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2008年01月18日 生活設計塾クルー

「口を出すが、金は出さない」医療制度改革の実体

――世界有数の「日本の医療保険制度」を守ろう!

 しかし、民間医療保険と公的医療保険とはまったく仕組みが異なります。民間医療保険は「治療のための入院」や「約款所定の手術」といった支払事由を満たしたときに、あらかじめ契約で定めた現金の給付をするもので、支払われる金額には限度があります。つまり、民間医療保険は医療費を保障するものでも、必要な医療を保障するものでもありません。それに対して、国民健康保険などの公的医療保険は、医療費の一部を自己負担することによって必要な治療が受けられる現物給付です。

 日本の公的医療保険制度は、「皆保険制度」「診療報酬点数制」「フリーアクセス」の3本柱で成り立っています。日本に住むすべての人は所得に応じた保険料を払って医療保険制度に加入し、全国どこの病院でも公定価格で治療が受けられます。私たちにとってあたりまえのように思えるこの制度も、実は世界でも有数の優れたものなのです。

 最近、「シッコ」という映画で知られるようになりましたが、米国には4700万人の無保険者が存在し、多くの患者が診療へのアクセスを制限されています。

 英国ではサッチャーが医療費の総枠規制を行った結果、入院・手術が1年以上待たなくてはならない状況になりました。ブレアが医療の公的支出を増大させると宣言して、2000年から改革に着手しましたが、一度崩壊した制度を立て直すのは容易ではなく、いまだに実効は上がっていないようです。

どこまで行く
医療費抑制策

 日本では、このような失敗に学ぶことなく、同じ轍を踏もうとしています。すでに医療崩壊があらゆるところで起きているにもかかわらず、進められている改革は、特定健診制度のように医療と患者を引き離す可能性のあるものであったり、後期高齢者保険制度や診療報酬のオンライン請求義務化のように一部の人に負担を押し付けるものであったり、よりよい医療制度を構築するという理念とは程遠い、「医療費抑制」だけを目的としたもののように思えてなりません。

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執筆者プロフィル

生活設計塾クルー
特定の金融機関に属さない独立系ファイナンシャルプランナー集団。経験に裏打ちされた独自の視点で、一人ひとりの将来設計に応じた資産運用や保障設計のアドバイスを行なう。また、セミナーや執筆活動も幅広く展開。金融・経済、金融商品、社会保険等について中立の立場から情報を発信している。生活設計塾クルーのウェブサイト

この連載について

資産運用から保険、住宅ローン、年金まで、人生設計に必要なお金にまつわる情報をわかりやすく解説。独立系ファイナンシャルプランナーならではの「中立」な立場で語ります。

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