社会
「広辞苑」誤記見落とし半世紀 芦屋の解説、実は須磨
「芦屋」に関する誤記が見つかった広辞苑 |
十年ぶりの改訂で今月、第六版が発売された岩波書店の国語辞典「広辞苑(こうじえん)」に、「芦屋」を平安時代の歌人在原行平(ありわらのゆきひら)と愛人二人の伝説の舞台-とする誤った記述があることが分かった。伝説に基づく謡曲「松風」は須磨(神戸市須磨区)が舞台。行平を、芦屋に別宅があったとされ地名にもなっている弟業平(なりひら)と取り違えたらしい。誤記は一九五五年発行の初版から半世紀以上続いていたが、担当者らも全く気づかなかったという。広辞苑編集部は「増刷する際、修正する」としている。(小川 晶)
広辞苑第六版では、「あしや」(芦屋・蘆屋)を「兵庫県南東部の市、阪神間の高級住宅地」などと記載。その上で、万葉集の菟原処女(うないおとめ)とともに、「在原行平と松風・村雨の伝説などの舞台」としている。
「松風」は、行平に愛された松風、村雨という海女の姉妹の恋心を描いた室町時代の謡曲。旅僧の前で、恋慕を募らせた松風の霊が行平の形見の衣装をまとって舞う、といった内容で、観阿弥の原作を世阿弥が改作した。行平が隠棲(いんせい)した須磨の浦が舞台となっている。
一方、行平の弟で同じく平安時代の歌人在原業平は、六歌仙、三十六歌仙の一人。歌物語「伊勢物語」は、業平を思わせる人物が主人公で、芦屋に別荘があったとされる。芦屋市内には業平橋、業平町といった地名のほか、歌碑(同市松ノ内町)もあり、ゆかりの地として広く知られている。
同市立美術博物館の明尾圭造学芸課長は「国文学の世界では、芦屋を現在の市域よりも広くとらえることもできるが、広辞苑では芦屋市を説明する記述になっており、不適切」と指摘する。
広辞苑編集部は「芦屋を行平のゆかりの地としたのは明らかな間違い。初版からの記述で執筆者は不明だが、改訂の際にもチェックから漏れていた。申し訳ない」とコメントしている。
在原行平・業平 平安時代に活躍した歌人の兄弟。父は平城天皇の皇子阿保親王。臣籍降下して在原氏を名乗る。兄の行平は紫式部の「源氏物語」の主人公光源氏のモデルともいわれる。最古の歌合「在民部卿家歌合(ざいみんぶきょうけうたあわせ)」を主催した。弟の業平は六歌仙、三十六歌仙の一人。容姿端麗で後に美男の代名詞にもなった。「伊勢物語」では、業平を思わせる主人公が、都から芦屋の別荘に訪ねてきた行平と布引の滝(神戸市中央区)へ出掛ける場面もある。
(1/20 09:01)
社会
- 再試験対象1211人 大学センター試験終了(1/20 23:22)
- 姫路城の観光客、14年ぶり100万人突破へ(1/20 14:45)
- メロンが菊に? フルーツ・ベジタブルカービング(1/20 14:48)
- 身近な素材で避難小屋 神戸・防災エキスポ(1/20 09:55)
- 兵庫運河の真珠でアクセサリー制作 神戸(1/20 10:00)
- 名園を望む大正モダン 料亭旅館に新和室 加古川(1/20 10:03)
- 待望の寒波 六甲山人工スキー場が全面オープン(1/20 09:07)
- 「広辞苑」誤記見落とし半世紀 芦屋の解説、実は須磨(1/20 09:01)
- 人気「たこグッズ」増殖 フェリー会社、増収へ期待(1/19 14:43)
- 不戦へ誓い 「空爆慰霊塔」で音楽祭 姫路(1/19 14:59)