2ちゃんねるまとめサイトがまたも炎上・閉鎖
2ちゃんねる掲示板の内容を読みやすく編集し転載するまとめサイトのひとつ、「( ;^ω^)<へいわぼけ」が炎上し、昨年末、閉鎖に至った。同サイト閉鎖のメッセージによれば、理由は「アフィリエイトブログ転載禁止のニュー速(嫌儲)のスレッドを転載してしまいその板の皆様の反感をかってしまったからです。」とのこと。これをきっかけにネットの世界では「嫌儲」についてさまざまな議論が交わされた。
「嫌儲」という言葉は、2008年版「現代用語の基礎知識」(自由国民社)にも登録された旬のキーワードのひとつだ。「嫌儲」の読み方は、一般的には「けんちょ」だが「けんもう」「いやもう」などとも読まれる。意味は字面から連想しやすい。「金儲(もう)けを嫌う」ということ。ただしこれは自分の金もうけを嫌うのではなく、他人が楽をしてもうけるのを見るのが気に入らないという意味合いがある。実際、ネットの世界では、アフィリエイト広告でもうけているブログは嫌われる傾向がある。
「へいわぼけ」閉鎖は、「2ちゃんねる」の「嫌儲板」参加者による反感が理由とされているので「嫌儲」が注目されたが、実際の閉鎖に至る経緯は単純ではなかった。
ベースには「嫌儲」の心情があるのだろうが、当初はアフィリエイト広告のあるブログへの転載を認めないとする「嫌儲板」のルール違反への反感が強かった。その後、広告削除による対応もあったが炎上は止まらず、閉鎖に至った。閉鎖する直前、アフィリエイト広告収入は月額10万円を超えるという話も出てきて、「他人のコンテンツでそんなにもうけていた」のかという「嫌儲」感情が広がった。
「2ちゃんねる」のユーザー、“2ちゃんねらー”の“突撃”でまとめサイトやブログが炎上し、閉鎖に至るのは珍しくはないが、今回の「へいわぼけ」閉鎖によって、アフィリエイト広告付きサイトやブログへの「2ちゃんねる」コンテンツの転載禁止はネットのルールとなってきた。
ネットユーザーが金もうけを嫌うワケ
ブログの世界では「へいわぼけ」閉鎖騒動を契機に「嫌儲」を見直す話題が続いた。目立った話題を提供したブログからは、ネットユーザーの「嫌儲」についてのさまざまな視点が読み取れたので、典型的なものを3点ほど挙げておきたい。
1点目は、フリー百科事典「ウィキペディア」的な「嫌儲」の方向性だ。広告なしで運営されている「ウィキペディア」には、広告が絡むと記事の公平性が維持できないという考え方がある。そのため寄付とボランティアでなんとか存続しようとしている。昨年後半から英国公共放送BBCのサイトには広告が付くようになったとはいえ、日本の公共放送NHKのサイトに広告が付くことは想定しにくいのも、嫌儲的コンテンツの公平性と関係している。
2点目は、嫌儲がむしろネットの自由を支えるという考え方だ。今回の騒動に触発されて書かれた「花見川の日記」のエントリー「嫌儲とWeb性善説」は、いかにもネットユーザーらしいユニークな視点で「嫌儲」を取り上げていた。前述の「ウィキペディア」や「2ちゃんねる」のようにネットユーザーが作り上げているコンテンツは「お金の流れがないから成立している」というのだ。それらの閲覧に課金されるようになるとその課金に見合った品質のコンテンツが要求されるようになり、自由なコンテンツ作成が阻害されるだろうという指摘は一理あるように思う。
3点目はアフィリエイト広告からかなりの収入を得ている「アルファブロガー」と呼ばれる人たちの存在と「嫌儲」との対比だ。彼らは「嫌儲」の対象にはなっていない。自前のコンテンツから生じる利益なら問題はないということだろう。対比して言えば、「へいわぼけ」は「2ちゃんねる」のコンテンツをもうけに使ったことが嫌われた要因となったと言える。アルファブロガーを含め、特定ブロガーにもっと語ってほしいからそのインセンティブとしてもうけてほしいのだが、そうのような流れはまだできていない。