飲食店が使う食材に、できるだけ多くの国内産農林水産物、中でも地場産を優先的に利用し、店頭にはその証しである「緑提灯」を掲げようという運動が熱を帯びてきた。国産食材の利用率がカロリーベースで5割を超すことがまず前提だ。緑提灯の店はまだ全国で100程度だが、店の利用者も一体となり、地産地消を足元から実践する試みとして積極的に推進したい。
安全を象徴する「緑」の提灯を掲げる運動は、3年前に札幌で始まり、南下するように全国に広がった。今月には熊本にも緑提灯の店が誕生した。大衆向け居酒屋から農産物直売所が併設する食堂、大都市の高級飲食店まで、店の種類は多種多様だ。同様に店の考え方もさまざまだが、地場産を優先的に使い、その地域で取れない食材や珍しい食材などは国産で調達する方針はほぼ共通している。
運動の特徴は2つある。まず、飲食店の自主的な取り組みであり、公的機関がその店の国産利用率を認定して提灯を掲げるわけではない。店側の自己申告で提灯をつるし、国産利用率を示す星を記す。最高で「5つ星」(国産利用率90%以上)の星の数も決める「逆ミシュラン」(運動提唱者の丸山清明さん)だ。
もう1つは、緑提灯を後押しする利用者でつくる「応援隊」の活動と切り離せないことだ。店に緑提灯の掲示を勧めるなど、積極的に利用する隊員は全国で200人ほど誕生している。緑提灯運動は、店と隊員が相互理解のきずなで結ばれ、さらに他の利用者も共鳴しなければ定着も拡大もしない運動なのだ。
「緑提灯の運動は、どうすれば広がるか」と、身構える必要はないだろう。どうせ食べるなら、地元産や国産を優先したいという思いがあれば、すぐにでも運動の推進者になれる。隊員“規約”のように、緑提灯を仕事帰りなどに見かけて一杯やりたければ、迷わず入ればいい。店が責任を持ち、地場産など新鮮で安全、安心な食材を使った料理でもてなしてくれる。運動が気に入れば、地場産にこだわる、ほかの店主に緑提灯の存在を伝えればいい。
農業研究者である丸山さんの運動提唱の起点も、単純な疑問からだった。仕事で札幌に赴任し、思ったという。なぜ、スーパーのサケはチリ産ばかりなのか。なぜ、飲食店の名物ジンキスカンの羊は道産でなく、ラーメンの小麦も外国産なのか。「地元の名物料理、伝統料理には地元の食材が合うだろうに」と不満に思い、さっそく出た行動が緑提灯運動だった。
安全で安心できる農産物供給に取り組む農家やJAも、運動を底支えしよう。農業関係者こそ、応援隊にふさわしい。例えば、農産物直売所なら、飲食店の要望に応えて計画的な食材供給ができる。地産地消を、地域の消費者が身近に実感する場と考え、できることから取り組みたい。