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■「“命の現場”で何が起きている!?」 2008/01/15 放送

大阪の救急医療が今、危機的な状況に陥っています。

1月2日には、交通事故にあった男性が救命救急センター5か所に受け入れを断られ、死亡しました。

命を救う「最後のとりで」となるはずの救命救急センターがなぜ、受け入れできなかったのでしょうか?

救急医療現場のある当直医に密着取材しました。




大阪・守口市にある「最後のとりで」の1つ、「関西医科大学高度救命救急センター」。

日曜日(1月13日)の朝、急患が運び込まれた。

<救急隊員>
「開放骨折。2次救急病院では対応困難なので…」

この日の当直・津田雅庸医師(34)がやってきた。

階段から落ちて手首の骨を折った女性。

<津田雅庸医師>
「息を大きく吸っていただいていいですか?」

命にかかわるケガではないが、専門医がいないなどの理由で21の病院に断られ、ここに搬送されてきた。

<津田雅庸医師>
「頭を打っているので、1日だけ様子をみます」


センターの休日の当直医師は2人、翌朝9時までの24時間勤務が始まった。


この年末年始、救急搬送の遅れが大きな社会問題となった。

<富田林市消防本部>
「非常に残念に思うのは、救急隊が一生懸命やりながら結果的にこうなったこと」

12月25日未明、おう吐など体調不良を訴えていた89歳の女性が、府内の30病院に受け入れを断られ、死亡。

<舛添要一・厚生労働大臣>
「地域のネットワークが十分機能していない。最終的にはお医者さんの不足。総合的な対策が必要」

1月2日夜、東大阪市で交通事故にあった男性が、府内の5つの救命救急センターに受け入れられず、死亡。

<大東市消防本部>
「今回のように、何か所もの救命センターから断られるとか連絡がつかないとかいうのは、あり得ないことです」


関西医科大学救命救急センター。

1月2日、救急隊から連絡を受けた当直の医師は、急変した患者の心肺蘇生(そせい)中で、電話に出ることができなかった。

<救急医学科・中谷壽男教授>
「救命センターへの依頼はかなり増えてきています。2次病院が患者をとってくれない」

救急医療体制は1次から3次に分けられ、入院や手術が必要なら2次救急の病院、心肺停止など命にかかわる重症なら救命救急センターのある3次救急に搬送される。

大阪府には国が指定する3次救急の病院が10か所あるが、最近は、本来2次救急に搬送される患者が3次救急に運ばれるケースが急増し、パンク寸前という。

<津田雅庸医師>
「わかりました。こちらで診させていただきますので」

骨折患者の治療を終えた津田医師。

休む間もなく、今度は、交通事故の患者が搬送されてきた。

<津田雅庸医師>
「(患者を診察しながら)痛いですね?この、目の奥が骨折してるんです」

患者は軽自動車を運転していて、歩道橋に激突したという。

<津田雅庸医師>
「歩道橋にぶつかっていったんですね?フロントガラスは大破してる?」
<救急隊員>
「はい、そうですね」

<救急隊員>
「2次病院からの転送。眼球からの出血。専門外なので、対応が救命センターになってきますので…」


処置が終わると、もう昼の時間。

<津田雅庸医師>
「(電話に向かって)救命の津田ですけど、出前お願いします〜」

<津田雅庸医師>
「うどんは危険なんですけどね。患者さんが来たら伸びるので…」

出前を頼んだ直後、入院患者の容態が悪くなり、緊急の気管切開手術。

手術が終わるとようやく昼ごはんだが…。

<津田雅庸医師>
「伸びたうどんです」

予想通り、めんは伸びきっていた。

大阪では、3次救急施設の受け入れ患者が、この4年間で1.7倍になった。

医師の負担は増える一方だ。

<救急医学科・中谷壽男教授>
「2次救急病院では、専門外ということで断られるのが多いです。医療過誤がもしあれば、専門外なのにそれをやったと追及される可能性がありますから、“さわらぬ神にたたりなし”と言いますか…」

医師不足に加え、専門外の治療をして裁判に訴えられることを恐れる医師が増えているという。

21の病院に断られ、搬送されてきた女性は…。

<女性患者>
「ずっと搬送先を探してもらって、日曜日やったからね。余計にないのかもわかりませんね。よかったと思います。ここに受け入れてくれるところがあって」


2次救急の病院が手薄になる休日の夜。

<津田雅庸医師>
「静かですね、きょうは。早めに寝て、夜に備えようかと」

午前5時、患者を受け入れることになった。

<津田雅庸医師>
「わかってる情報は、首をつられた患者さんが来るということです。心肺停止の状態です」

懸命の蘇生にもかかわらず、患者は死亡。


1月14日、午前9時。

<津田雅庸医師>
「おはようございます。1月14日、朝の申し送りを行います」

翌日の医師に引き継いで、24時間の当直が終わる。

担当の患者を診察して、昼過ぎに帰るはずだったが…。

<14日当直の平川昭彦医師>
「(電話で)熱傷ですか?灯油をかぶったということですか?」

重症のやけどを負った男性。

命が危ない。

津田医師も手伝うことになった。

そこへ、1本の電話が鳴る。


<平川昭彦医師>
「(電話で)救命センターです。わかりました、来ていただけますか? (津田医師に対して)…津田、まだおれる?」
<津田雅庸医師>
「いますよ」
<平川昭彦医師>
「ほんま?同時でやろか」

今度は、老人ホームで心肺停止で倒れていた女性。

するとまた…。

<平川昭彦医師>
「(電話で)頭の出血ですか?ちょっとね、今、熱傷とCPA(心肺停止)が重なってますので、すいませんけど、ちょっと…どうしても他があかんかったら、また電話してもらえますかね?」

3人目は、もう引き受けられなかった。

心肺停止の患者の懸命の蘇生が続く。

搬送から1時間。

<平川昭彦医師>
「あっ、戻った」
<津田雅庸医師>
「心拍再開」

何とか心拍、血圧は戻ったが、油断はできない。

引き受けられなかった3人目の患者は、他の病院に搬送されたようだ。

<津田雅庸医師>
「助けられる命があれば、みんなでがんばってやりたいと思っているが、容量オーバーであって患者さんに不利益があると判断できれば、申し訳ないけど他施設に頼らざるをえません」

<平川昭彦医師>
「こんなもんなんですね。重なるとき重なったでしょ?3件、バンバンバンて」
<津田雅庸医師>
「それをね、『拒否』とか言われるとつらいんですよ、ぼくらも…」


午後4時、ようやく病院を出る。

救命救急センターの医師たちの仕事は増え続けている。




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