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ギターと奏法



私がマイケル・ヘッジズ(MH)の曲に出会ったのは'80中頃の中学生1年生のこ ろだった。そのころWindhamHillブームが起こり、同時期にギターを弾き始めた私 は自然と耳コピをするようになっていた。

MHに出会う前にWill Ackermanを耳コピしていた私にとっては、チューニングをあ わせるのにはそれほど苦労することはなかったが、なにしろ情報が少ない時代 で右手でネックを押さえて弾いてるということはライナーノーツにちょびっとだけ 書いてある情報から知ったのであった。

その後大学生になり、情報系の学生だったのでWWWの創世記からWebサーフィ ンしてたのですが、その当時から結構MHに関するホームページは存在してい て、よくTAB譜を落としてきては自分で譜面を修正したりして弾いていた。

いまでは便利な時代になって、譜面はいくらでも落ちているし、本人監修の譜 面だって買えてしまう。いい時代になったものである。マイケル・ヘッジズには、 せめてもうちょっと長生きして欲しかった。。。
Words  Tomo Iwasaki

演奏法の特徴
マイケル・ヘッジズ(以下MHと略記)の印象的なチューニングのひとつに 「Eleven Small Roaches」のCGDGBD(6弦→1弦)というのがある。

このチューニングは5弦から1弦がオープンGチューニングとなっており、また6弦 が通常のチューニングでは出せない極低音のCとなっている。
(通常、6弦はEなので全2音下げ)

プレイヤーの私からするとキーがGの曲を5弦〜1弦で弾いて、4度のCにコード チェンジした際に極低音の6弦が使える点が非常に好きで、私の作曲にも使っ ている。それにチューンダウンした5弦Gの音は何ともいえない深さがある。
最近はギターを弾かない人にも有名な押尾コータロー氏の曲にもよく使われて いる。

MHもこのチューニングを気に入っているらしくバリエーションとして「Bensusan」 のCGDGACや「Rickover's Dream」のCGDGBCなど、CGDを多用している。ま た、ハワイアン・スラックキーで同様のチューニングを見かけることがある。

またMHはユニゾンチューニングを多用することでも知られており有名なところで
「Ritual Dance」 DADGCC (6弦→1弦)(1,2弦がユニゾン)
「Ready or Not」 CGDGGG (6弦→1弦)(CGDチューニングと1,2,3弦ユニゾンチュ ーニングの組み合わせ)
「Aerial Boundaries」 CCDGAD (6弦→1弦)(5,6弦がオクターブ)
などという一見すると運指の自由度が減りそうなチューニングを使う。
しかし、これも隣り合った弦の微妙なピッチの違いが生み出すうねりや響きにこ だわった結果、生まれたチューニングであることが推測される。

タッピングに関しては、今では皆がやるようになってしまって目新しいテクニック ではなくなってしまったが、曲の中で効果的に使用しているのはMHだけではな いだろうか。

MHの有名な曲で「Aerial Boundaries」という曲があるが、初めて聞いたときは絶 対に2人で弾いているのだと思った。後にこれは一人で弾いていることがわかり 大変驚いた。

詳しい奏法はあらゆるところで語られているのでここでは控えるが、後で紹介す る楽譜を購入して確かめてほしい。また、左手をプリング・ハマリングしながら右 手タッピングする奏法をする人たちがやたらに増えているが20年前のこの曲の 影響があまりに強いからだろうと思う。

私が好きなMHの奏法の中でデコピン奏法がある。(私がそう呼んでるだけで、 いろいろ呼び方があるらしい。)簡単に言うと、右手の中指を親指の付け根に引 っ掛けて勢いよく弦を弾き飛ばすのである。ちょうどデコピン(関西ではコンパ チ)をやるときのように弦にデコピンを食らわすのである。腕を振り下ろしながら デコピンを行い、腕を上に引きながら親指と小指でベースとメロディーを弾くので ある。

この奏法が使われているのが「Hottype」と「Ragamuffin」である。

わかりにくいので、例で説明すると、

D|-------0-------0-------5-------5----|
B|-------0-------0-------5-------5----|
G|-0---0---0---0---5---5---5---5------|
D|------------------------------------|
G|---0---0---0---0-------5-------5----|
C|-------------------0-------0--------|

3弦は中指の爪でデコピンして、5,6弦は親指で、1,2弦は小指で弾くようにして 腕をギターから離す方向に動かす。
この奏法はDVDで出ている「Windham Hill in Concert」の中で「Follow  Through」を弾いているのを見ると良くわかる。




