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2008年1月18日

◎金沢港の貨物量拡大 「地元港」の意識広げたい

 金沢港の活性化を目指し、金沢商工会議所、金沢港振興協会の訪中団が大連、上海で直 面した課題は、国際航路を拡充しようにも、それに見合った貨物量が必要になるという当たり前の現実であろう。金沢港を利用する県内の企業は三割にも満たないというデータがあるが、見方を変えれば集荷量が大幅に増える可能性の大きさも示している。

 輸出企業は輸送コストや定期便の運航状況、納期などを総合的に判断し、名古屋や神戸 、大阪など太平洋側の大型港へ陸送しているのが現実だが、今秋の大水深岸壁の暫定供用開始はそうした状況を変える好機と言えるだろう。官民一丸となって「地元港」を使いこなす意識を広げていきたい。

 金沢港では今秋、水深十三メートルに整備される大浜地区の岸壁が十二メートルで暫定 供用され、三万トン級の大型貨物船の入港が可能となる。コマツは昨年、大浜地区で金沢工場を操業し、粟崎地区でも第二工場の建設を決めた。金沢港にとっては開港以来の大きな転換期といえ、この地域の産業競争力を高めるためにも、港湾活性化の好循環を持続、拡大させなければなるまい。

 金沢港が取り扱った昨年一年間のコンテナ数(二〇フィート換算)は前年比15・7% 増の約二万六千七百個を数え、過去最多を更新した。この十年で三倍に増えた計算だが、伏木富山港や新潟港には大きく水をあけられている。気になるのは、県内に生産拠点を持つ企業が輸出の際に金沢港を積み出し港とする割合が直近のデータで26%にとどまっていることだ。伏木富山港は45%程度とされ、地元企業の支持が低いことが弱点といえる。

 それぞれの企業が物流の合理性のみを追求して金沢港に背を向けていれば、こうした状 況を変えることは容易ではない。「できれば金沢港を」という意識を高めるために、県や金沢市、経済界、業界団体が一体となって地元港の利用を促す取り組みを集中的に展開するときであろう。激しさを増す日本海側の港湾競争に遅れをとらないためにも、港湾機能や荷役サービス、地元企業の優遇策を充実させるとともに、港湾活用型企業を集積させ、金沢港の後背地を着実に固めていきたい。

◎「闇サイト」摘発 おとり捜査も必要では

 出会い系サイトの規制を強化する法案が通常国会に提出されるのを機に、捜査当局にぜ ひ検討してほしいのは、インターネット上で犯罪仲間を募集するいわゆる「闇サイト」に対する取り締まりの強化である。現行の法律では、たとえば殺人や窃盗の仲間を勧誘する書き込みをしても摘発されることはなく、事実上野放しになっている。こうした反社会的なサイトを規制するのが難しいなら、「おとり捜査」と呼ばれる捜査手法を活用してはどうか。

 おとり捜査については、四年前の最高裁判決で、「通常の捜査方法のみでは犯罪の摘発 が困難な場合」に限り、「機会があれば犯罪を行う意思があると疑われるものを対象に」行うことは許されるという判断が示された。闇サイトの摘発は、この条件に当てはまると思われる。犯罪行為の誘いにのったふりをして、実行直前に摘発する捜査を定期的に行えば、闇サイトは機能停止に追い込まれるだろう。

 昨年夏、闇サイトで出会った三人の男が名古屋市で女性を拉致し、ハンマーで殴るなど して殺害した事件があった。自殺サイトに絡んだ殺人事件も後を絶たない。こうした犯罪を減らすために、おとり捜査を積極的に使ってほしい。

 出会い系サイトの規制については、サイトの運営を届け出制とし、利用者の年齢確認を 強化する方向という。出会い系サイトで性犯罪などに巻き込まれた被害者の85%は、十八歳未満であり、規制強化は必要だろう。だが、いくら規制を厳しくしても、犯罪抑止には限界がある。おとり捜査の手法は、出会い系サイトの規制でも威力を発揮するはずだ。

 おとり捜査は、捜査員や捜査協力者が「おとり」となり、容疑者とみられる人物に犯罪 を行う機会を与え、犯罪行為を確認して摘発する捜査手法である。麻薬取締法は、麻薬取締官におとり捜査を認めているものの、麻薬以外で、おとり捜査を認める法律の規定はない。

 むろん、国家が犯罪をつくり出し、国民を罪に陥れる危険性も否定できないから、おと り捜査の実施には、石橋をたたく慎重さが求められる。運用規定をきちんと整備したうえで、犯罪抑止に役立てたい。


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