ここから本文エリア 佐久総合病院に患者集中 周辺の医師不足で2008年01月19日
東信地区の基幹病院、佐久市のJA長野厚生連佐久総合病院(夏川周介院長)が、患者の集中に悲鳴をあげている。ベッドは満床状態が続き、救急患者の受け入れにも支障が出ている。このため、開業医や周辺病院に入院患者や急患の受け入れを求めるが、こちらも医師不足が深刻だ。これから患者が増える厳冬期を迎える。夏川院長は「これ以上は患者を無条件に受け入れられない状況にあり、『たらい回し』が起こりかねない」と危機感を抱く。 17日夜から18日朝にかけて、佐久総合病院には7人の急患が入院した。17日夜に確保しておいた8床のベッドで、かろうじて対応できた。 ただ、18日朝の時点で入院患者は634人。国から認められた一般病床624床を10オーバーしている。17日は12超の636人。「厳密に言えば医師法違反です」と夏川院長は隠さない。 一般的にベッドの稼働率は95%以下が望ましいとされる。これを超えると、病棟は混雑状態となり、急患の入院にも対応が難しい。しかし同病院では昨年12月、95%を超えた満床状態の日(午前0時時点)が15あり、100%を超えた日も5あった。 4階の小児科病棟。廊下に子供用ベッドが出されていた。病室に大人用を入れ、ベッド不足に対応するためだ。「子供がいる病室に、大人の患者が交じって入院する。担当外の小児科の看護師が担当するわけで、望ましいことではないのですが……」と男性医師。 院内には重篤患者に対応する救急救命センターもあり、20床のベッドがある。ドクターヘリが常駐し、東信だけでなく、県内一円の急患対応も迫られるため「常に5床は空けておきたい」(看護師長)が、17日夕、空きベッドは二つだった。 こうしたベッド不足の影響で、普通であれば経過観察するため入院させるような急患を治療後、自宅に帰すこともある。 15日夜から16日朝にかけて、そんな急患が8人いたという。「仮に自宅に帰し、容体が急変しても即応できない。場合によっては医師の責任も問われかねないわけで、現場にも相当なストレスがたまっているのです」。地域ケア科の北沢彰浩医師が打ち明ける。 佐久総合病院に患者が集中しているのは、他の病院の勤務医不足が影響している。小諸市の同じ厚生連の病院では夜間、麻酔科医が不在となり、「盲腸の手術もできない」。上小地域も状況は似ており、夜間の急患はいきおい佐久総合病院に搬送される。このため、昨年12月中に救急車で運ばれてきた患者は312人で、一昨年12月(259人)の2割増だった。 医師数が約200人と比較的態勢に恵まれている佐久総合病院はこれまで、農村医療を切り開いた若月俊一名誉総長の遺志を継いで「来た患者は断らない」病院とされ、スタッフたちにも「ここが最後の砦(とりで)」との自負がある。しかし、夏川院長は「現場は限界。『救急難民』は佐久も無縁じゃないということを、住民にも知っていただきたい」と話している。 マイタウン長野
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