使用楽器
タカミネ/マイケル・ヘッジズ・カスタム
TSS-30をベースにカスタム・オーダーしたモデル。ブラス製のナット、全体の音 量と高音域の補正をねらって通常のモデルよりも約10mm拡大されたサウンドホ ールにするなど。このギターの6弦にエレキ・ベースの弦を張るなど、かなり特殊 なゲージを張り、それを変則的なチューニングで用いるため、ブリッジ部での弦 長もそれに合うように通常のモデルとは若干異なっている。

マーチン D-28
ナットをブラス製に交換。サドルも交換されていて、変則チューニングにおいても オクターブが合うように各弦ごとに弦長が微調整されている。ピックアップはサン ライズのハム・バッキング・ピックアップ(サウンド・ホールに取り付け)およびボ ディー内部にコンタクトピックアップが取り付けられている。マーチンD-28(バー バラ)に関してはリンクでも紹介しているNomad Landに詳しく書いてあるのでそ ちらを参考にして欲しい。


ハープギター
通常の6弦アコースティックギターに加えて6弦側に5本の弦のハープ部分がつ いた幅の広いギター。「ビコーズ・イッツ・ゼア」で使われている。左手でギター部 のタッピングをしながら右手でメロディーを弾く姿は圧巻。「ウインダム・ヒル・イ ン・コンサート」(DVD)で生演奏を見ることができる。

ハープギターに関しては、日本で演奏している人はあまりいないため、(私の知 る限り安田守彦さんぐらいだと思う)現物を見たこともない人がほとんどだと思う が、MHフリークが高じて私もついにハープギターを買ってしまった。

MHが所有している主なハープギターは「Dyer(ダイヤー)」「Knutsen(クナットセ ン/クナッツェン)」「Gibson」だが、「Because It's There」は5弦ベース付きの Dyerハープギターで弾かれたものである(Dyerは2台所有しているらしい)。映画 「植村直己物語」の主題曲として聞いたことがある人は結構いるのではないか と思う。
ただ、ハープギターを持っていないと弾くことができないため、実際に弾いたこと がある人はあまりいないと思う。

「Aerial Boundaries」と同様の左手プリングオフ・ハマリングの連続だが、右手の ベース音が混じりあわないように巧みなミュートが必要とされ、結構難しい。
ちなみにハープギターを持っていないので演奏をあきらめるのではなく、この曲 を6弦ギター用にアレンジして、来日したMHの目の前で弾いてみせてMHを驚か せた若者が、今では「押尾コータロー」としてプロで活躍しているというのは有 名な話。



弦とピックアップについて
曲によっては6弦をEからAまで落とすものもあり、また5弦をAからCに上げる曲も ある。通常のアコースティック・ギターに使われるブロンズ弦ではここまでチュー ニングを上げ下げするとテンションが下がりすぎて音程が不安定になったり、逆 にテンションを上げすぎる事で弦が切れてしまったりして何かと都合が悪い。そ こで、多少ながらも切れにくいニッケル弦を使い、しかも変則チューニングに最 適な太さの弦を個々に選んで張っている。

今ではアコースティック・ギターといえどもステージではほとんどのミュージシャン がマイク・アタッチメントを使っているが、その中でも最も代表的なのが「バーカ スベリー」や「フラップ」などに代表される振動型のピック・アップであろう。彼がい つも使っているMartin D-28やハープ・ギターにも「フラップ」のマイクが内蔵され ているが、これだけだと彼のサウンドの大きな特色になっているタッピングやハ ーモニクス、低音弦の倍音などを拾いきることは難しい。

そんな音の不足を補うために、彼は「サンライズ」というマグネット・タイプのピッ ク・アップをギターのサウンド・ホールに取り付けている。この二つのピック・アッ プで拾った音をミックスして表に出している。彼によれば、このシステムはニー ル・ヤングのサウンド・エンジニアが考え出したという話である。
(この項のみ「岡崎倫典『Bayside Resort』 楽譜出版KMP」より抜粋。


演奏上の注意点
私もそれほどうまくないので大きなことは言えないのですが、一言「ノリ」でしょ う。自分がノって演奏していれば自然と他の人にも伝わります。レコーディング ではないのでミストーンだって出るはずですが、あまり細かいことに気を使って いてはノリが悪くなってしまいます。

ただ、たまには自分の演奏を録音して聴いてみる事。あまりミストーンばかりで はノリもへったくれもありません。

右手のタッチがどうだとかはその後の段階でしょう。ストリングストッピングは重 要なのでマスターすべきです。デコピン奏法をやるときは右手中指の爪をコーテ ィングしておくこと。さもないと爪が薄くなっていきます。

Words  Tomo Iwasaki・・・・



アルバム伝記楽譜ギター作曲リンク





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