日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。 |
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この情報の最も新しい更新日は1月19日(土)です。 |
米国防総省 米議会に要請 F-22生産 継続か FX選定に影響も (産経 1月19日 朝刊) |
[概要]イングランド米国防副長官は、連邦議会の国防関係議員に書簡を送り、中止が伝えられている最新鋭ステルス戦闘機F-22ラプターの調達費用を、2009会計年度(08年10月〜09年9月)予算案に盛り込む方針を伝え、議会審議での協力を求めた。これは米政治情報誌ナショナル・ジャーナル(速報版)が17日に伝えた。 F−22の調達継続は、飛行中に空中分解したF−15戦闘機の構造問題や、米空軍の強い要請を受けた判断と見られる。外交筋はF−22の追加調達が議会で承認されれば、日本の次期主力戦闘機(FX)で、同機の機種選定を求める論議が、米国で再燃する可能性を指摘している。 イングランド副長官は14にちの書簡で、F−22の調達機数を183機にとどめ、米英が共同開発したFー35ライトニング2などと混合運用を図る基本方針に変更はないと説明している。 F−22は1機あたりの価格が1億6000万ドルと高価で、米空軍は381機の調達を求めていたが、予算面の配慮で打ち切られていた。空軍首脳は少なくとも追加分として20機の調達を求めている。 F−22をFX候補にしている日本には、同機の生産体制と議会の禁輸措置がネックとなっていた。禁輸は継続しているが、打ち切りと見られた生産継続で調達議論の条件を変える可能性が出てきた。 [コメント]日本がFXでF−22を調達するとしても、まず米空軍が全体で183機の調達を完了し、米空軍が当初予定していた381機の差額機(381−183)である98機を、日本に割り振って埋める調達数とするのではないか。 米空軍はF−22を新千歳、三沢、百里、、新田原、嘉手納基地の在日米軍基地などに定期的に飛来させ、空自と共同訓練を行うことになる。また空自もグアムやアラスカ、米本土の西海岸の米空軍基地などに共同訓練に出かけることになる。その場合、それぞれの現地でF−22の整備や修理施設があったり、部品の調達が出来れば日米の運用効率が高くなる。 日米が中国、ロシアという将来の軍事力を想定すれば、日米でF−22をできるだけ多く配備し、効率よく運用できるかがポイントとなる。 米軍はこの機会にF−22の生産を集中させ、現在の1機1億6000万ドルの生産費を、20〜30パーセント削ることを現実化させる可能性がある。ところが日本は防衛利権でF−22の甘い汁を吸いたい連中が、F−22が1機で2億ドル以上に跳ね上げることさえやりかねない。今回は絶対にそんなことはさせない。 |
内閣情報漏洩 内調職員を 懲戒免職 防諜機能の不備露呈 (産経 1月18日 朝刊) |
[概要]在日ロシア大使館員(2等書記官 38才 GRU所属の疑い)から、情報提供の見返りに約400万円現金を受け取っていた内閣情報調査室の男性職員(52)が、国家公務員倫理法に基づき懲戒免職処分となった。内調職員が懲戒免職になるのは内調が昭和61年に発足して以来初めて。 首相官邸は中央省庁を主導する形でカウンターインテリジェンス(防諜)の強化や、防衛省改革会議で情報保全の徹底に乗り出したばかりだが、”足元”から失態に見舞われ、官僚組織の「ゆるみ」が政権中枢で露呈したことになる。 安倍前内閣では上海の日本総領事館員の自殺を受けて、「カウンター・インテリジェンス推進会議」を設置し、機能強化に関する基本方針を取りまとめた。今年4月には内調内に、「カウンターインテリジェンス・センター」を設置し、来年4月からは国の安全や外交上の重要情報にあたる「特別管理秘密」の漏洩を防ぐための政府統一基準を設け、運用するはずだった。 町村信孝官房長官は今回の不祥事を受け、政府の監督責任者を処分すると共に、内調内に再発防止に向けた検討委員会を設ける方針という。さらに情報漏洩の厳罰化や情報要員の養成強化を検討する意向を示している。今回の事件は日本政府の防諜機能が危機的な状況を脱せない現状を浮き彫りにした。 [コメント]海自のイージス艦情報漏洩事件のときにも書いたが、自衛隊員に関わらず秘密情報を扱う職員に情報保全の意識が極めて低いようだ。なぜ低いのかといつも考えるが、ある公安警察官が私に語ったひと言をいつも思いだす。「上の連中は我々に何も話すなと言うが、我々が掴んだ情報を上の連中はすぐにマスコミに話す」という不満を語った。すなわち上がいい加減だから、俺たちもこの程度はいいだろうと考える傾向があるのだ。 今回の漏洩事件で懲戒免職になったのは内調で52才の係長クラスの役職という。ロシア情報を専門としていたというからロシア情勢やロシア語に自信を持っていたと思う。しかし内調では係長クラスの低い役割しか与えられていない。この者は不満やコンプレックスが相当に高まっていると考えられる。そこをロシアの諜報機関員たちに工作対象者として狙われたのである。 まずはシンポジューム、セミナー、見本市、国際会議、パーティーなどで、ロシア情報機関員から流ちょうなロシア語を褒められる。次ぎに常識に近い簡単な質問をされ、教えてやるとまた褒められる。そのように相手(対象者)の警戒心や罪悪感を溶かしつつ、食事やお酒の会合を重ねていく。そのうち対象者は工作活動を友情と思いこみ始める。工作対象者に思い込ますのである。 このように誰もが協力者に引き込まれるテクニックがある。それには仕掛けられた経験が免疫となる場合が多いと思う。その経験が日本人のだれもが稀薄である。つい日本人は人情や井戸端会議で秘密情報が漏れ易い。 現金を約400万円を受け取ったといっても、8〜10年間だから、お金欲しさに情報を漏洩した事件ではない。またロシアに渡した情報は価値が低いかも知れない。しかしロシア側は出来るだけ長く対象者と接触を続け、将来に結びつけることも重要な接触(工作)活動なのである。 カウンター・インテリジェンスと言葉は格好いいが、所詮は”毒は毒を盛って制する”ことと思う。内調内に政府側のスパイを送り込んで、個々の職員を密かに監視するしかない。それで困るのは”上の者”であってはカウンターインテリジェンスは成り立たないのだ。 守屋前防衛事務次官(容疑者)はいかに情報をまもり、いかに情報を都合よく漏洩したのか。守屋容疑者のような怪物を二度と出さないためには、彼の情報活用術と対応策をよく研究することをお勧めする。誰でも自分が監視対象にななっているとわかれば、無謀なことはできなくなる。今、私は将来の防衛利権のドンになる可能性のある者を徹底的に監視している。 |
朝鮮半島有事 普天間飛行場、 航空機4倍に 米文書裏付け 重要な出撃基地 (朝日 1月16日 朝刊) |
[概要]米海兵隊の沖縄・普天間飛行場が、朝鮮半島有事の際に最大300機の航空機を増強する計画で、代替施設にも同等の能力を持たせる考えであることがわかった。これは朝日新聞が入手した米国の公文書で明らかになったもので、平時の約70機から4倍強に増強されることになる。 この文書は、日米両政府が96年4月に普天間飛行場の全面返還を合意する直前の同年1月23日付のもの。第1海兵航空団(沖縄)が米国防総省のキャンベル次官補代理(当時)に説明する際、用いられた内部メモとスライド資料である。キャンベル氏は同年の日米特別行動委員会(SACO)の米国側の実質的な責任者だった。 資料では同飛行場の代替施設を「朝鮮半島有事の作戦計画に備える航空、地上部隊の拠点」と位置づけている。その上で「有事には航空機300機が普天間を使用する予定」として、普天間飛行場の現有機71機に加え、「一時通過」の142機、「追加配備」の87機が増派されると記載されている。300機の内訳は空中給油機など固定翼機21機を除くと、279機が輸送用や攻撃用のヘリからなっている。海兵隊は代替施設の条件として、「普天間飛行場の能力が必要と」として、同規模の機能を強く求めている。 我部政明・流大教授(国際政治学)は、「朝鮮半島有事などでは、普天間飛行場と同様に嘉手納基地にも空軍機が大増派されるだろう。文書はSACO当時の計画だが、新たな代替施設でも、基本的に米軍の増派計画や考えは変わっていないと考えられる」と述べた。 日米政府は05年10月に移転先を名護市辺野古沖から辺野古崎に変更。06年5月には集落上空の飛行を避けるとして、2本の滑走路をもつV字型に整備することで合意した。 [コメント]この一時通過とは多用途ヘリ(UH−1N)や攻撃ヘリ(AH−1WやAHー1Z)のことで、沖縄に移送後、整備を受けて直ちに朝鮮半島に移駐する戦闘ヘリ部隊である。また追加配備のヘリはCH−46やCH−53の輸送ヘリで、兵員や物資の輸送、救難などの任務にあたる。しかしCH−46輸送ヘリは旧式化しているため、MV−22オスプレイへの転換が進められている。また固定翼の空中給油機はKC−130機で沖縄や岩国の海兵隊航空隊に空中給油することを主な任務としている。 辺野古崎に建設が予定されている代替施設には、普天間飛行場と違い、滑走路脇に強襲揚陸艦(あるいは空母)の接岸が可能な軍港建設や、隣接する辺野古弾薬庫とリンクさせることになる。そのため代替施設であっても、軍事的な能力は飛躍的に強化されることになる。 さらに辺野古崎のある米軍キャンプ・シュワブに隣接する米軍キャンプ・ハンセンは、近い将来日本に返還され、陸上自衛隊の島嶼防衛を担う新設部隊(第15旅団)が移駐することも検討され、辺野古崎の代替基地を防衛(警備)するすることを想定していると思われる。また空自は現在の那覇基地配備のF-4戦闘機を百里基地のF-15戦闘機に機種転換し、将来的には米軍の嘉手納飛行場を共同使用することも考えられる。 このように米軍のグアム移転や普天間基地移転でも、米空軍や米海兵隊の飛躍的な緊急展開能力の強化と、自衛隊の強化・統合を合わせると、沖縄における日米戦力の強化が図られることになる。 |
