝以外のメッキ層を除去し、これに電解メッキ等の方法でメッシュを形成し、ガラス原板から剥離する方法が挙げられる。このようにして作製されたメッシュはガラス原板から剥離後、必要に応じてさらに電解メッキを施してもかまわない。また、他の製造方法として、ガラス平板上に真空蒸着、スパッタリング等の物理メッキ、あるいは電解メッキ、無電解メッキ等の化学メッキにより導電性被膜を形成し、その被膜上にレジストを塗布した後、所定の形状のパターンを形成し、その後エッチングによりパターン以外の部分を除去し、ガラス原板から剥離後、電解メッキを施す方法も挙げられる。
【0010】電成ふるいの材質としては、金、白金、銀、銅、鉄、アルミニウム、ニッケル及びこれらをベースとする種々の合金が用いられるが、ふるいの耐久性、耐蝕性やメッキ作業の容易さからニッケルを主成分とするものが特に好適に用いられる。電成ふるいは、開孔径、単位あたりの開孔数の調整が容易であるばかりでなく、開孔径分布が非常に良好であるため、ふるいとして用いた場合、非常に精度良く分級することが可能となる。本発明の第1発明では、原料粉体の重量分布における平均粒子径をNw、粒子径の標準偏差をσwとした場合に、電成ふるいとして、その開孔径H1が、目的とする粒子の個数分布における平均粒子径および(Nw−σw)のいずれか小さい方よりも小さいものを用いて分級を行い、前記電成ふるい上に残存した粒子を回収する(下分級を行う)ことを特徴とする。
【0011】また、本発明の第2発明では、原料粉体の重量分布における平均粒子径をNw、粒子径の標準偏差をσwとした場合に、電成ふるいとして、その開孔径H2が、目的とする粒子の個数分布における平均粒子径および(Nw−2σw)のいずれか大きい方よりも大きいものを用いて分級を行い、前記電成ふるいを通過した粒子を回収する(上分級を行う)ことを特徴とする。理論上は電成ふるいの開孔径よりも大きな粒子径の粒子が電成ふるい上に残存し、開孔径よりも小さな粒子径の粒子が電成ふるいを通過する。したがって、下分級に際しては、電成ふるいの開孔径が目的とする粒子の個数分布における平均粒子径よりも小さいことが必要であり、逆に上分級に際しては、電成ふるいの開孔径が目的とする粒子の個数分布における平均粒子径よりも大きいことが必要である。
【0012】しかしながら、分級に供される原料粉体の粒子径分布は様々であるため、目的とする粒子の個数分布における平均粒子径を考慮しただけでは、ふるいの目詰まりや粒子の凝集が起こり、分級の効率が低下する場合がある。その結果として分級の時間が長くなったり、あるいは短時間で行うためには強い超音波を印加する等の必要が生じるため、電成ふるいが損傷しやすくなる。そして、本発明者らは、原料粉体中に電成ふるいの開孔径付近の粒子径の粒子が多く含まれている場合、これらの粒子によって電成ふるいのメッシュが目詰まりしやすいために分級の効率が低下することを突き止めた。そこで、電成ふるいの開孔径は、原料粉体の重量分布における平均粒子径付近であってはならないことを数値化することで、本発明を完成させた。その際、原料粉体の粒子径分布がシャープな場合(標準偏差が小さい場合)もブロードな場合(標準偏差が大きい場合)にも適用できるような関係式を構築した。
【0013】すなわち、目的とする粒子の個数分布における平均粒子径を考慮すると共に、下分級に際しては、開孔径H1が(Nw−σw)より小さい電成ふるいを用いること、上分級に際しては、開孔径H2が(Nw−2σw)より大きい電成ふるいを用いることが重要である。開孔径H1が上記関係を満たさない場合には、原料粉体中に電成ふるいの開孔径付近の粒子径の粒子が多く含まれているため、これらの粒子によって電成ふるいのメッシュが目詰まりしやすく、分級の効率が低下する。また、開孔径H2が上記関係を満たさない場合には、電成ふるいを通過する粒子が極度に少なくなり収量が低下する。
【0014】一回の分級だけでは目的とする粒子の個数分布における平均粒子径に近づけない場合には、複数回分級を行うことができる。もちろん一回分級を行う毎に、分級後の粒子の重量分布における平均粒子径と粒子径の標準偏差を測定して、開孔径H1、H2を再設定する必要がある。本発明の第3発明では、電成ふるいが、電成ふるいの開孔径をH3(μm)、線数をx(LPI)としたときに、1000/H3≦x≦25000/(5+H3)
