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延命中止の指針、6割が未採用 救急施設へ本社調査

2008年01月21日

 延命治療を中止する手順を示した日本救急医学会のガイドライン(指針)について、全国の救命救急センターの約6割が採用に慎重であることが朝日新聞社のまとめでわかった。多くの施設が理由に「刑事責任を問われない保証がない」を挙げた。指針は「本人の利益にならず、家族も望まない延命治療」の中止に、刑事責任を回避する狙いもあるが、医師側の不安は残ったままだ。

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延命治療中止の流れ

 指針は、学会の提言として出された。治療をしても数日以内の死亡が予測されれば、本人の意思が分からなくても、家族が判断できなかったり、身元不詳などの理由で家族と連絡が取れなかったりした時も、主治医や看護師らを含む「医療チーム」で人工呼吸器を止めることができる。

 アンケートは昨年暮れ、厚生労働省が指定する全国204の救命救急センターに送り、108施設が回答した(回答率53%)。

 指針採用の意向を聞いたところ、「当面採用しない」が22%(24施設)、「未定」が43%(46施設)と合わせて65%に達した。「全面的に採用」は16%(17施設)で、「一部採用」が18%(19施設)だった。

 採用しないや未定と答えた施設の6割(42施設)が、理由として「刑事責任を問われない保証がない」を挙げた。「国の指針ではなく、学会の提言だから」(31施設)、「病院内や診療科での考え方がまだまとまっていない」(31施設)などが続いた。

 一方、実際に家族から、延命措置の中止の検討を求められたことがあるという施設は72%(78施設)あった。こうしたケースで、12施設が「11件以上ある」とし、4施設が「実際に延命措置中止に至った」と答えた。

 指針の改善点について、73施設が「刑事責任に問われない仕組みを考えるべきだ」と要望。「指針に沿って延命措置を中止したケースを評価・検証する」(30施設)、「植物状態の患者への対応を考える」(30施設)などが続いた。

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