「爆発予告」 「イラン高速艇 が威嚇」は誤り? 第3者のいたずらか (読売 1月15日 朝刊) |
[概要]ペルシャ湾のホルムズ海峡付近で今月6日、イラン革命防衛隊の高速ボートが米海軍艦船を威嚇したとされる事件で、「お前たちは数分間のうちに爆発する」と伝えた無線通信が、イラン高速艇以外からのいたずらだった可能性があると米海軍の情報に詳しい専門紙ネイビー・タイムズ(電子版)が13日に報じた。 同紙によれば、中東海域を航行する米船舶の間では最近、船舶間の通信に割り込んでイタズラを送信する事件が後をたたないという。またホルムズ海峡近くのバーレーンに司令部を置く米海軍第5艦隊の報道官も、メッセージが「どこから発信されたかわからない。地上局だったからこもしれない」と話している。 [コメント]これが今回の威嚇事件の”落とし所”である。すなわち今回のことを”威嚇”と特定できるのはこの無線交信(通話内容)であるが、その発信元がイランの高速艇と特定できないのだ。陸上の無線機や他の船舶からでも米艦船の問いかけに返信(応答)が可能なのである。 わたしは小型船舶1級免許を25年前に取得した。そしてヨットクルーザーを購入し、船内に国際VHF無線機(99チャンネル)やGPSなどの電子機器を搭載していた。ほかにもアマチュア無線機や携帯電話などで通信手段をとっていた。そしてヨットで海上に出たり、係留しているマリーナにいるときは、できるだけ国際VHF無線の16チャンネルを聞いていた。この16チャンネルは呼び出し専用チャンネルと呼ばれ、緊急時に備えて海上保安庁の海難救助関係者も常時聞いている。航行中の船舶も常時聞いている通常の船舶無線である。 日本では横須賀沖で潜水艦「なだしお」と釣り船の衝突事故が起きた際、互いに交信できる通信手段がなかった反省点として、マリンVHFとして小型船舶にも5ワット以下の国際VHF無線機を搭載することを勧めている。だから東京湾を浮上航行中の海自・潜水艦もこの16チャンネルを傍受している。低出力の5ワットというのは無線の到達範囲が狭く、晴れた日に有視界程度の交信範囲と考えていい。しかし私のヨットの無線機はアメリカのマリン関係の通信販売で購入したのもで、国際的に通常出力の24ワットが出せる無線機だった。交信範囲は50キロ程度だが、大きな船ならアンテナの位置が高いので100キロぐらいは交信できるのではないだろうか。(それ以上は必要ない) 私の国際VHF無線機は値段が4万円(400ドル)程度のもので、高性能のアンテナと合わせても6万円ぐらいだった。 仮に私がヨットで東京湾内を航行中に大きな流木(りゅうぼく)を見つけたとする。すると16チャンネルで「海上保安庁、海上保安庁、応答してください。こちら木更津沖を航行中のヨット・GENKI(私のヨット名)です」と呼びかける。すると無線機で「こちら海上保安庁です。ヨット・GENKIさん、63チャンネルに切り替えてください」と応答してくる。そこで私が「こちらヨット・GENKI 了解です。63チャンネルに切り替えます」と63チャンネルに切り替えて、「こちらGENKIです。流木情報です。木更津沖の7番ブイの北北東2キロに、大きな流木です」と情報を通報することになる。無論、ヨットやボートが浸水や火災でも16チャンネルで緊急救助要請をしてくることもある。(携帯電話では陸地から離れると圏外になる) しかし16チャンネルを聞いていると、東南アジアの国のひどい訛りのある英語や理解不能な母国語で、仲間の貨物船と通話する者の交信が多い。16チャンネルは呼び出し専用だから、他のチャンネルに移ればいいのに16チャンネルで延々とたわいのない雑談(笑い声が混ざる)をする。 6日にアメリカ艦船が接近するイランの高速ボートに、米艦船が無線で問いかけたのは、この国際VHF無線の16チャンネルである。それを聞いた陸上の無線機か、航行中あるいは停泊中の船舶からイタズラで応答することは可能である。よほどのことがない限り、米艦船でも相手無線機の発信地の測定は行わない。それは通信とは別の目的の場合に行うことである。 そのような現実から、アメリカ海軍は「イランの威嚇」と怒っても、振り上げた拳は静かに降ろすしかないのである。その静かに降ろしたのが”落とし所”で、あの無線交信はイタズラの可能性が高いということになるのだ。 ところでこのような妨害無線を、中東では「フィリピンの猿」と呼ぶそうである。(毎日新聞 本日付)。この表現につい笑ってしまったが、確かに無線機から聞こえる迷惑な訛りのある英語やタガログ語のような母国語から、猿の話し声という気持ちもわかるような気がする。しかしそれは一般的な話しで、今回の威嚇(応答)は間違いなく現地の者であるのは確かで、絶妙なタイミングであった。 |
昨年 アフガン 米兵死傷者 最悪に 治安悪化で843人 (毎日 1月14日 朝刊) |
[概要]01年に米国が始めたアフガン戦争で、戦闘行為に伴う1年間の米兵死傷者数が、昨年は843人(うち死者83人)と過去最高を記録した。一方、03年3月開戦のイラク戦争の戦闘における米兵死者も昨年は762人と過去最悪となった。ただしイラクで下半期の死者は234人で、上半期の528人の半分以下に激減している。昨夏の米軍増派などによりイラクの治安回復が進む一方で、アフガンの治安悪化が深刻化したことを示している。 このデータは米国防総省の人材データセンター(DMDC)の月別米兵死傷者数をもとに毎日新聞が独自集計した。過去にアフガンの戦闘で死傷者が最悪だったのは06年の645人(うち死者65人)で、昨年はその数を上回ったことになる。米軍はパキスタンとの国境沿いがアルカイダやタリバンの「温床」になっているとして掃討作戦を続けている。 [コメント]旧勢力タリバンの主力が支配しているアフガン南部は、NATO軍が米軍に代わって掃討作戦を行っている。そのためアフガンでの米軍は死傷者が減少しているはずと誤解していた。米軍が治安作戦にあたるアフガン北東部のパキスタン国境沿いでも戦闘が激しくなっているようである。 そこで気になるのは、米兵がどような戦闘で死傷しているかである。アフガン南部ではイランから持ち込まれた高性能IED(仕掛け爆弾)での被害が拡大しているという。同じようにパキスタン国境沿いでもIEDの被害が増えているのだろうか。あるいは渓谷の狭い回廊に埋められた地雷による被害なのか、山岳地の岩陰から巧妙に狙撃される被害なのか、市場などの市街地をパトロールしている時を狙われた自爆テロなのか、そのあたりの詳細な内容を確認してみたい。すなわちアフガン東北部のパキスタン国境沿いで行われている戦闘の様相である。その分析結果でアルカイダとパキスタン情報部や部族との関係も明らかになるからだ。 すでにアフガン南部のタリバンはイランの革命防衛隊と連携している可能性が指摘されている。かつては互いに敵対していたが、アメリカという共通の敵で連携したというわけである。イラン革命防衛隊はタリバンにイラン領内で麻薬通過を認め、タリバンに高性能IEDを提供しているという情報(証拠)がある。 日本はアフガン東北部とパキスタンの国境沿いに、優秀な情報エージェントを10人ぐらいは送り込む体制は必要だと思う。日本人である必要はないが、信頼できる者であることが絶対条件である。ウソの情報に高いお金を払うのは危険である。 |
構造上欠陥、 胴体部分にヒビ 米F−15戦闘機 最大180機退役へ (産経 1月12日 朝刊) |
