コウノトリで知られる兵庫県豊岡市は、二〇〇四年の台風23号で甚大な被害を受けた。体験から学んだ教訓を語った中貝宗治市長の講演録を読んだ。
市長が強調するのは、自然の脅威は必ずやって来ると危機感を高める重要性だ。油断しないで対策に全力を挙げ、それでも身の危険が迫れば逃げることだ。ところが現実はなかなか逃げない。自治体は、人々を避難させる説得術を研究しておくべきだと説く。
災害列島の日本は台風や地震などに繰り返し襲われた。被災地は復旧や復興に苦しみ、懸命の模索を続けた。体験は共有されず、その地域に埋もれることが多かった。中貝市長は、各自治体に蓄積された事例を幅広く集めることも提言している。
天災が避けられないのなら、いかに被害を少なくするかの減災に知恵を絞ることが重要になる。過去の失敗と効果的だった対策を伝え合っていけば、新たに発生した災害現場で生かされ、大いに役立とう。
「日本災害復興学会」が設立された。法律や行政、医学など多様な分野の専門家らが参加し、災害復興のあり方を研究する。さらに、被災地での知恵をデータベース化してインターネットなどを使って全国で共有することも目指すという。期待したい。
きょう十七日は、阪神大震災から十三年。風化がいわれるが、被災体験を伝えていく取り組みを怠れない。