クールジャパンと職人気質の合体技能五輪やノーベル賞歴から日本の推進力が見えた
日本では、ものづくりを論じる時、安直に生産技術の話ばかりに偏る傾向があります。東京都大田区や大阪府東大阪市の中小企業における旋盤やプレス加工などの職人技。あるいは製鉄会社における鉄の鍛造作業での灼熱する鉄塊の色艶から最適条件を見極めるノウハウなどのようなアナログな技量の話です。 「2007年技能五輪国際大会」の競技風景。写真は「製造チームチャレンジ」という職種 もちろん、このような日本ならではの「こだわりの職人気質」は、代え難い宝物であって、間違いなく我が国の強みの大黒柱でしょう。しかし、ものづくりにはすべてのバリューチェーンが欠けることなく取り揃っていることが、それにも増して重要なのではないでしょうか。我が国のこれまでの大躍進の本当の理由とは、このバランスにあったのだと思います。矮小化されたものづくり論ではなく統体としてとらえることが肝要なのです。 先進国の宿命として、少子高齢化の波がこれからわが国にやってきます。人口が減るのですから、それなりに国力は落ちていくのでしょうけれど、妙な方向に枯れることなく、近頃の若者やその次の未来の若いもんたちにもつないでいきたい。それが、私たちの大切な工業観だと思います。 真のクールジャパンの完成系とは…昨今、日本のデジタルコンテンツの世界的な影響力が脚光を浴び始めました。クールジャパンなどともてはやされています。アニメや漫画に加え、テレビゲームの分野でも任天堂やソニーが大きなシェアを獲得しています。イグノーベル賞に選ばれたバウリンガルやたまごっち、カラオケなどの発明にはこれらと同じベクトル上にある「道具づくりのハイセンス」が感じられます。 「A:左下がり:合理的貴族型」のように、油にまみれて細かい忍耐のいる3K作業から足を洗うのでもなく、かといって、「B:両端下がり:冷めた中産階級型」のように風流な嘆かわしい企画をバカにするでもない。子供心を持った熟練工になることができればいいですね。 「日本人は創造的な仕事ができない」というような欧米に対する技術タダ乗り論をいまだに説く不届き者がいますが、そのような輩に会った時には前ページの表を見せてあげてください。2つの点でそのような難癖を論破しましょう。 日本は多角的に見て世界の産業発展に最大級の貢献をしていることは明らかというのが1点目です。2つ目としては、百歩譲って、スタートで出遅れたゆえにノーベル賞などのトップ領域でまだ後れを取っているとしても、産業の発展には表に示したすべてのプロセスが等価に必要であって評価されなくてはならないという点です。創造力を発揮する分野は多岐にわたっているのであって、いわゆる学究的分野だけではないのです。己の適性を知ったうえでお互いの強み弱みを補完できる関係になれるといいですね。 アキバ系や渋谷ギャルも世界に冠たるクールですが、大田区の職人気質も全く同様にクールです。この両者のセンスを正しく私たちの内なる強みと認識し、技術マネージをする者がそれらを上手に結びつけることができれば、それこそが真のクールジャパンの完成形を見るのだと思います。 今回の技能五輪静岡大会での日本の健在ぶりを見ていてそのようなことを感じました。金16個で「勝って兜の緒を締める」だけでなく、鎧から具足、馬の鞍まで一式揃えてキッチリ緒を締めなくちゃ、ということです。 |
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