統合失調症、双極性障害(躁うつ病)などの精神疾患の発症を、極めて早い段階で予測することが可能であることが、米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)Tyrone D. Cannon氏らの研究で明らかになった。発症リスクの高い子どもで、診断前に5つの要因のうち3つ以上が存在する場合には、80%が2年半以内に精神疾患を発症するという。医学誌「Archives of General Psychiatry」1月7日号で報告された。
米国児童青年精神医学会(AACAP)によると、双極性障害、統合失調症、うつ病、アルコール依存症および薬物依存症などの精神疾患に最もよくみられる徴候は妄想と幻覚であるという。妄想とは、事実ではないことを強く信じ込むことで、幻覚とは、誰も話していないのに人の声が聞こえるなど、実際にないものを感じることである。このような症状は厄介なものだが、一方でほとんどの患者は暴力的な傾向が増すようなことはないとCannon氏は述べている。今回の研究では暴力性については検討していないため、精神疾患の早期治療が、学校での銃乱射のような事件の予防につながるかどうかは不明。
Cannon氏らは、北米の8カ所の治療センターを受診した平均18歳の若年者291人について、前向き研究を実施した。いずれの被験者も異常思考などの徴候を訴えて治療を求めてきており、2年半の追跡の結果、35%が精神疾患を発症した。研究グループは、精神疾患の発症を予測する因子として、最近の機能低下を伴う統合失調症の家族歴、高度の異常思考、高度の懐疑や妄想、社会的障害および薬物乱用歴の5つを特定。このうち2つが当てはまる場合、精神疾患を発症する確率は68%で、3つ当てはまれば80%であるという。
米ニューヨーク大学のChristopher Lucas博士は、今回の研究に再現性があれば、この分野に新たな知見をもたらすものだとする一方で、予防的な治療については疑問を呈している。Cannon、Lucas両氏とも、今回の研究は高リスクの集団を対象としたものであるため、一般化することはできないと指摘している。
Cannon氏は、子どもの社会性がなくなったり、楽しんでいたはずの活動に参加しなくなったりすることがないかどうか、親は注意深く見守る必要があると述べている。子どもは、治療を受ける段階になるまで、自分に妄想や幻聴などの症状があると認めたがらないことが多いため、特に精神疾患の家族歴がある場合はこのような徴候に注意を要するという。
原文
[2008年1月9日/HealthDay News]
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