[概要]米空軍は主力戦闘機F−15の安全点検で、胴体部分に構造上の欠陥がみつかり、同型機を最大で180機退役させる方向で検討に入った。これは米空軍で保有する同型機の25パーセントに相当する機数で、航空戦力のダウンや、後継のF−22の調達コストをめぐる問題も取りざたされ始めている。 ロサンゼルス・タイムス紙が報じるところでは、昨年11月の空中分解事故(高速旋回中・乗員生存)の安全点検で、大半の同型機は復帰したが、これまでに160機で胴体の骨にあたる部分に金属疲労によるヒビが見つかった。さらに20機に厳密な点検を進める必要があるという。 F−15の運用にかかわるコーレー米空軍大将はCNNテレビに対して、平均25年を超える機体に構造上の問題が明らかになったとして、「同型機の一部は現役復帰が難しい」と語った。 F−15は冷戦下の1970年代半ばに米空軍で配備が始まった。2025年までには一部を除き、F−22と置き換える計画だったが、今回の問題で退役が早まる可能性がでてきた。 ただ、F−22は1機あたりの調達価格がF−15の約4倍で、高額のF−22を前倒しで配備すると、国防予算の分配計画そのものを見直さざるを得ず、他の部門がしわ寄せを受けることになる。さらに退役する180機すべてをF−22に代えるには2011年末までかかるという。 [コメント]米空軍は本気で古いF−15の180機を退役させ、すべてとは言わないまでも、かなりの機数をF−22に代える気であると読んだ。そこで一気にロシアと中国に戦闘機の世代交代を迫って戦力差を引き離す考えのようだ。米空軍のF−22主力戦闘機転換では、最もダメージを受けるのはロシアの第4世代戦闘機(Su−27シリーズ,Mig−29)である。またロシアから第4世代戦闘機を調達した中国も第2の被害者である。ロシア、中国の空軍関係者にはF−22の転換が深刻な挫折感を与えることになる。 この記事で最も驚いたのは、退役さす180機のF−15を、すべてF−22に代えるのに2011年までしかかからないという時間である。すでにF−22の生産ラインが整い、フル稼働すれば短期間に集中して大量に製造でき、F−22の最大の問題である生産コストを極限まで下げることが可能になる。 第4世代の戦闘機任務は米海軍のF−18スーパーホーネットや、米空軍の新型であるF−15Eに担わせ、F−15の古い機体を退役させても支障は起きない。対テロ戦争では第4世代の最新戦闘機に対する需用は低下している。それよりもF−22の生産コストを下げて、一気呵成(いっきかせい)にF−15をF−22に転換した方が、軍事政策で効果的と判断したためだ。 そうか、その手があったのか。そんなことを思わせる今回の米空軍・世代交代戦略である。アメリカ空軍の大胆な戦闘機転換政策に驚くと共に、日本が戦闘ヘリのAH−64アパッチ・ロングボウをチビチビと発注し、今年は1機240億円と生産コストが上昇した防衛利権体質が虚しく悲しくなる。 米空軍の中でも古いタイプのF−15の機体に金属疲労が見つかったことは、技術的に回復困難と言うことではないと思う。しかしそのようなチャンスを最大限に生かし、一気にF−15をF−22に転換させるという口実にすることはできる。これはアメリカの国防政策の中で、新兵器調達の方法を研究するいいテーマになると思った。 ※昨夜は地元の図書館から借りてきた「トム・クランシーの海兵隊」(上・下) 東洋書林刊のうちの上を読んだ。この本の内容はトム・クランシーのメモ帳のようなものだが、結構面白い。いっしょに図書館から「トム・クランシーの空母」(上・下) 東洋書林刊も借りた。その本のためか、F−15の25パーセントをを一気に退役させ、F−22に転換させる米空軍の意図が理解できた。 |
衆院再可決へ 新テロ法 きょう成立 2月給油開始 (毎日 1月11日 朝刊) |
[概要]インド洋における海自の給油活動を再開するための新テロ対策特措法案は10日、参院外交防衛委員会で、民主、共産、社民3党の反対多数で否決された。民主党が提出した対案も自民、公明、共産、社民4党の反対多数で否決された。 新テロ法案は11日午後の参院本会議でも否決されるが、与党は同日午後の衆院本会議で3分の2以上の多数で再可決し成立させる。石破防衛相は同日中に活動再開の準備を指示し、2月中旬の給油活動再開を目指す。 福田首相は同法案が1年間の時限立法のため、政府が制定を検討している自衛隊海外派遣の恒久法について、自民党の山本太一氏への答弁で「将来的に大事だ。今後、与党で協議し、民主党と協議する機会があれば進めたい」と語った。 来週の閣議では基本方針や派遣部隊の規模・構成・期間などを定めた実施計画を決定。具体的な実施区域や緊急時の対応などを盛り込んだ実施要項を定め、石破防衛相が首相の承認を得た上で海自部隊に派遣命令を出す。 海自は今月中に輸送艦1隻と護衛艦1隻をインド洋に向かわせ、3週間で活動海域に到着し、3ヶ月半ぶりに給油活動を再開する。米海軍第5艦隊司令部(バーレーン)にも改めて連絡官2名を派遣する。 一方、外務省はインド洋でテロ阻止作戦の海上阻止活動に参加する米英仏など6カ国と交換公文を締結し、イラク戦争への給油転用疑惑を踏まえ、転用防止を明記する。 ※海自は旧テロ特措法で、01年11月〜07年10月末までの6年間に、米、仏、パキスタンなど11カ国の艦船に計49ン万キロリットルの燃料を無償で提供している。 [コメント]このホームページで「守屋前防衛事務次官を国会に呼んで燃料給油疑惑を証人喚問で問い正せ」と書いた。(What New 07年10月10日)。その直後に産経新聞と朝日新聞(10月19日付け)の朝刊1面トップで、守屋容疑者と宮崎元専務のゴルフ接待(自衛隊員倫理規定違反)を報じた。それからの展開は皆さんご存じの通りである。 ゴルフ接待の報道は山田洋行側からリークされたとものと推測できるが、私は当初、これは守屋容疑者の国会尋問を潰すための策略かと疑った。結果は、先日の参院外交防衛委員会で「日米平和 文化交流会」の秋山直紀理事の参考人招致で、防衛利権の疑惑は政治家に拡大しつつあると実感した。 ところが新テロ特措法案の国会審議は守屋問題で十分審議されたとは言い難い。さらに民主党の対案提出の遅れから、民主党案も十分に審議されていない。しかし海自の艦船はインド洋に向かって出港していく。 民主党の代表である小沢氏が、「インド洋での給油は憲法違反」と指摘し、世論調査では海自のインド洋再派遣に反対とする者が賛成よりも多数を占めている。 民主党は3月に年金問題で福田首相の問責決議を出して、衆院解散、総選挙実施を行った方が国民の支持が得やすいと、新テロ特措法では再可決に「知らん顔」を決め込んだようだ。どうせインド洋でタダのガソリンスタンドをする程度と認識しているのではないか。 民主党の小沢氏が党首討論で、「兵站こそが戦争で、油がなければ船も飛行機も動かない」といった言葉が虚しくのこった。なんともわかりにくい政治をやっている。日本がどんどんと劣っていくような気がしてならない。 最後の希望だが、もし3月に首相の問責決議で衆院が解散し、総選挙で与野党が逆転したら、直ちに新テロ特措法の廃案決議を行って、インド洋から海自の艦船を撤退させて頂きたい。そして自衛隊の海外派遣の恒久法案を与野党合意で作れるようにして欲しい。理想論すぎると言われても、日本が平和国家で発展させるためにはそれ以外の方法は考えつかない。 |
風俗店で摘発 北京駐在の武官 聴取 中国公安当局に摘発 (読売 1月10日 朝刊) |
[概要]北京の日本大使館に勤務する駐在武官が1月初め、風俗店のマッサージ店に入店したところ、中国公安当局の摘発を受け、事情聴取を受けていたことが9日、明らかになった。 04年5月に在上海総領事館の男性館員が、中国人男性から女性関係を問題視して、機密情報などを強要されたとの遺書を残して自殺した事件が起きている。そのため北京の日本大使館は、身辺に気を付けるようにと、大使館職員らに風俗店への出入りを禁じていた。 この防衛武官は外務省に対し、入店したことは認めたが、「いかがわしい行為は一切していない」と説明している。 [コメント]日本の場合は自衛官を外務省に出向させ、在外日本大使館に「防衛駐在官」として派遣している。階級は1佐クラスで、大使館では制服を着用し、軍関係者(外交団)との交流や軍事情報収集の任務にあたっている。日本の場合はこの記事がいう「武官」という呼称は使わない。 「防衛駐在官(外国は駐在武官)」とは別に、警備対策官として警視庁、防衛省、海上保安庁、公安調査庁から日本大使館に派遣されているものがいるが、あくまで警備官であって武官とは言わない。 この記事に書かれた武官だが、おそらく大使館の防衛駐在官ではなく、防衛省派遣の警備官ではないだろうか。もし防衛駐在官であるなら歴史に残る大バカ野郎である。 本人は「ハニートラップ(女性を使った謀略)」の情報収集を行っていたと言い訳するかも知れないが、防衛駐在官なら北京の日本大使館から1歩外に出れば、中国の公安機関や情報機関の尾行や監視がつくのは常識である。そのことを無視して風俗店に立ち入ることは「ミイラ取りがミイラ」になる以上に危険なことである。 仮に防衛駐在官が中国のエージェントから、中国情報機関が外国人相手の「ハニートラップ」の疑いの高い店の情報を得ても、防衛駐在官自身が情報収集に行くのは情報のABCもわかっていない。まるで飛んで火に入る夏の虫である。 またしても中国の日本大使館員は大恥をかいたことになる。こんなことで自殺してもだれも同情しないし、外務省や日本大使が中国の情報機関を非難することは出来ない。それがこの世界の国際常識だからだ。防衛省はこの程度の情報保全能力しかないものを防衛駐在官として北京に派遣した事実は重い。これではいくら隊員を厳しく監視して情報保全を取り締まっても、イージス艦情報漏洩などの事件を改善できるわけがない。政治家、官僚、高級自衛官など、国防意識が根本のところから腐っている。 |
