北朝鮮が放つ最悪の攻撃は天然痘ウィルスによるテロだとも囁かれてきた。その危険性は殆ど論じられていないが、政府はすでに対策をまとめていたことが判かった。金正日が仕掛けるバイオハザードを検証する。 【極秘文書にあった天然痘攻撃】 元共同通信記者の青山繁晴は何度となく、TV番組で北朝鮮による天然痘ウィルス散布テロの危険性を語っていた。可能性としては限りなくゼロに近いものだと考えていたが、今週の『週刊文春』巻頭記事には12年前に政府が北朝鮮による天然痘ウィルス攻撃を想定し、対策を進めていたことが明らかにされている。 明かされた秘話は1994年に遡る… 第一次北朝鮮核危機のさなか、武力行使も辞さない米国の強い決意を知った石原信雄官房副長官(当時)は、関係省庁の幹部を呼び、経済制裁が実行された場合に北朝鮮がどう出るのか、又、日本にはいかなる対策が必要かリポートの作成を命じる。 そして「内閣安全保障室」が10数枚の極秘文書(草案)を完成させる。(『週刊文春』10月26日号) その中に、北朝鮮によるテロ攻撃の最終項目として「生物化学兵器攻撃 天然痘ウィルスの人口密集地での暴露」が掲げられている。 最も恐るべき事態として、天然痘ウィルスの散布が想定されているようだ。 その根拠は何なのか? 【米政府の断定…北の高官自供】 2002年11月、米のワシントンポスト紙は「米情報当局が北朝鮮、イラク、ロシア、フランスの4カ国が密かに天然痘ウィルスを保有しているしていると断定し、懸念を強めている」と報じた。 この情報はイラク開戦前、米国がイラクへの圧力を強めていた時期に意図的に漏らされたもので、眼目は北朝鮮ではなく、イラク非難にあった。 また同記事では、米政府当局者が北朝鮮について「天然痘ウィルスを持っているという確固たる証拠がある」と言明していることも伝えている。 確固たる証拠とは何か? WP紙の記事が出る1ヵ月前に、米国のケリー国務次官補が大統領特使として平壌を訪問する。高濃縮ウランの開発が明かされた最後の米朝高官協議だ。 そこで北朝鮮側の姜錫柱第一外務次官がケリーにこう言い放ったのだと言う。 「バイオも持っている。核以外にも何だってある」 ズバリ、生物兵器を指している。 姜の発言は対面の1ヵ月後、11月半ばになって、日本の各紙で報じられたものだ。前述のセリフは産經新聞のもので、日経はこう報じている。 「核開発だけではない。生物兵器も保有している」 より直接的な表現だ。 当時の防衛白書(2002年度版)は、北朝鮮の大量破壊兵器について、明確に表記している。 「化学兵器については既に相当量の化学剤を保有し、生物兵器でも一定の生産基盤を有している」 生物兵器には、炭疽菌やボツリヌス菌なども含まれ、天然痘だけが問題視されているのはない。早計に、北朝鮮が天然痘ウィルスを保有していると断定は出来ない。 だが… 【ソ連のウィルスが北に流れた?】 天然痘は1977年にソマリアで最後の患者が確認された後、発生することなく、WHOは80年に撲滅宣言を出している。 天然痘ウィルスは人間だけに感染する為、ブタや鳥類などが保菌せず、撲滅の宣言が容易だったという。 米露はワクチン製造のためとして、今もウィルスを確保している。当然のことだろう。ワクチンはウィルスの核を死滅させて細胞の外皮のみを残して作られる。 しかし、冷戦時代にソ連は大量の天然痘ウィルスを兵器向けに培養していた。90年には80トンから100トンのウィルス製造ラインを整備し、より強力なウィルスの開発にも手を染めていたという。 この辺りの事情は櫻井よしこさんのリポートに詳しい。日本ルネッサンス『バイオテロに勝つ大人の知恵』 http://blog.yoshiko-sakurai.jp/archives/2002/03/post_250.html ソ連崩壊で6万人程度いた科学者が国の手当を受けられなくなり、何人かが北朝鮮に渡ったと見られている。もちろん、売り物の天然痘ウィルスを携えてだ。 これによって金正日は狂気の兵器を手に入れた。 失職した技術者が、不要になったウィルスを高額で買ってくれる組織が現れたら、それに飛びつくのは想像に難くない。 【恐るべきウィルス散布テロ】 生物・化学兵器の不拡散を意図した国際条約は、あくまでも兵器としての使用を防ぐものだ。かつてBC兵器はミサイルの弾頭に核物質の代わりに搭載することが懸念されていた。 いわゆる「貧者の核爆弾」だ。 北朝鮮が我が国に向けている200基のノドン。その弾頭部に天然痘ウィルスを積むことは容易だ。 しかし、人類の努力で撲滅に至ったウィルスを明確な証拠が残る形で使用することは、反日・反米どころではなく、全人類に対する挑戦となってしまう。 むしろ、証拠が判らない方法で散布することが想定されるのではないか。 簡単だ。 自決覚悟の北朝鮮テロリストが日本国内の人口密集地でウィルスの詰まった容器をそっと開封するだけで、天然痘ウィルスがバラ蒔かれることになる。 天然痘は、インフルエンザと同じ飛沫・接触感染だが、冬期に密集地でウィルスを散布すれば、一気に拡散する。 最初の患者が確認された瞬間に、日本はパニック状態となるだろう。 天然痘の潜伏期間は10日以上。 その特徴は初期症状が重篤な風邪に似ているうえ、子供に多い水疱と最初の段階では近似している。医師もまた、通常は天然痘の抗体反応をチェックしない。 その為に、散布から数日しなければ、確認できない恐れもあるのだ。そして、その時には既に広がりは深刻なレベルに達している。 【バイオテロ訓練は誰を想定】 毎日新聞は9月15日付で奇妙な記事を配信した。 昨年の10月に杉並区で行われた天然痘テロ訓練(図上訓練)を検証したものだった。 ワクチン数が足りないことを訴える趣旨の特集記事だったが、なぜ、今だったのか? 我が国のワクチン数は米国の3億人分に比べて圧倒的に少なく、全人口をカバーしていない。それは重要な指摘だが、そもそも訓練で想定したテログループとは誰か… 我が国でバイオテロ監視体制が初めて敷かれたのは2002年のワールドカップ開催時だったという。 米国が懸念するのはイスラム過激派によるバイオテロだが、我が国がイスラム系テロ組織の標的となる確率は極めて小さい。 毎日新聞は曖昧にしているが、テログループとは北朝鮮をバックにしたものだろう。違うか? 更に、日本海を越えて侵入した北朝鮮の工作員だけが危険だとは限らない。 最悪のケースを想定して指摘するが、万景峰号で既に持ち込まれている可能性もゼロではない。9・17以前は、持ち込み手荷物の検査は甘く、特に年配の女性に対してはノーチェックだった。 危険なウィルスがどうやって保管、携行できるのか、医学的な知識はないが、巨大な専用機器を必要とするものでも、探知犬が嗅ぎ分けられる類いのものでもないだろう。 金正日体制と心中する覚悟を決めている少数の者がこの列島には存在している。 それは、ひと握りの朝鮮総連幹部だ。 〆 |
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