人口減ニッポン〜2030年からの警告(5)韓国新政権、日本を尻目に「高齢国家」へ前進
韓国に保守政権が10年ぶりに誕生する。昨年暮れの大統領選に圧勝したハンナラ党の李明博(イ・ミョンバク)前ソウル市長が第17代大統領の座に就くのは2月25日。日韓、米韓関係の再構築や北朝鮮に対する融和路線の転換など、今はその外交手腕に着目が集まっているが、同国の内政における焦点は間違いなく経済の立て直しだ。 その核が、これまでの革新政権の下で疲弊した医療保険など社会保障制度の改革である。韓国の人口構成はまだ若いが、高齢化は日本を上回るスピードで進むことが確実視されている。「CEO(最高経営責任者)型の大統領」を自認する新指導者は日本の医療保険や介護制度の「失敗」にも学びつつ、急進的な改革を推し進めることになろう。
「医療は成長産業」を前面に押し出す韓国日本の医療制度改革は対立の構図によって論議されることが多い。医療産業を日本の経済成長を引っ張る核と考えて市場や民間の力を最大限生かそうとする勢力と、医療分野の市場化によって既得権益が浸食されることを恐れる勢力の対立だ。高齢化は待ったなしで進んでいるのに、医療産業を成長に生かそうという発想が弱いのは、この対立の構図に一因がある。 だが、韓国は日本の先を行く。新大統領は医療産業を21世紀の成長のリード役に位置づけることになろう。例えば、株式会社など営利法人の医療機関への参入を認めるか否かという問題。日本では1990年代後半以降、政府の規制改革会議などが再三にわたって参入規制を緩めるよう求めてきたが、日本医師会などの反対で日の目を見ていない。 韓国でも盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権は営利医療法人の参入問題を封印してきた。だが、昨年末に筆者が会った同国保健福祉部(日本の旧厚生省に相当)の元幹部は、「封印が解かれる兆しがある」と言う。市場原理に基づく自由競争によって国民生活と企業経営を安定させる環境を作ることを経済政策の柱に掲げる李新大統領ならではだ。 日韓ともに、株式会社の参入にアレルギー反応を示す勢力がいる。そこに共通するのは医業を営むのは非営利法人であるべきだという観念論だ。株式会社が利益を追い求めるのは当然だが、それで患者の命がないがしろにされると決めつけるのは、いささか乱暴な意見ではないか。 今後、医療技術の高度化に伴い必要になる多額の設備投資資金をどう賄うか。株式発行を通じて資本市場にも資金調達のルートが広がれば、信用度の高い病院は資金コストを低減できる。高度な医療機器を揃えた病院が増えれば、結果として難病に苦しむ患者の利益にもなろう。韓国では、このほかにも営利法人を認めるメリットとして、病院会計の透明性が向上する、医療機関のM&A(企業の合併・買収)が活発になり有力な病院チェーンが増えれば患者や国民にも恩恵がもたらされる――などが議論されている。 高齢化の進展度合いを考えた時、日本こそが隣国の考え方を見習って医療を経済の牽引役に位置づけるべきだ。
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