岡山県の農業関係者の間で明るい話題が飛び交っている。全国一の生産量を誇るブドウ「ピオーネ」の県内生産額が昨年、百億円を突破したことが県の推計で分かったからだ。
野菜や果樹など園芸品目の中で単独品種が百億円を超えたのは初めてである。「種なし」「大粒」「甘い」。三拍子そろった岡山のピオーネは消費者の好みに合い、県外でも売り上げを伸ばしてきた。
ピオーネは静岡で生み出され、一九七〇年代に岡山に導入された。そのころ全国的に大粒で値段が手ごろな山梨、長野産の「巨峰」が主流を占め、岡山産のブドウは苦戦を強いられていた。巻き返しの候補としてピオーネに白羽の矢が立ったのだ。
当時、長野士郎知事は「巨峰をしのぐ、ゴルフボールのような大粒のブドウが欲しい」と周囲に漏らしていたという。だが、導入時のピオーネは、そう大粒ではなく種もあった。人気を誇る巨峰には歯が立たなかった。
ここまで飛躍できたのは官民挙げた研究の成果といえる。八〇年代に大粒化に加え、種なしにする栽培技術を全国に先駆けて確立。種のあるものと区別するため「ニューピオーネ」と名付けたが、今では種なしが普及し一般的にピオーネと呼ばれる。
最近は台湾、香港などに試験輸出されている。ピオーネはイタリア語で「開拓者」を意味する。世界の市場を開拓してもらいたい。