自民党と民主党の党大会が相次いで開かれた。両党とも次期衆院選を一大政治決戦の場と位置付け結束強化を訴えたが、衆参で与野党の勢力が異なる「ねじれ国会」の中で、さまざまな政治課題をどう解決していくか。互いに真価が問われよう。
自民党大会は、運動方針で参院第一党の座を民主党に奪われた現状を「立党以来の最大の危機」とし、次期衆院選に向けた強靱(きょうじん)な態勢構築を図ることを打ち出した。
福田康夫首相(党総裁)は、年金問題や食品偽装など生活の安心、安全が揺らいだことを踏まえ「安心して生活できる社会保障やいろいろな制度を確立する」と国民本位の政治を実行する決意を表明した。目先の人気取りにならず、長期的視点で説得力のある施策を出せるかどうかが課題となる。
民主党大会は活動方針に地方での支持拡大とともに、都市部対策の強化を掲げた。小沢一郎代表は「何が何でも衆院選で勝利し、政治課題の実現に政治生命を懸ける」と衆院選必勝を期した。大勝した昨夏の参院選と同様、退路を断ってみせることで引き締めを図ったのだろう。
小沢代表の意気込みは理解できるが、行動は分かりにくい。自民党との大連立騒動や臨時国会の重要テーマだった新テロ対策特別措置法案の再議決採決を棄権したことに党内外の批判は強く、求心力の低下が懸念される。
十八日から始まる通常国会では、道路特定財源である揮発油税などの暫定税率をどうするかが大きな争点の一つになる。三月末で期限切れとなるからだ。
自民党は道路整備などに必要として十年間の延長を目指す。民主党は暫定税率の廃止を唱え、「高騰するガソリンが一リットル当たり約二十五円安くなる」と生活重視の姿勢をアピールする。与党が暫定税率延長の関連法案を衆院で再議決すれば、解散に追い込むと気合を込める。
国民生活に直結する重要なテーマである。自民党には再議決も辞さない空気が強い。福田首相は税率維持に向け民主党に話し合いを呼び掛けるが、小沢代表は協議に応じないとする。
最初から結論ありきでは政治不信は強まる一方だろう。持続可能な社会保障制度の整備や格差是正策など議論すべき課題は山積する。政局に偏重せず正面から政策を競い合い、問題点を浮き彫りにした上でより良い内容にする努力が欠かせまい。臨時国会では不十分だった。通常国会では新しい答えの出し方を確立する強い意思が求められる。
東京市場で株価が低迷している。十七日こそ日経平均株価が五日ぶりに反発したが、十六日は前日の米国市場の大幅安や外国為替市場で円が一時一ドル=一〇五円台後半まで急伸したことなどを嫌気し前日比四六八円安の一万三五〇〇円余で終えている。
半年間で四四〇〇円も下げており、二〇〇五年十月以来となる二年二カ月ぶりの安値水準にある。急落の過程は外需主導の日本経済のもろさをあらためて浮き彫りにしたといってもよい。
世界金融市場混乱の震源地である米国の信用力の低い個人向け住宅ローン(サブプライムローン)問題はいまだに解決の糸口が見えない。シティグループなど米金融機関の評価損は底無し沼の様相を呈している。失業率が上昇、個人消費が伸び悩むなど実体経済も悪化してきた。
米政府、金融当局による公的資金の投入、金利引き下げなどの景気対策が待たれる。その米国より日本株の方が落ち込みが大きい。日本は「いざなぎ景気」を超え戦後最長にあるが、好況をけん引したのは外需だ。米国経済の変調は日本企業の収益基盤をより揺るがすとの理由からだ。
円高進行も輸出企業の〇九年三月決算を直撃しそうだ。日本株を支えてきた数少ない好材料である堅調な企業業績が崩れれば株価下落の可能性は高まる。食品やガソリンなどの値上げラッシュも消費者の財布のひもを固くしている。こうした景気減速懸念に「ねじれ国会」による政治混乱が追い打ちをかけ日本経済が大混乱に陥るとの三月危機説が市場でささやかれている。政府・与党は内需主導型の経済対策を打ち出し、企業も賃上げや正規社員の雇用を拡大すべきだ。
(2008年1月18日掲載)