10月から変更された信用保証制度 赤羽一嘉衆院議員(党経産部会長)に聞く 10月1日から信用保証制度が変わり、中小企業経営者からは、これまで通りの融資が受けられるのか不安の声が上がっています。そこで、今回の制度変更のポイントや公明党の取り組みについて、赤羽一嘉・党経済産業部会長(衆院議員)に聞きました。
金融機関が20%の責任共有 貸し渋りを懸念し小口零細企業は対象外 ――信用保証制度とは。 赤羽一嘉・経産部会長 信用保証制度とは、中小零細企業が融資を受ける際、その融資がよりスムーズに実施されるよう、全国の信用保証協会が債務の保証を行う制度です。借り手企業が債務を返済できなくなった場合は、協会が代わって金融機関に返済します。
公明党は、中小零細企業の活力を向上させるには、資金繰りを円滑にし、経営基盤を安定させる必要があるとの観点から、セーフティネット保証の拡充や第三者保証人の廃止など、信用保証制度の拡充を一貫して進めてきました。
――10月から制度の一部が変更されましたが。 赤羽 今回の制度変更は、政府の中小企業政策審議会が2005年6月に取りまとめた「信用補完制度の見直し」に伴うものです。
具体的な変更点としては、新たに信用保証の「責任共有制度」が導入されました。これまでの制度では、協会が債務の100%を保証していましたが、今後は80%の保証とし、残りの20%は貸し手の金融機関が保証する制度です。つまり、これまで融資の保証について全く責任を負うことがなかった金融機関が責任の20%を共有することになります。この制度は、10月1日以降に新規に行われる融資を対象としており、すでに協会の100%保証で行われている融資に変更はありません。
この制度が導入された理由は主に3点あります。 一つは、融資の貸し手である金融機関も責任ある貸し手とし、借り手である中小企業に対する経営支援などに積極的に取り組んでもらうためです。これまでは、金融機関が貸し倒れのリスクを全く負わない現行制度の下、中小企業への経営支援などが、おざなりになっているとの指摘があり、その改善が求められていました。
二つ目は、諸外国においては、保証割合が概ね50―80%程度となっており、国際比較の観点から国内の金融機関にも一定の責任を負ってもらう必要があります。三つ目は、金融機関にも適切な責任を負ってもらうことにより、毎年約1700億円の赤字が続く信用保証制度の持続性を高め、将来にわたって中小企業の資金調達で重要な役割を果たすことを可能にするためです。
公明、資金調達滞れば制度の見直しを要請 ―― 一方で、中小企業への影響が心配されます。
赤羽 中小企業経営者からは、金融機関が貸し倒れを懸念して、中小企業への融資を減らすのでないかといった不安の声をよく耳にします。言うまでもなく、今回の制度変更で中小企業融資が滞る事態は絶対に避けなくてはなりません。
そこで、公明党の働き掛けで、責任共有制度では、小規模企業に対する保証を対象外としました。具体的には、10月から「小口零細企業保証制度」といわれる制度を導入します。これは、従業員20人以下(製造業の場合。卸・小売・サービス業は5人以下)、保証残高が1250万円以下の人を対象とした制度で、協会が100%保証を行います。このほか、突然の災害や、連鎖倒産などに対するセーフティネット保証や創業、再挑戦、再生に関する保証も対象外です。また、協会の保証割合が下がったことにより、その分、借り手が支払う信用保証料が軽減されます。
一方、金融機関に対しては、最初から融資額の8割しか保証しない「部分保証方式」のほか、いったん協会が100%保証した上で、過去の制度利用実績に基づき、20%相当額の負担金を金融機関が支払う「負担金方式」を創設しました。この負担金方式では、貸し倒れが生じても、金融機関の不良債権比率が高まらないなどのメリットがあり、これまで通りの融資ができるよう工夫を凝らしています。
――公明党の対応は。 赤羽 公明党は責任共有制度の導入後も中小企業に対する貸し出し状況を注視する必要があるとして、協会や地方経済産業局に相談窓口の設置を求め、実現の運びとなりました。
これを踏まえ、先月(9月)28日には党経済産業部会として、甘利明経産相に対し、中小零細企業への十分な配慮を求める申し入れを行いました。 ここでは、新設される小口零細企業保証制度などの周知徹底を図る必要性を強調した上で、 (1)従来にない貸し渋りが起きた場合は、全国の協会や地方経済産業局に設置された相談窓口で、きめ細かく対応するよう指導を徹底 (2)貸し渋りの防止へ、金融庁と連携して金融機関への適切な指導を実施 (3)制度実施後の的確なフォローや報告などを行い、制度実施で中小零細企業の資金調達が滞った場合は、速やかに制度の見直しを行うこと――を要請しました。
今後も党として、中小零細企業の意見を聞きながら、制度の円滑な実施に全力を挙げていく決意です。 対象外の保証制度
(1)突発的災害や連鎖倒産などに関するセーフティネット保証 (2)創業、再挑戦、再生支援に対する保証 (3)小口零細企業保証制度 (新設。製造業で従業員20人以下、サービス業などで5人以下の企業で、保証残高が1250万円以下が対象)
※過去の借入金は引き続き、信用保証協会が100%保証 |