秋山氏参考人招致 防衛利権 解明空振り 「守秘義務」盾に否定 野党は証人喚問要求 検事20人規模 捜査を継続 (朝日 1月9日 朝刊) |
[概要]8日、社団法人「日米平和、文化交流協会」の秋山直紀理事(58)に対する参院外交防衛委員会での参考人招致は、秋山氏が約2時間半にわたって行われた質問を一つ一つかわし、疑惑解明は空振りに終わった。 秋山氏をよく知る都内の中堅軍事商社幹部は同僚と想定問答まで用意して、テレビで参考人招致を見守った。委員会のやりとりを聞き、「(証言内容は)想定の範囲、新事実は何もなかった」と冷ややかに受け止めた。この幹部は山田洋行が秋山氏に裏金を送ったという指摘(質問)に、「顔色変えず否定を続ける姿にすごみを感じた。しかし、内心は必死では」と秋山氏の心中を推し量ってみせた。 野党は今回の参考人招致を受け、「疑惑は深まった」として、今後、偽証罪が適用される証人喚問を求める方針だ。しかし質問に立った浅野勝人委員(自民)は、「この国会での給油支援特措法の審議が終われば、熱が冷めてしまう面は否めない」と語った。 今国会は15日までで、野党としては18日招集の通常国会に舞台を移し、引き続き防衛利権問題を追求する考え。民主党の山岡賢次国会対策委員長は、「防衛省の疑惑を解明しないと、安全保障政策の信頼性が損なわれる」と述べた。 8日に守屋前事務次官を追起訴した東京地検特捜部は、約20人の検事を投入した捜査態勢で防衛利権の解明を続ける。その一部の検事は前次官の捜査を継続しているが、その他の検事は政治家などが関係した不正行為がないかを調べるため、防衛省関係者らの事情聴取を進めている模様だ。 8日の参考人質疑で秋山氏は多くの疑惑を否定したが、山田洋行が旧陸軍の毒ガス弾処理事業の下請けを受注に絡んで、裏金工作を行ったとされる疑惑は以前として特捜部で捜査の焦点となる。また、秋山氏が日本支社顧問を務める米国法人「アドバック・インターナショナル・コーポレーション」の入金記録に、日米の軍需メーカーなどから少なくとも年間計1億円近いコンサルタント料の送金が記載されているという。そのような不正な資金の有無を確認する捜査が進んでいるとみられる。 [コメント]昨日の参院外交防衛委員会の参考人招致をテレビで見たが、この委員会質疑で秋山氏が疑惑を認めるとか、新しい事実が出てくるとかは期待していなかった。答弁する秋山氏の言葉や表情から東京地検特捜部の追求をかわすことが出来るかという点を見ていた。 昨日の委員会で答弁した疑惑否定の内容はほとんどがウソ(偽証)だと思う。しかし明かな証拠がないとか、誰も証言しないとかで、秋山氏が不起訴に持ち込めるかという点に注目していた。そのためには鋼鉄の堅さよりも、柳のしなやかさがベターである。そのしなやかさを秋山氏の答弁に感じなかった。 秋山氏は検察に落ちるな、というのが私の感想である。守屋容疑者や宮崎元専務(容疑者)の容疑を固めるためには、秋山氏の関与を解明して起訴しなければならない。秋山氏の関与が証明されれば、次は政治家の関与は避けられない。この守屋(宮崎)容疑者、秋山氏、口利き政治家の3者は互いに絡まって防衛利権を食い物にしていたのである。 しばらくは東京地検特捜部の捜査に期待したい。この防衛利権の件ではかなりの者たちが秋山氏の暗躍を半ば公然と承知している。特捜部が秋山氏を取り逃がせば、あの程度(汚職)ことは許されると誤解する者たちである。さらに防衛行政は腐敗していくことになる。ここはきちんと、秋山ごときに日本の防衛を好き勝手にさせた責任を政治家と官僚にとってもらう。 |
ペルシャ湾 ホルムズ海峡 イラン船が 米艦船を威嚇 イラン革命防衛隊の ボート5隻が異常接近 (産経 1月8日 朝刊) |
[概要]AP通信が7日に米国防総省当局者の話しとして、ペルシャ湾のホルムズ海峡の公海上を航行していた米海軍の艦船3隻に対して、イラン革命防衛隊の5隻のボートが接近し威嚇してきた。米艦艇は一時攻撃態勢に入ったと報じた。 現地時間の6日早朝、米海軍の駆逐艦などがホルムズ海峡を航行中に、革命防衛隊のボートが約180メートルの手前まで接近し、無線で「2,3分でお前たちは爆発する」と脅してきた。米艦艇は自衛のために発砲する準備を整えたが、イランのボートが威嚇をやめたため交戦には至らなかった。 米当局者は「私たちが経験した中でも最も深刻な挑発行為だった」と語り、ホワイトハウスは危険な行為を自制するようにイラン政府に求めた。 [コメント]何とも人騒がせなイラン革命防衛隊だが、一般の方でこの革命防衛隊の行動を読める人はかなりの軍事通といえる。これは革命防衛隊の「度胸試し」なのである。陸上自衛隊では度胸のことを「胆力(たんりょく)」というが、レンジャー訓練や空挺訓練などでは胆力錬成が重視されている。 革命防衛隊は新兵に米艦接近訓練を行った。その仕上げにこのような米艦最接近訓練を実施したのだ。もちろん革命防衛隊のボートには米艦を攻撃する意図はまったくない。あくまで訓練兵にリアルな体験をさせて度胸をつけさすのである。 場所は緊張するホルムズ海峡であっても、公海上であればボートが180メートルぐらい米艦に接近しても国際海洋法上は違法でない。またボートから無線で米艦に「お前たちは爆発する」と言っても、ボートが攻撃予告を行ったことにはならない。別の情報では革命防衛隊のボートは白い箱を海中に投棄したいうが、それが本物の機雷である証拠にはならない。むしろコンクリを詰めた白い箱である方が可能性が高い。しかし革命防衛隊の訓練兵には本物の機雷と思わせた可能性はある。要するに米海軍の艦船は革命防衛隊のリアル訓練で仮想敵に活用されたのである。 だから米海軍が革命防衛隊の行為(ボート)に、「驚いた」「怖かった」「危険を感じた」などと反応すれば、それを聞いた革命防衛隊員は拍手喝采することになる。ならば米艦船はどう対応するか。例えば無線でボートに「接近するな、撃沈する」と警告するか、ボートの直前の海面に機銃弾を警告射撃すれば済むことである。もしボートが本物の自爆テロならば、無線で米艦に警告など行わない。ただし自衛隊では海外派遣のROE(交戦規定)で”警告射撃”を禁じられている。※ この仕上げの度胸試し訓練は軍隊ではよく行われる訓練である。中国の原潜(漢級)が日本の南西諸島で日本領海を侵犯した事件も、あれは中国原潜の”度胸試し訓練”の一環で、原潜が単独でグアム一周航海を行った訓練だと私は推測している。しかし途中で日本の対潜部隊に追跡されるし、日本領海を侵犯するなど大ドジの連発で、中国海軍は世界から恥をかいた訓練になってしまった。中国海軍は日本に領海侵犯を謝罪し、この潜水艦艦長を処分している。 北朝鮮の工作員は最後の度胸試し訓練では、韓国や日本に潜入し、米軍基地の正門前で記念写真を撮って帰るという。昔の話しになるが、自衛隊の情報課程の訓練では、仕上げの度胸試し訓練で方面総監部で総監の電話に盗聴器を仕掛けたことがあった。これは栗栖弘臣元統幕議長が方面総監時代の話しである。 さらに追加すれば、北朝鮮の工作員(訓練中)には一人一人に生きた政治犯1名が与えられ、ナイフで生首を切り落とし、度胸をつける訓練が実施されている。映画だけの話しではないのだ。 ※ 例外は沖縄上空でロシア軍機に空自のF−4ファンム機が警告射撃したことと、能登半島沖の不審船不追跡時(海上警備行動発令中)に威嚇発砲し、P3Cから不審船の近くに小型爆弾(爆雷 爆発深度ゼロメートル)を投下したことがある。 |
首相問責決議 今国会提出 見送り 民主党 新テロ法案再可決でも (毎日 1月7日 朝刊) |
