◎小児がん終末ケア 社会的な支えを充実したい
治る見込みのない、がんの子供に向き合う親や医療現場に役立ててもらおうと、患者家
族でつくる財団法人「がんの子供を守る会」(東京)が医師らと連携し、終末ケアのガイドライン(指針)の作成に取り組むことを決めた。待たれていた、国内では初めての取り組みだ。これを機に、がんの子供を持つ家族を社会的に支える仕組みをつくり充実していきたい。
北陸三県には守る会の支部が富山県と福井県にあるが、石川県はこれからという段階で
ある。富山支部は昨年十一月、小児がんで愛児を失った両親によってつくられたばかりで、まだ支部のない石川県では金大医学部附属病院小児科が東京の守る会本部のソーシャルワーカーとの連携で終末ケアに当たっている。
終末ケアの先進地といわれる英国では、子供が望む場所での療養が「子供の権利」とし
て位置づけられ、進行がんで死ぬ子供の八割が、わが家で家族にみとられて死を迎えているという。それを支えるのはそれぞれの地域の小児がん病院と児童専門の訪問看護師のチームだそうだ。
日本はこの反対で、在宅でみとられる子供は一割ほどといわれる。どの子も皆、家族の
もとへ帰りたがるが、そうした彼らを支える社会的な仕組みが地域に整っていないため、医療関係者らはせめて病院を「家庭的」にしたいという次善の策に知恵を絞っているようだ。
守る会は家族が中心の組織で、世話ができる余裕のある家族がいないと支部ができない
ため、全国でまだ二十八。日本では支部をつくるのもままならない上に、小児がんの子供の家が専門病院から遠く、そばにいてやりたくてもそうはいかないという余裕のない親が多いのが現実である。
十五歳以下の子供に発生する悪性腫瘍(しゅよう)が「小児がん」であり、近年は治療
成績が上がってきたが、それでも救われない子がいて、小児期の病死では死亡原因の一位である。専門家によると、小児がんは千人に一人の割合で発生し、うち三割は亡くなっていくといわれる。亡くなっていく子供をどうやってみとってやるか。その終末ケアは親にとってはいうまでもなく、医療従事者も悩み、途方に暮れることが多いという。対応を急ぎたい。
◎日韓関係に薄日 李氏の未来志向に期待感
未来志向を約束しながら、それを空手形にするどころか歴史の見直しにまで手をつけ、
親日派を痛めつけた盧武鉉政権の時代の日韓関係はいわば「どしゃぶり」だったが、次期大統領に李明博氏が登場したことで薄日がさしてきたようだ。
年頭の記者会見で「核兵器を放棄しない限り北朝鮮への大規模な援助は難しい」との外
交姿勢を表明した同氏は、その続きともいえる記者会見で今度は日韓関係の改善に取り組む考えを強く打ち出し、未来志向で成熟した関係構築のため「謝罪しろとか反省しろとかいう話はしたくない」と言い切ったのである。
はじめは未来志向をうたっても、政権の基盤が揺らぐと手のひらを返して反日に転じる
というのがこれまでの韓国のリーダーのパターンだったが、李氏は違うようだ。日本に対して歴史問題への謝罪や反省を求めても形式的な反応しか戻ってこない。だいたいそんなものは心に響かない。だから求めるのはむなしいとするリアリストである。
情緒的な親日ポーズではなく、韓国の国益にとって日韓関係は非常に重要だとの認識だ
。歴史問題や竹島の領有権をめぐる問題など厄介なものがあり、互いに難問を抱えながらよりよい関係を探っていくという展開になるだろう。断定は留保するけれども、日韓関係がここへきて情緒的なものから合理的なものへと変わっていく可能性が膨らんだようだ。
盧武鉉大統領と、首相だった小泉純一郎氏との関係が冷ややかになり、それがまだ続い
ているわけだが、李氏は日韓両首脳のシャトル外交の復活に意欲的で、すでに福田康夫首相との電話会談でそれを持ち掛け、賛成したもらったと述べ、来月の大統領就任式に出席する福田首相とソウルで会談することへの期待感を示した。
中国や韓国と争ってもよいことはない。日米同盟を強化しながらアジアと共鳴させると
いうのが福田首相の外交の基本だ。施政方針演説では「二月に就任される次期大統領と、未来志向の安定した関係を構築したい」と述べるにとどまったが、李氏の心意気へのお返しとして福田首相はすみやかに日韓関係改善への抱負を突っ込んで語るのがよい。