を満たすことを特徴とする。
【0015】上記関係式は、電成ふるいの開孔径、単位長さ当たりの線数及び電成ふるいの厚さと関係している。電成ふるいは、前記したようにメッキにより線を太らせて孔径をコントロールして製造されるため、線幅とふるいの厚さがほぼ等しい。電成ふるいの開孔径と単位長さ当たりの線数は、粒子の性状あるいは粒子径分布などによって適宜選択することができるが、線数が大きいほどふるい全体に占める開孔部分の面積が大きくなり、開孔径が小さい場合であっても分級速度が大きくなる。しかしながら、電成ふるいの厚さが薄すぎると破れやすく、取り扱いが困難であるばかりでなく、分級した粉体への金属系不純物の混入のおそれがある。分級された粒子を液晶表示素子用スペーサー等の電子材料の用途に用いる場合、金属系不純物の混入は信頼性低下の原因となるとともに、粒子径が10μm程度以下と小さいので分級に強いエネルギーが必要であり、電成ふるいが特に破れやすい。一方、線数が小さい場合、相対的にふるいが厚くなるため強度は強くなるものの、開孔部分の面積が小さくなるため、分級速度が小さくなる。その上、ふるいを作製するにあたりメッキ時間が長くなる等の問題もある。また、孔が深くなるため、圧損が大きくなり、粒子がつまりやすくなる。これらを考慮して、電成ふるいの厚さ(線幅)は、5μm以上であり、かつ開孔径の24倍以下であることが重要であることを見出し、本発明の第3発明を完成させたものである。
【0016】また、線数xとは、1インチに含まれる線の数であり、1インチ=約25000μmである。したがって、線幅(ふるいの厚さ)は、25000/x−H3(μm)である。ふるいの厚さが5μm以上という条件から、25000/x−H3≧525000/x≧5+H3x≦25000/(5+H3)
ふるいの厚さが開孔径の24倍以下という条件から、25000/x−H3≦24H325000/x≦25H3x≧1000/H3電成ふるいの厚さとしてより好ましい条件は、7μm以上、かつ開孔径の19倍以下であり、さらに好ましい条件は、10μm以上、かつ開孔径の15.7倍以下である。よって、上記と同様に式変形して、1250/H3≦x≦25000/(7+H3)であることが好ましく、1500/H3≦x≦25000/(10+H3)であることがより好ましい。
【0017】電成ふるいの開孔径、線数としては、上記関係式を満たす範囲で適宜設定できるが、開孔径は0.5〜500μmであることが好ましく、1〜400μmであることがより好ましい。線数は50〜3000LPIであることが好ましく、100〜2000LPIであることがより好ましい。本発明の第4発明では、前記電成ふるいの片面または両面に、前記電成ふるいと同等の大きさを有するサポートが設けられており、前記サポートの少なくとも一部は前記電成ふるいと接着されていることを特徴とする。電成ふるいは非常に薄いため簡単に傷ついたり、破れたりし、分級された粒子へ金属系不純物の混入のおそれがある。分級された粒子を液晶表示素子用スペーサー等の電子材料の用途に用いる場合、金属系不純物の混入は信頼性低下の原因となるとともに、粒子径が10μm程度以下と小さいので分級に強いエネルギーが必要であり、電成ふるいが特に破れやすい。そこで、電成ふるいの片面または両面に、電成ふるいと同等の大きさを有するサポートを設けることで、強度を上げる必要がある。
【0018】前記サポートの形状(穴の形状、大きさ)は特に限定されないが、図3に示すようなリング状、もしくは図4に示すようなリング状の外枠の中に網目を備えた格子状が好ましい。最も好ましい形態は、電成ふるいの上流側に図3のようなリング状のサポートを設け、下流側に図4のような格子状のサポートを設ける形態である。サポートが分級の妨げとなってはならないので、サポートの開孔率は50%以上であることが好ましい。また、図4のような格子状のサポートにおいては、サポートの開孔部分の1つの大きさは1cm2以下であることが好ましい。前記サポートは、少なくとも一部が電成ふるいと接着されていることが必要であるが、図4のような格子状のサポートの場合は、網目の部分では接着されていないことが好ましい。網目の部分も接着されていた方が強度は高くなるものの、粒子径が10μm程度以下と小さい粒子の分級では強いエネルギーが用いられるため、網目が接着されていると振動によりその接着部分から破れるためである。