[概要]民主党は6日、政府・与党が新テロ対策特措法案を衆院で再可決した場合でも、福田首相の問責決議案の参院提出を見送る方針を固めた。年金記録漏れ問題や予算関連法案の攻防が本格化する3月下旬の予算成立前後に政府を追い詰めるほうが得策と判断した。特に3月末に「政府公約」の期限を迎える年金記録漏れ問題の争点化を狙っている。 新テロ特措法案の再可決の場合では争点がぼやけ、有権者へのアピール力に欠けるとみている。また支持率が低下した福田首相は参院で問責決議案が可決されても、衆院解散・総選挙に踏み込まず、居座る構えをみせていることを考慮した。 審議中の新テロ特措法案は、10日に参院外交防衛委員会で、11日に参院本会議でともに否決され、衆院本会議で再可決する日程が有効だ。ただ民主党の興石参院議員会長は6日、「選択肢は否決だけでない」と述べ、参院で採決しない可能性も示唆した。この場合、与党は12日に「見なし否決」の規定により、衆院で再可決する方針だが、「参院の意志」が確定しないことで衆参の食い違いが目立たなくなり、民主党の問責決議案提出が留保しやすくなる。 [コメント]今朝のNHKニュースによれば、民主党は参院で与党の新テロ特措法案の否決を行ったり、裁決をしないのではなく、民主党の代替え案とともに新テロ特措法案を継続審議に提案する可能性を報じていた。与野党の法案をまとめて継続審議にすることで、衆参の食い違いを目立たなくして、問責決議案の提出を保留する作戦の様である。 しかしそれでも与党の衆院の再可決は行われることになる。結局、海自が再びインド洋に給油のために派遣される。民主党は党利党略でそれでいいと思うだろうが、国民には民主党代表の小沢氏が「インド洋での給油は憲法違反」とまで言い切ったのに、再び海自をインド洋に派遣することに何ら対応を示さない民主党に失望する。また政治を国民にはわからないようにしているようにみえてくる。 ところで共同通信が4日に加盟各社に配信したニュースによれば、「日本政府が新テロ特措法案をめぐって、日本がインド洋で給油する艦船は、対テロ活動に参加する艦船に限るという文書を盛り込むことをアメリカに求めたところ、アメリカは断固拒否した」という。アメリカ政府当局者は、「アメリカ軍の活動が制約を受けることは絶対に受け入れらない」と明確に拒否したという。インド洋やペルシャ湾にいる艦船からは、日替わりでアフガンやイラク、それにソマリアに攻撃機や特殊部隊などが出撃している。それを日本政府のご都合主義的な理由で、給油艦船はアフガン攻撃だけに限るように、アメリカ政府に取り決め文書を求めたと聞いてあきれた。日本政府(主として外務省)がその程度の軍事知識だから、アメリカから日本は同盟国としての信頼を失うことになる。海自の輸送艦がインド洋でアフガン作戦(対テロ)に従事している艦船だけに給油しているという国会答弁ほど馬鹿馬鹿しい詭弁はない。 話しは変わるが、私はアメリカ大統領選ではオバマ候補に期待している。外交や安全保障の経験はなくとも若々しい考えと実行力に期待ができる。同じようにアメリカの有権者もクリントン候補のベテラン振りよりも、オバマ候補の新鮮さに魅力を感じて次期大統領に選ばれることに期待すると思う。日本の野党にもオバマ候補の新鮮さを見習って欲しい。 |
イラクで苦戦 アルカイダ 各地で連携強化か 宣伝工作を活発化 (朝日 12月29日 朝刊) |
[概要]「ムシャラフ政権はもうすぐ終わりだ。ブットの帰国やムシャラフの非常事態宣言など一連の動きは、米国がこれまでの失敗を取り繕うために仕組んだものだ」。アルカイダのナンバー2、ザワヒリ容疑者は今月16日のビデオ声明でパキスタン情勢を分析、「米国の戦略は失敗した」と断定して、イスラム教徒に聖戦(ジハード)への参加を訴えた。 パキスタンでは今年に入って40件以上の自爆テロが発生、800人以上が犠牲になっているが、これはイラクで横行する自爆テロをパキスタンの過激派が取り入れた可能性が指摘されている。アフガンとパキスタンの国境地帯に潜伏するアルカイダ幹部らが、パキスタンの過激派との連携に務めているとの見方もある。 パキスタンでのアルカイダの「影」の広がりは、アルカイダが対欧米の主戦場と位置づけるイラク戦線のじり貧傾向の裏返し見られる。イラクでは昨年、米軍がイラク・アルカイダ最高幹部のザルカウィ容疑者を殺害し、アルカイダに同情的だったイラク・スンニ派部族長を反アルカイダ組織に結成し、米軍と共闘させてアルカイダを追いこんだ。 イラクで苦戦するアルカイダ側は宣伝工作を活発化、16日のザワヒリ容疑者のビデオ声明でも、イラク、アフガン、チェチェン、アルジェリア、ソマリアなどイスラム教徒に「聖戦」参加を促した。アルジェリアでは反政府闘争の過激派がアルカイダと呼称を変更して首相府や国連施設を狙ったテロを起こした。リビアでも11月に過激派がアルカイダに忠誠を表明した。このようにアルカイダ・国際ネットワークは広がりを見せている。 [コメント]来年のアメリカ大統領選で民主党候補者の一人であるオバマ候補はイラク戦争開戦時に反対を表明した候補者である。また大統領選で独走していたヒラリー・クリントン候補を激しく追い上げていることでも知られている。そのオバマ候補が次期大統領に選ばれれば、米軍の主戦場をイラクからアフガンとパキスタン国境に移し、アルカイダ幹部と潜伏拠点を壊滅させると表明している。むろんパキスタン政府が米軍のアフガンからの越境攻撃を禁止しても、攻撃を強行することも合わせて表明した。 米軍の無人偵察機、各種の地上設置の警戒センサー、宇宙からの衛星監視、高々度から戦術偵察機などを多用すれば、険しい山岳地帯であっても人、車、動物の潜伏や移動を探知できる。そこにピンポイントで精密誘導兵器を撃ち込むことができる。 あらかじめ広範囲にの山岳地帯で人の立ち入りを禁止すれば、一般人への誤爆を防ぐことも可能になる。むろんその付近一帯は米軍が包囲網を築き、危険区域からの脱出を防ぐことは可能だ。ときには特殊部隊を特殊作戦ヘリなど送り込み、監視や偵察を行い、攻撃や洞窟の爆破なども作戦可能だ。 それが米軍に出来ないのは、イラクでの治安回復に失敗して、これ以上戦線を拡大することができないからだ。またムジャラフ大統領がアルカイダと反政府過激派と結び着くことを警戒して、アフガンのアメリカ軍の越境作戦に反対だったと考えられる。しかし今はアルカイダはパキスタンの反政府過激派と組んだことが確認されれば、アルカイダ攻撃を躊躇っては自分の政治基盤が危うくなる。 ということから、来年のパキスタン情勢はブット暗殺での国内情勢の悪化とともに、さらに危うい政治状況になると思う。 |
世界の目 北朝鮮にアメと ムチで臨め 南成旭・韓国高麗大教授 (李明博次期大統領ブレーン) (毎日12月28日 朝刊) |
[概要]2月に発足する李明博韓国次期政権の北朝鮮政策は、@北朝鮮に核を廃棄させる。A支援を相互主義原則に転換する。B大統領選の公約「非核・開放・3000構想」を具体的に実現させるーーことだ。 3000構想とは北朝鮮に対して経済特区新設など5分野の大規模な包括的支援を通じ、10年間で北朝鮮の国民所得(1人)を現在の約6倍にあたる3000ドルにする行動計画だ。あくまで北朝鮮の核廃棄決断が前提になる。李明博新政権は現在の盧武鉉大統領が行った一方的対北支援は行わない。また拉致問題や韓国軍捕虜問題なども南北当局者協議で主要議題に取り上げるだろう。 北朝鮮の核廃棄のプロセスは、盧武鉉政権のように6カ国協議任せにしないで、6カ国協議に強調はするが、南北当局者協議の課題から外すことはない。盧政権のように北朝鮮にアメだけを与えないで、李政権ではアメとムチの両方で関与していく。 盧政権は10月の南北首脳会談で南北経済協力事業を無理に合意したが、李政権ではその妥当性、財政的裏付けを検証する。そのまま実行される事業は1割程度しかならないだろう李政権は6各国協議や米中協議の進展を注視しながら、盧政権と違って国民負担のかかる経済協力の口約束をしない。したがってこれから半年は北朝鮮との葛藤も起こり得る。南北関係の緊張をどう管理するかが重要なポイントだ。 [コメント]パキスタンでは昨日ブット元首相が暗殺された。暗殺者は車に乗って窓を開けて手を振るブット元首相の頭部に銃弾2発を浴びせ、体に付けた爆弾を爆発させて自殺(自爆)した。暗殺前の集会で演説する光景をテレビニュースで見たが、明らかに過激派から狙われているのにづいぶん甘い警備体制だと感じた。ムジャラフ大統領が暗殺を命じていなくとも、あのような甘い警備体制では暗殺を誘導した疑いが残る。とりあえずパキスタンの1月8日の総選挙は延期される可能性が高い。 それから韓国の李明博次期大統領の政策だが、注目の対北朝鮮関連の骨子が出始めてきた。やはり盧武鉉政権の北朝鮮・過保護政策は韓国民にも不支持が高まったようである。北朝鮮の金正日体制にとって盧武鉉政権は”打ちでの小槌”みたいなものであった。「何でも欲しいものを上げるから、暴れないでね」という過保護の親である。そんな子育てでは健全な子どもは育たない。核兵器という危ない火遊びで出火し、ご近所が大きな火災を被ることになることもある。そんなときはライターを取り上げて、お尻を一発叩くぐらいの躾は必要だ。 私は李明博政権に期待している。盧武鉉政権には失望していたが、これから李明博大統領でかなりの軌道修正が可能と思う。韓国に対する北朝鮮の圧力には、日本やアメリカも連携して対応することになる。無論、中国やロシアも韓国が北朝鮮に筋を通せば支持することは間違いない。 |
ロシア軍 新型核ミサイル 実験成功 米MD網突破へ着々 (産経 12月27日 朝刊) |
