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【暮らし】

どうなる学校 『DSで授業』検証中

2008年1月19日

 これまで「勉強の邪魔」と“悪者扱い”されてきたゲーム機を学校の授業で活用する試みが始まっている。どんな使い方? 長所と短所は? 携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」を学習ツールとして使っている千葉県柏市立西原小学校を取材した。  (井上圭子)

 「やった!」の声があがる。五年三組の朝学習。子どもたちは夢中で、DS画面に現れる問題を慣れた手つきで解き進む。

 筆算や小数点の引き算などのメニューの中から、児童が好きな項目を選び、難易度も自分で設定。上の画面に出る問題の答えを下の画面に専用のタッチペンで書くと、瞬時に〇×判定が出る。一定レベルをクリアすると画面に表彰メダルが表示される。子どもたちは「勉強っぽくなくていい」「攻略が楽しい」。

 同校の情報教育担当、上野由美子教諭は「紙のテストは拒否反応を示す子もいて、これほど集中しない」と効果に驚く。

 この授業は、DSを使った学習効果を検証する文部科学省の研究事業だ。同省から委託を受けたNPO法人「パソコンキッズ」(理事長・赤堀侃司東京工業大教授)が昨年九月下旬から半年間、全国十三の小中高に計五百六十台のDSを貸している。

 貸与台数は一校四十台と限りがあり、西原小学校では、学級単位で使用日を設定することで一人一台ずつ配布。「計算DSトレーニング」ソフトを入れ、授業時間以外でも、登校時から下校時まで自由に使わせている。

 上野教諭は「朝学習で使うと脳にエンジンがかかり、授業に入りやすい。勉強嫌いの子が休み時間にもしている」と話す。

 算数の授業では、教員が解法を説明した後にDSを使用。「『分数(7)』『三十問』『制限時間九分』と設定して」などと指示し、時間内に終わった子はさらに難問に挑戦。制限時間内に全員が計算も採点も終えていた。上野教諭は「紙のテストでは、十分以内に問題を配って、採点までするのは不可能」とDSの威力を語る。

 「できる子は次々進んでレベルアップでき、できない子は苦手問題にじっくり取り組めるのが最大の長所。一斉学習の短所をカバーできる。採点の手間が減り、できた時間を個別指導にあて、児童に目が行き届くようになった」

 実際に学力アップの効果も出ている。京都府八幡市の中学校では、授業の冒頭十分間、DSソフトで英単語学習を行ったところ、五カ月で平均語彙(ごい)数が30−40%も増加したという。

 一方、短所もある。メーカー希望小売価格は一台一万六千八百円と「高価」(上野教諭)で、ソフトは一本約四千円。破損や紛失の問題もあり、学校の備品でそろえるのは予算上厳しい。さらに、タッチペンの文字認識機能も改善の余地がある。頻繁に文字が誤って認識され、意欲をなくす児童もいたという。

 研究を統括する赤堀教授(教育工学)も「相手はドラッグ。使い方によって毒にも薬にもなる」とクギを刺す。一方、携帯電話などモバイル機器は、子どもにとって手の延長のような感覚だ。ベネッセの二〇〇六年調査で「家でゲーム機の学習ソフトで勉強する」小学生は25%を超える。

 「DSが優れているのは、手で書ける点。どんなに技術が発達しても自分の手で書かなければ覚えられない。一斉授業のなかでの個別指導には有効。今後に向けて課題を検証したい」

 

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