【0019】前記サポートの製造方法としては、打抜き加工のものはバリがあり電成ふるいを破損しやすくするため、電鋳によって製造することが好ましい。電成ふるいの分級装置への取り付けに関しては、特に超音波振動を印加する場合など、電成ふるいと分級装置とが擦れて電成ふるいが損傷し分級された粒子へ金属系不純物が混入するおそれがあるため、エラストマーからなる部材を介して取り付けることが好ましい。本発明では、原料粉体を液状媒体に分散させた分散体を電成ふるいを備えた分級装置に通すことによって湿式法により分級を行う。媒体として不活性ガスや空気などを用いる乾式法と比較して、湿式法によった場合の方が超音波の照射効率、分散の安定性が高く、また電成ふるいへの付着が少ない。
【0020】原料粉体を分散させる液状媒体としては、用いる電成ふるいの材質、開孔径、線数、および粉体の性状あるいは粒子径分布などによって適切に選択することができる。分級に際しては、分級装置内に超音波照射チップを挿入し、媒体に超音波照射を行うことで、分級の効率を向上させることができる。図1に、電成ふるいを備えた分級装置の一例を示すが、本発明はこれによって何ら限定されるものではない。図1において、電成ふるい1は、ハウジング上部4およびハウジング下部4′によって挟み込まれる形で固定される。電成ふるい1の強度を上げるためのサポート2が設けられ、エラストマーからなるパッキン3を介してハウジング4、4′に接続されている。ハウジング上部4内には超音波照射チップ5が挿入され、これによりハウジング内の媒体に超音波振動が照射される。ハウジング上部4内には媒体の循環ライン6、6′及び媒体の供給ライン7が設けられている。原料粉体を液状媒体に分散させた分散体はハウジング上部4内に仕込まれ、媒体とともに電成ふるいの開孔径よりも小さい粒子がハウジング下部4′へと移動する。操作の経過に伴い、ハウジング上部4内に存在する電成ふるいの開孔径よりも小さい粒子が減少していき、最終的には電成ふるいの開孔径を境にして、粒子径の大きいもの(ハウジング上部4内に残留した粒子)と粒子径の小さいもの(ハウジング下部4′に移動した粒子)とに分級することができる。
【0021】上記した本発明の第1から第4の発明の分級方法により、各種粉体は容易にかつ低コストで精密に、しかもふるいの目詰まりや粒子の凝集を起こさずに分級を行うことができる。したがって、得られる粒子の粒子径は極めてそろっている。用いる粉体の平均粒子径、粒子径分布および電成ふるいの開孔径によって、分級により得られる粒子の平均粒子径および粒子径分布は異なるが、粒子径の標準偏差と平均粒子径の比Cvを2〜10%とすることができる。本発明の第1から第4の分級方法により得られる粒子の平均粒子径は特に限定されず、平均粒子径が0.5μm程度の小さなものから、平均粒子径が100μm程度の大きなものまで可能である。中でも、平均粒子径が10μm以下の小さな粒子を得る場合にも、低コストで精密に、しかもふるいの目詰まりや粒子の凝集を起こさずに分級を行うことができるのが本発明の大きな効果である。
【0022】上記において、本発明の第1から第4の分級方法についてそれぞれ説明したが、本発明の第1から第4の分級方法を複数組み合わせて実施することで、さらなる効果が得られることはもちろんのことである。本発明の第1から第4の分級方法により分級することのできる粉体としては、特に限定されないが、後述する液晶表示素子用スペーサーの他、無電解めっき粉体およびその基材粉体、クロマトグラフィー用充填剤、各種標準粒子、免疫学的診断試薬用担体、ブロッキング防止剤、滑剤等の各種粉体を挙げることができる。また、その材質も特に限定されず、有機架橋重合体粒子、無機系粒子、有機質無機質複合体粒子等が挙げられる。
【0023】本発明の液晶表示素子用スペーサーは、上記した本発明の第1から第4の発明の分級方法により分級された粒子を本体とする。そのため、粒子径が極めてそろっており、正確な間隔で配置されるべき一対の電極基板間の隙間距離を精度良く一定に保持することが可能である。本発明の液晶表示素子用スペーサーは、上記した本発明の第1から第4の発明の分級方法により分級された粒子を本体とするものであり、該粒子のみからなるものであってもよいし、本体である粒子の表面に接着剤層を有する接着性スペーサーであってもよい。また、本体である粒子が染料および/または顔料を含むことにより着色した着色粒子からなる着色スペーサーであってもよい。