[概要]ロシア軍は米国が推進するミサイル防衛(MD)システムをかいくぐり、敵国への攻撃を可能にする新型大陸間弾道ミサイルの発射実験を行い成功したと発表した。 ロシア軍は25日、ロシア北方、バレンツ海海中を潜航中の原潜「トゥーラ」から潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「(通称)シネワ(青)」を発射し、極東カムチャッカ半島にある標的に命中させた。「シネワ」は旧型SLBMのSSM54を基に作られた新型で、最終段階で弾頭が分離し、巡航ミサイルになるため現在のMDシステムでは対応できない。もうひとつの新型戦略核ミサイルは、戦略ロケット軍が北西部のプレセツク基地から発射した多弾頭型大陸間弾道ミサイルで(MIRV)RS24。午後4時過ぎに発射されたミサイルは、数分後に7000キロ離れたカムチャッカ半島の目標に着弾した。 ロシア軍のバルエフスキー参謀総長は15日、ロシアのミサイル報復システムは米MDのミサイル発射を「攻撃」と誤認し、報復に動く可能性があると警告し、改めて米MDの欧州配備を牽制した。ロシア軍の国防費は石油価格の高騰を受けてここ数年は20〜30パーセント増大し、ロシアが対抗意識を燃やす欧米との軍拡競争は避けられない方向に進み出した。 [コメント]ロシア軍は冷戦時代のようにすべての軍事面で軍拡競争を挑んでいるのではない。あくまでアメリカに頭部に突きつけた銃口である戦略核戦力の近代化に力点を置いている。すなわちロシアはいつでもアメリカを核攻撃で壊滅できる戦力を維持して、欧米に対して一流国としての待遇を求めている。 これに対してアメリカは、ソ連邦崩壊後も微動たりともしなかったロシアの核戦力を無能化することを進めている。これがアメリカが東欧(チェコとポーランド)で進めているMD配備の動きなのである。 アメリカがいう欧州のMD配備は、イランの弾道ミサイルから欧米を防衛するためというのはウソで、本当は将来、東欧(チェコ)に地上発射のレーザー攻撃システムを配備し、ロシアからアメリカに向かって打ち上げられるICBMを上昇中に破壊するためである。すなわちロシア軍のICBMを無力化させるためである。まだ地上発射式のレーザー兵器は完成していないが、すでに技術面では完成間近の段階に達している。そのことでロシアはアメリカの東欧MD配備に猛烈に反対している。 また新型の潜水艦発射核ミサイル(SLBM)は、アラスカなどの米軍基地に配備されるMDシステムに対抗するもので、弾道軌道を終末段階で変化させることで迎撃を不可能にさせている。 まさにこの点に限って、米露は激しく戦略核ミサイルとミサイル防衛(MD)で駆け引きを行っている。ロシアは核戦力を無力化されれば一流国の待遇を受けられないことを知っている。またアメリカはこれからもロシアからの核攻撃の恐怖に怯えたくないのである。 |
英紙報道 タリバンと極秘会談 英情報機関MI6 (読売 12月27日 朝刊) |
[概要]26日付け英紙デイリー・テレグラフは、情報機関筋の話しとして、英対外情報部(MI6)がアフガンで、タリバンの指導者らと和平を目指す極秘会談を行ったと報じた。会談は今年夏から、南部ヘルマンド州都ラシュカルガ郊外で6回ほど行われた。この会談にはアフガン政府関係者も同席した。 英政府は、同紙の報道にコメントを拒んでいる。ブラウン首相は、今月の下院で「(敵である)タリバン指導者らと交渉はしない」との英国の立場を改めて説明している。 [コメント]もしブラウン首相の言うようにタリバン指導者と一切交渉しないなら、デイリー・テレグラフ紙の取材に対して「英政府は交渉していない」といえば済む問題である。なのにコメントを拒んだことは、暗に交渉を認めたと受け取れる。それも6回も継続して行われたなら、それなりの成果が出たものと推測できる。MI6のように影で動く英情報機関なら、タリバン指導部と秘密交渉を行うのは当然の任務である。 英政府ではブレア前首相からブラウン新首相に政権が交代したので、何か大きな変化が起こると思っていたが、今回の報道はその大きな変化に匹敵するだろう。 交渉内容を推測すれば、まずタリバンはアルカイダと絶縁することを約束する。テロ攻勢を強めるイスラム原理主義過激派を押さえる。またアフガン南部のタリバン支配を認める代わりにアフガン政府にタリバン代表者を送り、アフガン政府との対立関係を解消するなどと思われる。 そこで最も気になるのは、アフガン南部で栽培されているケシ(麻薬の原料)を認めるかどうかと、イランの革命防衛隊との関係断絶を認めるかである。ケシの栽培はタリバンの資金源で、イランの革命防衛隊は武器・弾薬の供給源であるからだ。 ことしの夏から6回も会談が行われたといういうことから、それなりの成果があったと思う。今回の秘密交渉でアフガン情勢が根本的に変化する可能性は極めて高い。 |
イージス艦情報漏洩 3佐ら4人 書類送検 流出ルート解明、捜査終結 (産経 12月26日 朝刊) |
[概要]海上自衛隊第一護衛護衛隊群の2曹(33)がイージス艦の中枢情報を持ち出していた事件で、神奈川県警と海自警務隊は25日、特別防衛秘密(特防秘)を漏らしたとして、日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反容疑で、海自第1術科学校の元主任教官で海自訓練指導隊群司令部の3佐(43)ら4人を書類送検し、捜査を終結した。 県警は、イージスシステムに関する情報を扱っていた3等海佐の松内純隆容疑者(34)=同容疑で逮捕=から、特防秘入りデータが3佐に渡り、元同僚教官の1尉を経て、学生隊員や護衛艦の乗組員らに拡散した流出ルートをほぼ解明した。 [コメント]この事件はすでに各メディアが報じているので新しい内容はない。しかしイージス情報漏洩事件の発端となった中国人妻を持つ海自2曹が送検されていないのを不思議がる人が多いようだ。 なぜ自宅のパソコンにイージス情報を持っていた2曹は処罰(送検)されないのか。確かこの事件を報じた初期の段階では、新聞は中国人妻がスパイであるが如く報じ、メディアの中には中国情報機関の「ハニートラップ事件」と指摘したものもあった。私のところに取材に来た週刊誌記者に、これは中国の情報機関が関与した事件ではなく、あくまで海自の情報保全がいい加減で起きた漏洩事件と説明した。しかし発売された週刊誌を読むと、私が中国情報機関のハニートラップを認めた内容になっていた。 その後、週刊文集がこの中国人妻と2曹の記事を掲載したが、この記事が最も正確で、この情報漏洩問題の焦点を突いていた。 そこでこの事件を整理すると、自衛隊の秘密というのは各法律によって厳密に指定される。まず秘密は防衛大臣、事務次官、各幕僚長など資格を持った者が”極秘”、”機密”、”秘”などの秘密指定を行う。秘密指定を行う項目も範囲を決められている。秘密情報はこうして金庫に入れられ、カギをかけて保管される。そしてこの金庫を開いたり、中の情報を読めるものには”資格”が与えられる。 その資格のある者が、”職務上知り得た秘密”を漏らせば罰せられる。それ以外の者の漏洩では罰することが出来ないのである。もちろん秘密情報が詰まった金庫を壊したり、無理やり開けたり、開けることをそそのかしても罪になる。 中国人妻を持つ2曹はイージス情報に接する資格はなかった。またイージス情報が秘密かどうかの認識もできない。いつの間にか自分のパソコンにイージス情報があったにすぎない。そこで県警と警務隊はその流出元をたどって、イージス情報の入った金庫を開けて情報を取りだした人物と動機を糾明した。それからイージス情報が秘密であることを知りながら、コピーして拡散させた者たちを送検したのである。 そこで一部の新聞や週刊誌の記者にお願いする。今までに自衛隊で秘密情報漏洩事件が起きると、安っぽいスパイ小説のようなストーリーで記事が書かれる。あるいは不慣れな警察がそのような見込みでマスコミ発表するのかもしれない。そのような混乱を避けるために、これから防衛上の秘密情報というものをもう一度勉強して欲しい。自衛隊は秘密指定された情報以外を秘密として扱うことはできない。また職務上秘密を知る立場のない者が、知らぬ間に情報を漏らしても漏洩罪には問われないのだ。 インド洋の海自・補給艦が、ペルシャ湾のどの港で、いつ、どの会社から”給油の燃料”を購入し、その量と代金という契約実績情報は秘密指定を受けていない。石破防衛相「相手があることなので、どこまで情報を公開できるか、相手とすりあわせる必要がある」という答弁は全くの間違い。防衛相の気分の問題で秘密を盾に答弁を拒むことはできない。 |
安全保障会議 「官邸機能の強化は必要」 日本版NSC 正式断念 「内閣情報分析官」を新設 政府の情報収集・ 分析力強化 (読売 12月25日 朝刊) |
