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誤報だらけの地球温暖化情報 (中)

「豪快な号外」のような「脅かし」は、やめるべきではないか

伊須田 史子(2008-01-17 17:00)
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からのつづき)

 ツバルは近い将来海中に沈んでしまう。私たちは、これまでにこの手の報道を幾度となく目にしてきました。その度に、その小さな島国の人々に同情してきました。そのことが温暖化と結び付けられると、ああそうなのか、そういえば最近は気候がおかしいな、と納得していたかもしれません。

 特に年末年始は地球温暖化情報が花盛りという様相で、どの報道も判をついたように「なんだかおかしいよ! 地球環境」という普通の人の声や普通の人の観察を報じていました。ところが、なぜそういうことが生じているのかという科学的な説明はおざなりにされているのです。

 最近はさらに進んで「10年後東京の気温は1.5度上昇」し「5.4度では海面上昇は5メートル」になり「(地球温暖化が)このまま続くと地球全体から氷がなくなって海面は70メートル上昇」するという、1億円をかけて3000万部刷られたという意見広告まで登場しました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)のデータを大幅に上回るこの「豪快な号外」の内容は、海面上昇に関する記述の点で科学的なものなのでしょうか。

 再度、米国・フェアバンクスのアラスカ大地球物理研究所と国際北極圏研究センター(IARC)の前所長また名誉教授である地球物理学者の赤祖父俊一氏に、メールインタビューをお願いしてみました。

「グリーンランドの氷床は1920―1940年ごろには現在よりもっと溶けたにもかかわらず、当時の海面上昇率にはほとんど影響がなかった」

――では、ツバルがいずれは沈んでしまうといった点については、どう理解すべきなのでしょうか。

 気象庁発表の資料によれば、海面上昇は現在1.7ミリ/年です。つまり10年で1.7センチ、100年で17センチです。この上昇率は1850年ごろ(炭酸ガス量が急速に増加したはるか以前)からほとんど変わらず、現在ではむしろ率は減少しています。

 しかしプラスアルファの要素として、IPCCの報告はグリーンランドや南極の氷床が溶けることを懸念しています。ところが1920年から1945年までの間に現在とよく似た気温上昇が観察された際、グリーンランドの氷床は現在よりもっと溶けたにもかかわらず、当時の海面上昇率にはほとんど影響がなかったことが知られています。

 続く1945年から1975年にかけては、炭酸ガスの排出が急速に増加したにもかかわらず、当時、気温は世界的に下がる傾向にあったのです。この点について、炭酸ガスを地球温暖化の主要な悪玉としているIPSSの報告は満足な説明ができていません。最近の気温変動を、十分には証明できていないにもかかわらず、炭酸ガスによる影響が重大であると断言してしまうのは、非科学的な飛躍です。

 ご存じの方もいるかもしれませんが、その1945年から1975年にかけて世界的な気温の低下が観測されていた時には、もしかしたら次の大氷河期が来るのではないか、その準備をしかじか……、と騒がれていました。今また、同じ表現が繰り返されているように思います。

「脅かしは止めて、「エネルギーを節約しよう」で十分」

――「豪快な号外」配布運動といった地球温暖化を懸念する動きがある一方で、これは地球温暖化の実情を誤り伝えることにならないかという声もあります。どう思われますか?

 要は、地球が火の玉になる、というような脅かしは止めて、「エネルギーを節約しよう」で十分でしょう。

 スーパーコンピューターは、1900年からの温暖化は全部炭酸ガスによるとしてデータが入力された上で、2100年の計算をしています。したがって現在の計算が4度上昇であれば、2100年までの炭酸ガスの効果は、その6分の1の0.7度程度でしょう。

 実は、環境省が監修している「地球温暖化が進んだ世界をあなたは創造できますか?」というページを程度の低い週刊誌のサイトとして(科学者の)友人たちに見せましたが、「それにしても程度が低い」といったので、これは実は環境省のサイトであると伝えたところ、皆びっくりしていました。

――ではまして「豪快な号外」は、お見せにならない方が良さそうですね。よく分かりました。
「それにしても程度が低い」と赤祖父氏とその友人の科学者をして言わしめた、環境省のサイト。であれば、「豪快な号外」は一体どの程度の「意見広告」なのか

  ◇

 ツバルはやがて沈んでしまうのだから海面は確かに上昇しているというところまでは誰も異論がないものの、それを直接グリーンランドの将来の解氷等と結び付けること、気温の上昇と直接結び付けること、まして炭酸ガスの近年の増加とダイレクトに結び付けてしまうことの難しさを、赤祖父氏は指摘しています。

 そうであればまして、「豪快な号外」にあるような「10年後ないしは「近い未来」に東京の気温が1.5度上がる結果として埼玉のすぐ近くまで海岸線が移動する」また「東京の一部は近い将来海中に沈んでしまう」などという「脅かし」をもういい加減にやめるべきなのは明らかです。それは気象庁のデータをさえまったく無視した非科学的な飛躍だからです。

 「豪快な号外」を配布するためのTEAM GOGO!は、約2400万円の借金と配布し残した300万部あまりの「豪快な号外」を残して去年の年末をもってすでに解散しています。私たちは地球温暖化に関するこの全国的な運動により、地球温暖化に関する誤報がこれ以上広まらないことを願っています。

 しかし今年から始まろうとしている炭酸ガスの排出規制については、一体どのように考えるべきなのでしょうか。次回最終回「誤報だらけの地球温暖化情報 (下)」では、特に今回の二酸化炭素排出量の政府間規制とIPSSの報告に関し、赤祖父氏の興味深いコメントをご紹介する予定です。

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