【0024】液晶表示素子において、従来のスペーサーの代わりに本発明の液晶表示素子用スペーサーを電極基板間に介在させることで、同スペーサーとほぼ同じ隙間距離を有する液晶表示素子を作製することができる。使用されるスペーサーの量は、そのスペーサーの材質や基板の大きさ等によって左右されるが、通常30〜300個/mm2であり、従来用いられているスペーサーと同様の条件をとることができる。液晶表示素子は、たとえば、図2にみるように、第1電極基板と、第2電極基板と、液晶表示素子用スペーサーと、シール材と液晶とを備えている。第1電極基板は、第1基板と、第1基板の表面に形成された第1電極とを有する。第2電極基板は、第2基板と、第2基板の表面に形成された第2電極とを有し、第1電極基板と対向している。液晶表示素子用スペーサとしては上述の本発明のものが使用され、第1電極基板と第2電極基板との間に介在し、その電極基板間の間隔を保持する。シール材は、第1電極基板と第2電極基板とを周辺部で接着する。液晶は、第1電極基板と第2電極基板との間に封入されており、第1電極基板と第2電極基板とシール材とで囲まれた空間に充填されている。
【0025】本発明の液晶表示板において、スペーサー以外の、電極基板、シール材、液晶などについては従来と同様のものを同様に使用することができる。電極基板は、ガラス基板、フィルム基板などの基板と、基板の表面に形成された電極とを有しており、必要に応じて、電極基板の表面に電極を覆うように形成された配向膜をさらに有する。シール材としては、エポキシ樹脂接着シール材などが使用される。液晶としては、従来より用いられているものでよく、たとえば、ビフェニル系、フェニルシクロヘキサン系、シッフ塩基系、アゾ系、アゾキシ系、安息香酸エステル系、ターフェニル系、シクロヘキシルカルボン酸エステル系、ビフェニルシクロヘキサン系、ピリミジン系、ジオキサン系、シクロヘキシルシクロヘキサンエステル系、シクロヘキシルエタン系、シクロヘキセン系、フッ素系などの液晶が使用できる。
【0026】液晶表示素子を作製する方法としては、たとえば、本発明のスペーサーを面内スペーサーとして2枚の電極基板のうちの一方の電極基板に湿式法または乾式法により均一に散布したものに、本発明のスペーサーをシール部スペーサーとしてエポキシ樹脂等の接着シール材に分散させた後、もう一方の電極基板の接着シール部分にスクリーン印刷などの手段により塗布したものを載せ、適度の圧力を加え、100〜180℃の温度で1〜60分間の加熱、または、照射量40〜300mJ/cm2の紫外線照射により、接着シール材を硬化させた後、液晶を注入し、注入部を封止して、液晶表示素子を得る方法を挙げることができるが、液晶表示板の作製方法によって本発明が限定されるものではない。例えば、面内スペーサーは、上記方法以外に、面内スペーサーを分散含有するポリマー溶液を用いて配向膜を形成して、配向膜の形成と同時に面内スペーサーをも形成する方法によって形成してもよい。
【0027】本発明の液晶表示素子は、従来の液晶表示素子と同じ用途、たとえば、テレビ、モニター、パーソナルコンピューター、ワードプロセッサー、カーナビゲーションシステム、DVD、デジタルビデオカメラ、PHS(携帯情報端末)などの画像表示素子として使用される。
【0028】
【実施例】以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨の範囲で設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。実施例中で「部」、「%」とは特にことわりがない限り、それぞれ「重量部」、「重量%」を表すものとする。
(実施例1)懸濁重合により製造した重量分布における平均粒子径5.8μm、粒子径の標準偏差0.62μmのジビニルベンゼン系球状粒子からなる粉体を図1に示した装置を用いて分級を行った。目的とする粒子の個数分布における平均粒子径は6.1μmである。