[概要]政府は24日の安全保障会議で、首相官邸の外交・安全保障政策に関する機能強化を目的とした国家安全保障会議(日本版NSC)創設の断念を正式に決定した。安全保障会議設置法改正案などの関連法案は廃案とする。 福田首相は会議で、「今の政治状況では法案を審議する状況ではなく、成立する見込みも極めて乏しい」と述べ、「しかし、官邸機能強化は必要で、官房長官、外相、防衛相が一層緊密に協議し、国家安全保障会議で求められた機能を果たして欲しい」と指示した。 日本版NSCは安倍前首相が今年4月に関連法案を閣議決定し、国会に提出したが、一度も審議されていなかった。町村官房長官は会議後の記者会見で、日本版NSCの創設断念について、「安倍前首相を含め、関係者の了解を得ている」と説明した。 政府は日本版NSCの創設断念を受けて、来年度からインテリジェンス(情報)機能を強化するため、北朝鮮や国際テロなどの情報分析を行う「内閣情報分析官」を内閣官房に新設するほか、情報保全の徹底を図る「カウンターインテリジェンス・センター」を設置することにした。 新設される内閣情報分析官は内閣情報調査室(内調)に5人程度配置し、「朝鮮半島」「中国などアジア地域」「国際テロ」「大量破壊兵器」などの分野を担当する。人から入手する情報や、衛星による画像情報など、政府全体の情報を集約して分析し、首相官邸に報告する「情報評価書」の原案を作成する。 担当する人材は内調や防衛省、外務省、警察庁、公安調査庁の審議官・課長級職員のほか、民間の有識者も対象にする。 [コメント]またしても政府の情報機能強化の「お砂場遊び」が始まった。今までに何度同じような話しを聞いただろうか。もう毎度のことで馬鹿馬鹿しくてコメントする気もなくなった。政府の情報機関である外務、防衛、警察、公安調査庁の省庁の垣根を取り払い、内閣官房がすべての情報を吸い上げて一元的に管理するという構想である。そのための日本版NSCだったし、また福田内閣の「内閣情報分析官」の新設なのである。 なぜだめかというと、まず日本には情報を収集できる機能がないし人もいない。衛星情報も自前(国産)の衛星を運用しているが、外国から購入する衛星写真と衛星情報のほうがはるかに高精度である。国産の偵察衛星は「衛星利権」のための衛星打ち上げだった。また人からの情報(ヒューミント)といっても、外交官(防衛駐在官を含む)が話しを聞いた程度か、現地の新聞を読んだ程度の話し(情報)である。専門的なスパイ(情報工作員)など日本にはいない。そこで頼みの電波情報傍受も相手が無線の使用を控えるとその傍受できなくなる。日本は世界的な通信傍受を行っているエシュロン(米NSA)の一端を担っているにすぎないのだ。 だから、関連する各省庁にさえ重要な情報が入っていない。各省庁は情報が入っていないことがバレレば予算がこないから情報を出さない。 審議官や課長級の情報分析官といっても、その能力をどの程度と理解しているのか。はっきりいってその能力を期待する方が間違っている。現在、話題になっているミサイル防衛(MD)の壮大な矛盾点さえ指摘できない程度の官僚たちである。国防利権の前では口を開くことさえ封じている連中である。 さらに致命的にダメなのが政治家の無知である。小池前防衛相が安倍前首相の安全保障担当補佐官になったとき、アメリカに出かけ、米大統領主席補佐官(安全保障担当)に「私があなたのカウンターパートナーです」ですと言った時には背筋が凍った。子猫のタマとライオンの区別がついていないからだ。またある元防衛官僚が最近のブログで書いていたが、現在の額賀財務相が初めて防衛長官になったとき、その防衛官僚が「中期防衛力整備(中期防)」の現況について額賀長官に説明に行くと、「ところで中期防って何」と聞いたと書いている。また石破防衛相は先日のUFO発言の時、「ゴジラには災害派遣で自衛隊が対応」と述べたが、災害派遣では武器の使用は出来ない。ゴジラに戦車砲を撃つことも、戦闘機が機銃掃射やロケット弾を発射することもできない。自衛隊が治安出動で出た場合でも、武器の使用は警察官職務執行法の範囲しか武器の使用権限はない。まさに自衛隊にとって「いろはのい」の常識なのである。 ちなみに中曽根元首相が初めて防衛長官になったときについたあだ名がトイレットペーパー長官なのである。由来は防衛庁長官になって初めて北海道の部隊に視察に出かけ、隊員との懇親会で話した時、「私にやって欲しいことを言ってくれ」と問うと、隊員が「部隊のトイレットペーパーは隊員がお金を出しあって買っています。公費で買うことが出来ませんか」と言うと、それからトイレットペーパーは官費で購入できるようになったからである。中曽根防衛長官もその程度のことしか自衛隊のためにならなかったとい皮肉も込められている。 そのような政治家が政府の情報機能の強化というと、「各省庁の垣根を越えて、情報を官邸で一元化して、専門官が運用・分析し、緊急時などの政策に生かす」という官僚用語でお茶を濁すのである。 |
タイ総選挙 現政権に厳しい審判 タクシン派 第1党 PPP 連立協議を開始 勢力拮抗 難しい運営 有権者、根強い政治不信 (朝日 10月24日 朝刊) |
[概要]軍政から民政移管を目指すタイの総選挙(定数480)は23日、投開票された。昨年9月のクーデターで追放されたタクシン前首相派が主力の「国民の力党」(PPP)が半数近い議席を獲得して圧勝。他党との連立協議を始めた。 PPPのサマック党首は23日夜、「クーデターで自由を失った国民の勝利だ。私が首相になる」と勝利宣言をした。同党首は他党党首2名と連立協議を始めたことを明らかにし、政権を取った場合は前政権与党タイ愛国党幹部111人の公民権停止処分を解除すると表明した。 タクシン前首相はPPP中心の政権が出来れば2月に帰国すると表明している。前首相が帰国すれば汚職防止法違反容疑で起訴されているため、直ちに収監されるとみられるが、PPPや支持者と、クーデターを主導した軍・反タクシン勢力との間で緊張が一気に高まりそうだ。 「(もしタクシン首相の帰国が)実現すれば、軍部などと対立して再び政治的混乱を招き、景況の悪化は避けられない」(邦銀関係者)とみられる。国民はさらなるクーデターの懸念や政治家への不信感が強く、選挙後も政党間の対立で政局が混乱する可能性を心配する声がある。 [コメント]タイの農村部に行くと農業以外に産業が見あたらず、その農業も根本の部分で貧しさから抜け出せないことが理解できる。バンコクに安い賃金で働きに出ているのは、その貧しい農村からきた出稼ぎの人たちである。だからタクシン前首相がその貧しい農村地域をばらまきで優遇すれば、すぐに選挙結果に反映させることができた。これがタクシン前首相が01年から5年間もの長期間にわたり、強いリーダーシップで民政が維持できた背景である。 これを都市部に人からみると、タクシン前首相は主要な産業から得た賄賂で、農村で票を買い、政権基盤を強化する悪徳政治家になってくる。同時にタイの古い社会構造を改革する政治家にも見える。そこでタイの国王と軍部はクーデターによってタイの社会構造の変化を防いだのだ。 同じことは日本でもかつてはよく見られた光景である。日本の自民党政治を支えたのは地方の農民や漁民たちの時代であった。しかし今の日本ではその貧しかった農民や漁民が自民党を支えなくなった。日本の社会構造全体が都市型に変化したからである。 今さらそのような日本の社会変化を正座していう気はない。しかし正座して言いたいことは、先進国ではクーデターは政治の方法としては通用しないということである。クーデターの持つ政治性が先進国の政治構造に不適格なのである。 それならクーデターの可能な国とはどのような国か。まず国民全体の生活が貧しく、政治の恩恵を受けることが少ないこと。政治や経済活動が一部の少数派に占められ、容易に政権交代が奪いやすいこと。軍のクーデターを支持する大国のバックアップがあることなどが上げられる。というように考えれば、もはやタイや韓国のように進歩した国ではクーデターは政治方法として不適なのである。 もし2月にタクシン前首相がタイに帰国して、再びPPP政権を倒すようなクーデターが発生すれば、さらにタイは政治的な大混乱が発生し、そのことが東南アジア全域で経済発展の足を引っ張ることになる。不幸にもタイにはクーデターを社会科学的に研究し、警鐘を鳴らす政治学者がいないようだ。あるいは王族や軍部に押さえられて自由な批判を封じられている可能性がある。 |
米情報機関 中国に傍受内容 筒抜け 翻訳委託先がダミー会社 (産経 12月23日 朝刊) |
