「どげんかせんといかん」。この言葉で登場した宮崎県の東国原英夫(そのまんま東)知事(50)が、初当選から21日で丸1年を迎えた。時に物議を醸す言動などが相乗効果となり、「宮崎ブーム」が続いている。【中尾祐児、種市房子】
宮崎市から直線距離で約500キロ離れた、大阪市中央区の高島屋大阪店。1月16日から始まった宮崎県物産展の開幕直後、歓声がわき起こった。東国原知事の姿があった。
同市西成区の主婦、又野和子さん(70)は「タレント時代は軽い感じで好きやなかったけど、今は一生懸命な姿がかっこええ」。
知事がいた時間はわずか10分。にもかかわらず、同店によると、昨年1月に実施された物産展初日と比べ、売上高は1.5倍にはね上がった。
官製談合事件で前知事が逮捕され泥沼化した県政に降り立った「無党派の星」。活発なテレビ出演、トップセールスなどで「宮崎」の注目度は抜群に高まった。
4月から9カ月で、県庁には観光客ら約26万8500人が押し寄せた。知事就任後、受けたテレビや雑誌などの取材は約530本。電通九州は、就任1週間のテレビなどのPR効果を165億円とはじき出している。
タレント時代は「一流」とは言えず、写真週刊誌襲撃事件などを起こした「たけし軍団」の“お騒がせ芸人”。ブームの背景について、知事自身は「メディアに作り上げてもらった」と話す。
しかし、知事をウオッチし続ける電通九州の井上知弘宮崎営業所長は断言する。「『地方自治の代弁者』として今後も注目度は高いはず。大学で学び直し、努力して復活した『ジャパニーズドリーム』を体現しているんですから」
一方で、知事の言動に危うさを指摘する声もある。
「定例記者会見は必要ないのでは」「徴兵制があってしかるべきだ」など知事の多くの問題発言について、横澤彪(たけし)・鎌倉女子大教授(メディア論)は「『たけし軍団』は『世の中に嫌われること』を演じていた。この時に染みついた本能で、発言がついつい出るのだろう」。
県政批判の新聞投稿をした男性は、日記風ホームページ(ブログ)で知事から激しく“攻撃”された。メディア論に詳しいジャーナリストの上杉隆氏は「『批判者は許さん』という姿勢は、長い目で見ると県民の支持を失うことになるだろう」と懸念する。
毎日新聞 2008年1月20日 21時00分