【0029】電成ふるいとしてニッケル系で開孔径5.0μm、線数1500本/インチで、上流側および下流側にサポートを有するもの(ふるいA)を用い、1時間分級を行った後、ハウジング上部に残存した液を回収した。前記上流側のサポートは、図3のようなリング状のサポートであり、全面が電成ふるいと接着されている。前記下流側のサポートは、図4のような格子状のサポートであり、リング状部分は電成ふるいと接着されているが、網目の部分では接着されていない。液中の粒子の重量分布における平均粒子径は5.9μm、粒子径の標準偏差0.48μmであった。この分散体を再びニッケル系で開孔径5.4μm、線数1000本/インチで、ふるいAと同様のサポートを有する電成ふるい(ふるいB)を用いて再び分級したところ、30分を過ぎたころよりハウジング下部に流出する液が透明になった。それからさらに30分分級を行った後、ハウジング上部に残存した液を回収した。回収した分散体のろ過、乾燥を行い、分級粒子1を得た。分級粒子1の個数分布における平均粒子径は6.10μmで、粒子径の標準偏差は0.28μmであった。
【0030】(比較例1)実施例1において、ふるいAによる分級工程を省略し、最初からふるいBによる分級を行ったところ、3時間経過した後でもハウジング下部に流出する液が白濁していた。この段階で分級を終了し、ハウジング上部に残存した液を回収した。回収した分散体のろ過、乾燥を行い、比較分級粒子1を得た。比較分級粒子1の個数分布における平均粒子径は6.02μmで、粒子径の標準偏差は0.42μmであった。
(実施例2)重量分布における平均粒子径7.9μm、粒子径の標準偏差1.56μmのアクリル−シロキサン複合球状粒子からなる粉体を、実施例1と同様の装置を用いて分級を行った。目的とする粒子の個数分布における平均粒子径は3.9μmである。
【0031】電成ふるいとしてニッケル系で開孔径6.5μm、線数750本/インチで、ふるいAと同様のサポートを有するもの(ふるいC)を用い、1時間分級を行い、ハウジング下部より流出する液を回収した。液中の粒子の重量分布における平均粒子径は5.4μm、粒子径の標準偏差0.76μmであった。この分散体を再びニッケル系で開孔径4.2μm、線数1500本/インチで、ふるいAと同様のサポートを有する電成ふるい(ふるいD)を用いて再び分級し、ハウジング下部から流出する液を回収した。分級開始後20分を過ぎたころよりハウジング下部に流出する液が透明になった。それからさらに10分分級を行い、ハウジング下部から流出する液を引き続き回収した。回収した分散体のろ過、乾燥を行い、分級粒子2を得た。分級粒子2の個数分布における平均粒子径は3.92μmで、粒子径の標準偏差は0.15μmであった。
【0032】(比較例2)実施例2において、ふるいCによる分級工程を省略し、最初からふるいDによる分級を行い、ハウジング下部から流出する液を回収した。しかしながら、分級直後より流出する液は極めて少量で、3時間経過した段階で分級を終了した。回収した分散体のろ過、乾燥を行ったが、実施例2と比較して1/10以下しか分級粒子を得ることができなかった。
(比較例3)実施例2において、ふるいCに代えて、開孔径6.4μm、線数100本/インチで、ふるいAと同様のサポートを有する電成ふるい(ふるいE)を用いて分級を行ったところ、ハウジング下部より流出する液は極めて少量で、3時間経過した段階で分級を終了した。回収した分散体のろ過、乾燥を行ったが、実施例2と比較して1/20以下しか分級粒子を得ることができなかった。
【0033】(比較例4)実施例1において、ふるいBに代えて、開孔径5.4μm、線数2500本/インチで、ふるいAと同様のサポートを有する電成ふるい(ふるいF)を用いて分級を行ったところ、分級開始から10分経過した時点でハウジング(株)に流出する液が急激に増加した。そこで分級を停止したところ、電成ふるいFが破損し穴があいているのが確認された。
(比較例5)実施例2において、ふるいDに代えて、開孔径4.2mm、線数1500本/インチでサポートを有しない電成ふるい(ふるいG)を用いて分級を行ったところ、分級開始直後にふるいGの中央部分が破れ、分級を継続することができなかった。
