高梁市中心部には、明治から昭和初期にかけての“ハイカラ”な建物が少なくない。一八八九年に完成した岡山県内最古の教会堂・高梁キリスト教会や、郷土資料館(旧高梁尋常高等小学校)などがその代表だ。
「近代化遺産」と称されるこれらの建物は、わが国が猛スピードで西洋化を進めた時代に、和風建築の大工が見よう見まねで西洋建築を模したものが多い。同教会や資料館は左右対称の造り、二階建て車寄せなど、意匠は端正。地元産の良質木材をふんだんに使い、堅牢(けんろう)そのものという。
こうした身近な街の財産に光を当てようと、昨年八月から小西伸彦・吉備国際大准教授の寄稿「備北の近代化遺産」を高梁・新見圏版で連載している。既に十四回を数えるが、建物に限らず、鉄道関連施設など、毎回新鮮な発見がある。紹介された建物や橋を眺め、ほんの数代前の人々の息遣いを感じるのもひそかな楽しみだ。
高梁では商工会議所や市青年経済協議会が近年、キリスト教会でのクリスマスコンサート開催や地図作りなど、さまざまな近代化遺産の活用策を進めている。身近な文化財の価値を広めるためには、継続的な実施が必要だろう。
山あいの小都市でも、大工たちが専門の枠を超えて建築の腕を競った時代。コスト削減のために「偽装」に走る現代とは、仕事に対する気概が違ったのだろうか。百年たっても凛(りん)とした姿を保つ建物は、われわれが忘れてはならないものを教えてくれているような気がする。
(高梁支局・神辺英明)