「君、病院で死のうと思ったって死ねなくなるよ」。在宅医療に詳しい医師から言われて驚いた。
くらしナビ面のシリーズ「どこで死にますか」の取材をするまで、「最期」を特段考えたことはなかったが、いま亡くなる人の8割は病院だ。「家族がいなくても病院なら安心」と口にしたら、医師から「病院信仰は捨てろ」と駄目を押された。
増え続ける医療費。これを抑えるために、国はベッド数を減らし在院日数の短縮化を図る。現在年約100万人の死者は30年後には約170万に増える。望むと望まざるとによらず、病院より安上がりとされる「在宅死」を選択しなければならなくなる。
国がいう「在宅」には、有料老人ホームなども含まれる。お役所の勝手な定義付けに抵抗感を覚える。しかし、どう呼ぶかは別にして、単身世帯がさらに増えれば、こうした「在宅死」が主流になるのかもしれない。
どこで死ぬか、それを選ぶのがぜいたくと言われる時代がもうそこまで迫っている。【有田浩子】
毎日新聞 2008年1月19日 東京夕刊