雪の舞う北国の住宅街で惨劇は起きた。青森県八戸市のアパートを焼いた9日の深夜火災で、母子3人の刺殺体が見つかった。無職の長男(18)の姿がなく、10日早朝、JR八戸駅で発見されると警察官に「近づくな」とナイフを振り回して抵抗した。青森県警は銃刀法違反容疑で長男を逮捕し、殺人容疑でも追及している。長男と家族の間に何があったのか−−。家庭内暴力があったとの証言もあり、県警は事件の背景も調べている。
長男はアパートから西へ約2キロのJR八戸駅の構内で発見された。20代の男性駅員によると、長男は身長180センチほどの大柄な体に黒っぽい服を着ていたという。署員ら5人前後に囲まれると、大声で叫び、駅の外へと走って逃げた。その後、階段の下の歩道で取り押さえられ、パトカーに乗せられた。
母(43)とともに次男(15)と長女(13)が殺害され、アパート周辺の住民や友人らは驚き、絶句した。
一家を知る近所の人は「長男は以前は引きこもりで、家庭内で暴力をふるい、次男にナイフを突きつけたこともあった」と言う。「エアガンやナイフを集めていて、次男は『いつか兄に殺される』と言っていた」とも語った。「数年前、家に灯油をまいたこともあった」と話す人もいた。
9日深夜に119番通報した近所の無職の男性(65)は「2階の窓から火が出て白い煙が立ちこめていた」と振り返り、近くの主婦(60)も「身近でこんな事件が起きるなんて……」と語った。
次男と長女は八戸市立中に通い、ともに柔道部員だった。次男の同級生の男子生徒(15)は「明るい性格で、柔道部の練習に熱心に打ち込んでいた。よくゲームの話などをして、9日にも会ったばかりだったのに」と語った。母親から事件を知ったという女子生徒(15)は「(次男は)バスケも得意で今は今春の高校受験に向けて勉強中だった。今は冬休みだけれど9日も受験の学習会で一緒になった。いつもみんなを笑わせてくれた」と目に涙を浮かべていた。中学で会見した校長は「冥福(めいふく)を祈りたい。3学期開始前で、学校としても大変ショックだ」と語った。【野宮珠里、太田圭介、村松洋】
◇増える親族殺人…ほぼ半数占める