子どもを持つ男性は、子どものいない男性に比べて前立腺癌(がん)のリスクが高いことがデンマークの研究で示され、医学誌「Cancer」オンライン版に1月7日掲載された。同誌印刷版には2月15日号に掲載される予定。
1935〜1988年にデンマークで出生した全男性を対象とした大規模研究で、子どものいない男性は前立腺癌リスクが17%低いことが判明した。この理由について、研究を行ったStatens Serum(血清)研究所(コペンハーゲン)のグループは、生物学、環境、社会、行動のどのような因子が関わっているのかは不明と述べている。
2005年に発表された4万8,800人強の前立腺癌患者を対象としたスカンジナビア地域の研究でも、子どものいない男性では前立腺癌リスクが17%低いとする結果が出ており、今回の結果はこれに一致する。この2つの研究では子どもの性別による前立腺癌リスクへの影響は認められていないが、数年前にイスラエルで実施された大規模研究では、息子を持つ男性は持たない男性に比べて前立腺癌リスクが40%高いことが示されているという。
イスラエルの研究を率いた米ニューヨーク大学教授Susan Harlap博士は「この結果の違いは、因子の複雑さを示している」と述べ、イスラエル系ユダヤ人と北西ヨーロッパ人とでは前立腺癌の発症率が異なる点を指摘。息子を持つこととの関係がみられることから、Y染色体の変異が関わっている可能性もあり、そうだとすれば民族に特有のものであるとHarlap氏は述べている。
スカンジナビアの2研究の間にも相違点がみられる。今回のデンマークの研究では、子どものいる男性では、子どもの数が増えるにしたがって前立腺癌リスクが低下する傾向が認められたが、先に行われた研究では子どもの数によるリスクの変化は認められなかった。
米国癌協会(ACS)のOtis Brawley博士は今回の結果は、単に統計学的に有意差があるだけで偶然によるものと述べ、「統計学的に有意差がみられても生物学的に有意差があるわけではないものも多い」と指摘している。いずれにせよ、子どもを持たないことに前立腺癌の強い予防効果はなく、この結果を受けて男性が子どもを作らないようにする必要はないという。「本当に相関関係があるとすれば、その原因を知りたいと思うが、永久にわからないだろう」とBrawley氏は推察している。
原文
[2008年1月7日/HealthDay News]
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