[概要]米紙ワシントン・タイムス紙は21日、ハワイで中国の通信を傍受していた米国家安全保障局(NSA)の施設が、中国の情報機関が作ったダミー会社に翻訳業務を委託した結果、機密である監視対象や傍受内容が中国に筒抜けになったと報じた。 情報が盗まれたのはホノルル近郊のクニアにあるNSAのアジア向け通信傍受施設。傍受記録の英訳をハワイの翻訳会社に委託したが、この会社が中国最大の情報機関である”国家安全省”が作ったダミー会社であることが発覚した。この会社名や情報漏れの期間は報じていないが、米海軍犯罪捜査局(NCIS)の対スパイ捜査から判明した。数百万件もの傍受記録がこの会社に渡り、監視対象や米側の情報源まで中国に把握された。また米側を混乱さすために「偽情報」を流す中国側の工作を手助けしたことになった。中国は業務委託の接点を通じて、NSA内部の軍人・軍属に対して、スパイ獲得工作を図った。 米国国防局(DIA)の日系元工作員のマイケル・タンジ氏は、ブログで「(問題になった翻訳は)10年前ならいずれも軍人か政府の文民職員がやった仕事ばかりだ」として、とりわけ翻訳の業務委託からの情報漏えいの懸念を訴えている。 [コメント]日本ではイージス艦の「特防秘」情報流出で大騒ぎになったが、アメリカのNSAは傍受したア中国情報の翻訳を中国の情報機関に委託して大騒ぎになる。いずれも秘密情報の管理(保全)が難しくなってきている証だろう。どうやらNSAは大量の盗聴情報をコンピューター翻訳で処理しているというのは「偽情報」らしい。 それにしてもアメリカの防諜機関も情けない。極秘に入手した秘密情報を一時的にも預けるのに、翻訳会社の厳格な身元確認をしなかったのか。 しかし”人の振り見て我がふり直せ”という言葉がある。日本でも中国軍関連の秘密情報が中国に漏れている可能性が高い。公安調査庁の高官が北朝鮮がらみの詐欺で逮捕される時代である。孫子を生んだ国の手練にわが国は対抗できるだろうか。 ※ 本日(23日)と明日(24日)は連休を利用して我が家の大掃除です。今回の大掃除では書斎のレーアウトを大きく変えて、仕事が出来やすいように広い空間を作ろうと思っています。そのため書斎の本箱2個を解体して、古い雑誌や書籍を処分します。冷戦が終わって4回目の大焚書ですが、本箱から冷戦時代の書籍がほとんど姿を消しました。ちょっと淋しい気もしますが、新しい時代の情報を入れるためには仕方ないと諦めています。 |
ISAF本体参加 政府 警察活動の補完 アフガン派遣 「合憲」解釈 自衛隊参加、 現時点は慎重 (読売 12月22日 朝刊) |
[概要]政府がアフガンに展開する国際治安支援部隊(ISAF)本体への自衛隊参加に関し、憲法上、可能との見解をまとめていたことが、21日、明らかになった。 これまでの閣僚らの国会答弁では、自衛隊のISAF参加は憲法が禁じる武力行使にあたるとしてきた。今後、政府はアフガンで武器使用を伴う参加が認められる事例があるとした。今後はアフガン本土の「非戦闘地域」の認定が、自衛隊参加の条件となるが、将来のISAF本体の参加には可能性を残した。現時点での参加は憲法の問題が解消しても、アフガンの治安状況を見極めて慎重に判断する。 政府は国、または国に準ずる組織と交戦が行われている場所を「戦闘地域」として、そこに自衛隊を派遣することは違憲だとの立場をとっている。今回、政府はアフガンのISAFの治安活動について、@アフガン政権の同意を得た、警察行為を補完するもので、国際法上の「武力行使」ではない。A「武力行使」でない国際活動で、任務遂行のために武器使用が想定される場合でも、国または国に準じる組織との交戦が行われていない「非戦闘地域」が認定できれば、その地域には自衛隊が参加できる。ーーーとの見解をまとめた。 ただ反政府活動を行っているタリバンは、過去にアフガンで政権を掌握しており、タリバンを「国に準ずる組織」と見なすかで、非戦闘地域の設定が異なってくる。この点に関する政府内の見解は一致していないため、今後の検討改題になっている。 ISAF本体への自衛隊参加は、民主党の小沢代表が10月上旬に提唱したが、その際、町村官房長官、高村外相、石破防衛相らは相次いで、憲法違反との見解を示した。その後、政府内では、こうした答弁が国会内で定着すると、将来、国際平和協力活動を拡大する道が閉ざされるとして、外務省、内閣官房、内閣法制局で対応を協議していた。 [コメント]自衛隊を海外に派遣する目的が、一義的には「武力行使」の任務ではなく、現地政府の警察行為を補完するものと認定されれば、武器使用を含む任務についても対応できる新判断を示した。 タリバンをどのように位置づけるかという問題は評価や解釈の問題で、政治的な決断すれば簡単にクリアできる問題だろう。また政府が求める「非戦闘地域」の認定も、イラクのサマワに陸自を派遣したことから、「現に戦闘が行われておらず、戦闘が行われる兆候が見られない」という主観論で、派遣地を決めることが可能になっている。要するに、この程度の政府見解では、いつでも、どこにでも、政府は自衛隊を紛争地に投入できるフリーハンドを得ることになる。 またしても防衛省は守屋問題などでゴタゴタしている内に、外務省の自衛隊活用路線に乗せられようとしてしている。この様な自衛隊活用法はまさに外務官僚の発想である。軍事を知らないし、紛争や戦争の知識がない外務官僚が、将棋やチェスのように自衛隊を”駒”として動かす様に思える。 それにしても町村官房長官、高村外相、石破防衛省が、自衛隊のISAF参加は憲法違反と国会で繰り返してきたことが、舌の根の乾かぬうちに合憲と言わせる。政治家の公約や国会証言は何なのかと考えてしまう。 はやりこの見解は詭弁ある。この新解釈に自衛隊が従うなら、自衛隊はタリバンと緊張が高まっている地域にも派遣することが可能になる。しかし自衛隊員は武器使用を制限され、戦時法がないままに戦闘に巻き込まれる。この様なインチキな政府見解ではなく、今の与党と交代してできた新しい政権が、自衛隊の国際貢献のあるべき姿を描いて欲しいと思う。 |
新テロ法案 民主党、 今日にも対案 参院提出へ 世論踏まえ判断 (毎日 12月21日 朝刊) |
[概要]民主党は政府の新テロ対策特別措置法案について、対案を21日にも参院に提出する方針を決めた。国会会期が来月15日まで再延長されたが、世論調査(毎日新聞)では給油活動を「中止すべき」が「再開すべき」を上回るなど世論動向を踏まえて判断にした。 20日夜、小沢代表、鳩山幹事長ら幹部が党本部で会談し、小沢氏が「国民から見ても我が党が何を考えているか示した方がいい」と提出を指示した。来月の1月9日には党首討論も行われる予定で、年金記録問題で内閣支持率が急落してことから、首相を追いこむ「攻め」の姿勢を強調すべきと方針転換を決めた。党内ではこれまで、今国会に対案を提出することに消極的な意見が大半だった。 対案では、医療支援や食糧輸送支援などの民生支援が中心。自衛隊を復興支援に限定して派遣し、活動地域は停戦合意が成立している地域などに限定する。この対案では、自衛隊の派遣を「停戦合意」を前提にするなど、その実効性に冠して党内から疑問の声が出ていた。それでも提出に踏み切ったのは、各種世論調査から給油活動再開に対する支持が低下し、民生支援を中心とする民主党案に一定の理解が得られると考えたため。また対案には、小沢氏がこだわる「アフガンの国際治安支援部隊(ISAF)の設立を承認した国連決議に基づく」と原理原則を盛り込んだ。同法案を1年間の時限立法としながら、自衛隊海外派遣に関する恒久法整備の必要性も明記した。 [コメント]福田内閣の支持率が急落している。安倍内閣末期の水準(31パーセント)まで落ちたという数字が出た。(朝日新聞 12月21日 朝刊) 福田内閣の年金問題取り組みを「評価しない」が72パーセントで「評価する」の17パーセントを大きく上回った。同時にインド洋での給油活動再開にも「中止すべきが」が「再開すべき」を上回ったのは確実で、世論は給油再開の中止を求めている。 しかし安倍前首相、小池前防衛相、福田首相が相次いでブッシュ大統領や米政府首脳に面談し、「給油活動再開」を公式に約束をしたことから、1月下旬の衆院の再採決で採択されることは間違いない。これが”大河の流れ”なのである。もう誰も大河を止めることも流れを変えることができない。 福田首相が総選挙で与党が敗北することを恐れ、解散・総選挙を避けることもできないのである。これで小泉元首相は見事に自民党をぶち壊したことになる。前回の総選挙で誕生した小泉チュルドレンは小泉首相が自民党に送り込んだ刺客に過ぎなかった。 ところで民主党の対案だが、私はこれでいいと思う。1年間の時限立法ということで、魂を込めたことで良しと感じた。細かいことを言えば何とでも言える。しかし国際貢献を本来任務に格上げした自衛隊にとって、今までの自民党の様な無秩序な自衛隊派遣は絶対に避けるべきであった。 どうやらNATOとしては自衛隊にISAFの空輸部門を期待しているようである。空自の固定翼機(C−130輸送機)ではなく陸自のCH−47輸送ヘリなどで、復興支援物資の空輸活動である。無論、戦闘地域でのヘリボーン作戦は行わない。自衛隊は陸自部隊以外に海自や空自の多用途ヘリを統合して運用することもできる。近い将来、アフガンの治安が回復すれば、橋や道路の復興は民間業者が請け負うことも可能になる。まずは自衛隊のヘリ部隊をアフガンに派遣して、何ができ、どれだけ出来るか、現地調査をするのもよいと思う。 これなら民主党の対案でもアフガン再建に日本が自衛隊を使って貢献が出来る。出来ることなら、アフガンに派遣する自衛隊の輸送ヘリや車両は、機体に迷彩色を使わず、目立つ白色で塗色し、機体(車体)に日の丸を鮮やかに描くことをお勧めする。日本の国旗であると同時に国際的な平和目的の復興支援活動のシンボルマークに育ててみるのもいい。 |
※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。