現在位置:asahi.comトップ>教育>2008年度大学入試センター試験>出題分析> 記事 【分析速報】現代社会2008年01月19日 【提供:東進ハイスクール】 ●大問数、マーク数は変わらないが,配点は変化。 【全体概観】大問数、設問数、マーク数は変わらなかったが、配点には変更があった。リード文のない小問集合はなく、会話文形式のリード文は1題出題された。出題分野は政治総合・国際経済・倫理分野・国際政治・青年期・日本経済と、全分野を網羅するものだった。課題追求学習に関する出題も1問出題された。 ●設問別分析 【第1問】人権と日本の政治 人身の自由の内容、通信傍受法、DV防止法、PKO協力法、イラク復興支援特別措置法など話題の法律の内容、日米安全保障条約と思いやり予算、米軍基地整理縮小についての沖縄県での住民投票、ベンサム・ホッブズ・マルクス・モンテスキューの思想の違いを問う問題が出題された。あわせて、情報公開法が各地方で情報公開条例が制定された後に制定された事実や、法の支配のあらわれが憲法第81条の違憲法令審査制度であること、小選挙区制が大政党有利な多数代表制であることが問われた。人権・法律・思想・政治制度・選挙区制にわたる広い出題であるが、内容は概して基本的である。 【第2問】国際経済と貿易 リカードの比較生産費説は過去問で何度も出題されたパターン。日米貿易摩擦の歴史も1995年のコメの部分開放(ミニマム=アクセス)から1999年例外なき関税化への移行、日米構造協議(1989〜90)、日米包括経済協議(1993〜94年)の事実、ウルグアイラウンド(1986〜94年)でコメの自由化問題が話し合われた事実が問われた。円高・円安の輸出・輸入などへの影響は、一般受験生には難しく見えても、公式的ルールで解ける問題である。また、GATT→WTOの最恵国待遇も問われたが、IMFが為替の自由化・安定化、GATT・WTOが貿易の自由化を目的としているという基本的理解で解答することが可能な問題であった。 【第3問】世界遺産と文化・宗教 世界遺産の場所を問う問題にはあせった受験生もいたかもしれない。しかし、富士山がまだ世界遺産に指定されていないというのは有名。文章から見て負の歴史遺産といえば「原爆ドーム」と推定できる。また、文化財であれば民間の所有物でも保存のために公的資金が出されると推測できる。 キリスト教が戦国時代に庶民のみならず一部の大名にも信仰されたというのもやや細かい知識だが、正解して欲しい。庶民に広まった仏教としては鎌倉仏教が重要。臓器移植も話題のテーマであり、「死」の相対性をめぐる議論が行われたことを押さえているかがポイントとなった。 【第4問】国際連合と国際政治 国際連合の組織として、事務総長権限の強化、国際人権委員会の人権理事会への格上げという時事問題、出入国管理法改正(2007年11月施行)の外国人に対する入国時の指紋採取・写真撮影導入も出題された。その他、2001年のブッシュ大統領によるアフガニスタン制裁やPKO協力法の内容、国連分担金(1位アメリカ22%、2位日本19%→2007年には16%台に引き下げ)など話題のテーマが多く出題されている。また、「持続可能な開発」が国連環境と開発に関する世界委員会で提唱され、「国連人間環境会議」(1972年)ではなく、「国連環境開発会議」(1992年)のスローガンに用いられたことが問われている。時事性の強い出題であった。 【第5問】青年期の課題 青年期の課題を問うごく基本的な出題であった。問1ではモラトリアム、ルソーの第二の誕生の意味(言葉の暗記ではない)、マズローの欲求階層説の内容が問われた。高校教科書にある尾崎豊に見られる対抗文化も、文脈から解答は明らかであろう。統計データ読み取りも、今年は問4のわずか1問であり、時間不足という受験生も大幅に減少したであろう。また問5のレポートの方法も昨年とは異なり、簡単になっている。 【第6問】経済のしくみ、市場と金融 政府の機能としての財政機能(補整的財政政策)、小泉内閣で話題となったセーフティネットという言葉の意味、少子高齢化の影響で生産年齢人口の社会保障費用負担が増大する事実、ペイオフ(預金保護上限を元本1000万円+利子までで遮断すること)が問われた。また、最近の企業不祥事も含めてモラルハザードの具体例を問う出題もあったが、概して、基本的・常識的に解ける問題であった。 ●新高3生へのアドバイス 「現代社会」では、時事テーマを素材としつつも、その根本にある基本的知識と、その理解度が問われています。「政治・経済」に比べて多方面にわたる知識と理解が必要ですので、制度・仕組みの定義、存在理由(意義)、問題点、解決策を確実に押さえていきましょう。センター試験では「青年期の課題、現代社会の特質、倫理、文化」「人類的課題〜人口・資源・環境・都市問題」「経済分野」「政治分野」「国際政治・国際経済分野」「国民福祉」という大きな分野から幅広く出題されていますので、知識の穴を作らずに幅広く基本知識を積み重ねていくことが肝要です。とくに政治経済の分野では知識が問われ、点差のつく部分ですから、しっかりと勉強しておいて下さい。また、時事テーマとして出題される問題は、現実の問題点と解決策ですので、基本事項の先にどのような現実と問題点があるのかを押さえていく姿勢が大切です。地球環境問題や少子・高齢化といった大きな時事的テーマはもちろんのこと、最新の時事動向に興味を持っておくことが高得点のカギとなるでしょう。また、資料やアンケート調査の読み取り問題では、今年度は1題でしたが、教科的知識にとぼしくても解答可能な問題が多い一方で、資料の読み取りに時間を取られるため、設問形式に十分慣れておくことが大切になります。また、最新の時事問題に対応するためにも過去問演習を繰り返すだけでなく、2カ月に1回実施される東進の「センタープレ入試」を積極的に受験して、本番の雰囲気に近い状況での訓練を十分に積むようにしましょう。 |