ワシントン――ラットの心臓の細胞を取り除き、そこへ別のラットの細胞を埋め込むことによって、新たな心臓を再生させる実験に、米ミネソタ大の研究者らが成功した。実験後数日間のうちに、心臓は拍動を始めたという。
同大のドリス・テイラー博士らがこのほど、医学専門誌ネーチャー・メディシン電子版で発表した。同博士によると、チームはラット8匹の心臓を使った実験を実施。薬剤処理によって心臓から細胞を除去し、周囲の構造が型枠のように残る状態にしたうえで、生まれたばかりのラットから採取した心筋や内皮の細胞を埋め込んだ。これを実験室で培養した結果、細胞は型枠の内側を覆うように広がり、新たなラットの心臓がつくり出された。
これらの心臓に電気刺激を与えたところ、2日後には顕微鏡で心筋の収縮が観察され、7‐8日後には肉眼で見えるほどの拍動となった。最終的には、ラットの胎児の心臓の約4分の1のテンポで、血液を循環させることが可能になったという。
再生医療は、人工臓器や臓器移植に代わる新たな治療法として注目されている。人間の心臓については、これまでに弁の再生などが試みられてきたが、心臓そのものを再生することができれば、画期的な成果となる。心臓病患者本人の細胞から新たな心臓をつくって移植すれば、拒絶反応などの問題も解決しそうだ。
ただ、テイラー博士らの研究は、チーム自身もも認める通り「まだ先が長い」。「人間に応用できるのか」「血液は正常に循環するのか」といった疑問も指摘されている。
チームでは次の段階として、ブタなどのより大きな動物を使った実験を計画。さらに、肺や肝臓、腎臓など、ほかの臓器についても同様の研究を進めているという。