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飲食、贈り物、金…常套手段で内調室職員を籠絡 (2/2ページ)
◇中国情報も狙い?
警察庁によると、日本国内では戦後、旧ソ連とロシアの情報員による諜報(ちょうほう)事件は十数件検挙されている。男性職員に接触した大使館員らは、ロシア軍の諜報機関「軍参謀本部情報総局(GRU)」所属の情報員とみられる。「(書記官は)たびたび背後を振り返って尾行がついていないか確認する『点検』を行っていた」(公安関係者)
ロシアは旧KGB(国家保安委員会)出身のプーチン政権の下、諜報機関を強化。ここ数年、日本でも諜報活動を活発化させ、「内政情報のほか、日米の軍事動向、先端科学技術に触手を伸ばしている」(警視庁幹部)とされる。
男性職員は中国情報の専門家で、機密性の高い画像情報を扱う「内閣衛星情報センター」にも所属していた。書記官らは日本が収集した中国関連情報や衛星情報の提供を働きかけていた疑いもある。男性職員は「要求された情報は出していない」と話している。
◇友好国の信頼失う?
公安部や内調によると、書記官らは男性職員を“即戦力”ではなく、重要ポストに就くまで協力者として確保しておく「スリーパー」と位置づけていたとみられている。内調トップの内閣情報官は週1回、首相に国内外の情勢報告を行うため、外交上、ロシアに有利になるよう、日本政府中枢にディスインフォメーション(故意の偽情報)を流す起点にしようとした可能性もある。
内調は「秘密指定の情報漏洩はなかった」と弁明する。しかし、元内調室長の大森義夫氏は「内調に協力者をつくられたこと自体が問題だ」と指摘。内調は米中央情報局(CIA)など友好国の情報機関と情報交換もしており、事件が「友好国の信頼を損なう」との見方もある。
大森氏は「(内調の協力者獲得は)ロシアにとって勲章で、男性職員にロシア語のコードネームもつけていたはず。発覚しなければ自在に情報を引き出したり、偽情報を流したりしたかもしれず、われわれOBも含め猛省すべきだ」と話している。