【0034】(実施例3)図2に示すような液晶表示素子を以下の方法により作製した。まず、300mm×345mm×1.1mmの下側ガラス基板21上に、透明電極15およびポリイミド配向膜14を形成した後、ラビングを行って、下側電極基板210を得た。その下側電極基板210に、メタノール30重量部、イソプロパノール20重量部、水50重量部の混合溶媒中に実施例1で得られた分級粒子1を液晶表示素子用スペーサー18として1重量%となるように均一に分散させたものを5秒間散布した。
【0035】一方、300mm×345mm×1.1mmの上側ガラス基板22上に、透明電極15およびポリイミド配向膜14を形成した後、ラビングを行って、上側電極基板220を得た。そして、エポキシ樹脂接着シール剤中に実施例1で得られた分級粒子1をシール部スペーサー13として30重量%となるように分散させたものを上側電極基板220の接着シール部分にスクリーン印刷した。最後に、上側電極基板220、下側電極基板210を電極15および配向膜14がそれぞれ対向するように、液晶表示素子用スペーサー18を介して貼り合わせ、4kg/cm2の圧力を加え、150℃の温度で30分間加熱し、接着シール剤12を硬化させた。その後、2枚の電極基板210、220の隙間を真空とし、さらに大気圧に戻すことによりビフェニル系およびフェニルシクロヘキサン系の液晶物質を混合した液晶17を注入し、注入部を封止した。そして、上下ガラス基板22、21の外側にポリビニルアルコール系偏光膜16を貼り付けて液晶表示素子1とした。
【0036】液晶表示素子1について画像むらの有無を目視により評価した。結果を表1に示す。
(実施例4、比較例6)実施例2および比較例1で得られた分級粒子を用いて、実施例3と同様にして液晶表示素子2、比較液晶表示素子1をそれぞれ作製し、実施例3と同じ方法で評価を行った。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【発明の効果】本発明の第1発明の分級方法では、電成ふるいとして、その開孔径H1が、目的とする粒子の個数分布における平均粒子径および(Nw−σw)のいずれか小さい方よりも小さいものを用いて分級を行い、前記電成ふるい上に残存した粒子を回収するため、ふるいの目詰まりや粒子の凝集が起こりにくい。したがって、分級の効率が高く、電成ふるいの損傷も少ない。本発明の第2発明の分級方法では、電成ふるいとして、その開孔径H2が、目的とする粒子の個数分布における平均粒子径および(Nw−2σw)のいずれか大きい方よりも大きいものを用いて分級を行い、前記電成ふるいを通過した粒子を回収するため、ふるいの目詰まりや粒子の凝集が起こりにくい。したがって、分級の効率が高く、電成ふるいの損傷も少ない。
【0039】本発明の第3発明の分級方法では、電成ふるいの開孔径をH3(μm)、線数をx(LPI)としたときに、1000/H3≦x≦25000(5+H3)を満たすため、分級された粒子へ金属系不純物が混入することなく、またふるいの目詰まりや粒子の凝集を起こさず、効率良く分級を行うことができる。本発明の第4発明の分級方法では、電成ふるいの片面または両面に、前記電成ふるいと同等の大きさを有するサポートが設けられており、前記サポートの少なくとも一部は前記電成ふるいと接着されているため、強度が高く、傷ついたり、破れたりしにくい。したがって、分級された粒子へ金属系不純物が混入するおそれも少ない。
【0040】本発明の分級された粒子は、上記の本発明の第1から第4の発明のいずれかの粉体の分級方法により分級された粒子であるため、粒子径が極めてそろったものである。本発明の液晶表示素子用スペーサーは、上記の本発明の第1から第4の発明のいずれかの粉体の分級方法により分級された粒子を本体とするため、粒子径が極めてそろっており、正確な間隔で配置されるべき一対の電極基板間の隙間距離を精度良く一定に保持することが可能である。
【出願人】 【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
【出願日】 平成12年3月13日(2000.3.13)
【代理人】 【識別番号】100073461
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 武彦
【公開番号】 特開2001−252589(P2001−252589A)
【公開日】 平成13年9月18日(2001.9.18)
【出願番号】 特願2000−69538(P2000−69538)