川口盛之助の「ニッポン的ものづくりの起源」

クールジャパンと職人気質の合体

技能五輪やノーベル賞歴から日本の推進力が見えた

<表1> ものづくり総合力

表1 ものづくり総合力

 さて、そんな6つの指標の国別対抗ランキングの調査結果をまとめたのが上の表です。まず、すぐ分かることは日本のパフォーマンスが最上流から最下流まで一貫して5位以内にすべてランクされているということです。そんな国は意外と無く、ほかにはフランスぐらいしか見当たりません。

 ほとんどの国は、右が高いと左が低いとか、その逆とか、強弱を持った波形になっているのですが、わが国は一直線で、そのうえすべてハイランカーなのです。特許より右側すべての分野で世界の断トツトップの米国でさえも、技能五輪では見る影も無く20位に甘んじています。逆に技能五輪トップの韓国は右下がりで、国民悲願のノーベル賞やフィールズ賞がまだ1つも獲れていません。

 各国のお国柄が見えるようなので、波の形をグルーピングしてみました。大きく分けて3つのグループに分類できます。

<表2> ものづくり総合力(タイプ別)

表2 ものづくり総合力(タイプ別)

A:左下がり:合理的貴族型
理論的なことや風流なことを考えることは得意なのだが、設計や生産に直結することは苦手。手を汚したり、足で稼いだりという実務的なことは卒業気味で、アイデアやソフトで稼ごうとするタイプ。米国やイギリスに最も顕著で、オランダにもこの傾向有り

B:両端下がり:冷めた中産階級型
研究論文を書き、高度で権威的な研究に精力的であるが、実際の組み立て加工作業でのクラフトマンシップは相対的に弱い。一方で、まじめな堅物なのか、くだらない企画などにも興味を示さない質実剛健な風土。スウェーデンに顕著で、ドイツやフランスもこの傾向。ロシアもこれに準ずる

C:フラット〜真ん中下がり:風雅な庶民
地道に手を汚し、身体で覚える手作業工程を重視しつつも、風流で当面役に立ちそうにない数学や奇抜な企画にも大まじめに取り組む子供心を持っている。自然科学全般に高い興味を持ち、満遍なく広い領域で高いレベルの成果を上げている。日本に独特のポジションだが、韓国・台湾・中国などを合算すると似たようなプロファイルになる。これら新興急成長中の国々は日本モデルを追うようにして今のところ現場技能の向上に努力しているが、時間のかかる高度な研究基盤の確立にはまだ手が回っていない様子が分かる

Back
1 2 3 4
Next
このコラムについて

このコラムでは、商品の機能やデザインにフォーカスし、その商品が生まれた発想の起源を探ります。特に日本の商品に密かに隠れたいかにもニッポン的な「和」のテイストに注目しながら、日本のものづくり文化に息づく競争力の源泉を紐解いていきます。

筆者プロフィール

川口盛之助
(かわぐち・もりのすけ)

川口盛之助

慶応義塾大学工学部卒、米イリノイ大学理学部修士課程修了。日立製作所で材料や部品、生産技術などの開発に携わった後、KRIを経て、アーサー・D・リトル(ADL Japan)に参画。現在は、同社シニアマネージャー。世界の製造業の研究開発戦略、商品開発戦略、研究組織風土改革などを手がける。著書に『オタクで女の子な国のモノづくり』(講談社)がある (写真:山西 英二)

こちらも読んでみませんか?
more

バックナンバー

記事・写真・図表の無断転載を禁じます。


この記事を

ほとんど読んだ
一部だけ読んだ
あまり読まなかった

内容は

とても参考になった
まあ参考になった
参考にならなかった

コメントする 皆様の評価を見る

コメント数: 0件受付中
トラックバック数:


読者が選ぶ注目の記事
more

アクセスランキング
more
NBonlineの情報発信