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中独関係に陰り 独空港買収の中国企業、送金滞る

2008年01月17日22時11分

 ドイツの空港を買収した中国企業が、中国政府から海外送金の許可が得られず、期日を1カ月以上過ぎても支払いができないでいる。昨年9月にメルケル独首相がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談してから悪化した中独関係が影響したとみられ、関係者は頭を抱えている。

 独北部パルヒムにある空港の買収が決まったのは昨年5月。もともとパルヒム郡などが運営し、チャーター機や貨物機が利用。毎年100万〜300万ユーロの赤字を計上していたため、07年1月に売却先を公募。中国河南省の貨物輸送会社、林徳集団が、空港と空港管理会社、近くの産業団地の土地使用権を手にした。買収額は約3千万ユーロ(約47億円)。中国―欧州間の貿易が伸びているのを背景に、欧州での物流拠点をつくる構想だった。

 林徳は7月から毎月の運営費約15万ユーロを支払い始め、9月には初めて鄭州から貨物便が飛び、パルヒムで歓迎式典があった。式典を企画した地元シュベーリン商工会議所のグラウス氏は「すでに微妙な雰囲気が流れていた」と話す。

 前日の23日、メルケル氏がベルリンの首相府で、中国政府と対立するダライ・ラマ14世と会談したからだ。中国は激しく抗議。ミュンヘンで予定されていた両国間の会合が中止されるなどの影響も出た。11月には買収に関係する中国の銀行関係者らによるパルヒム訪問が中止。理由も告げられなかったという。

 空港買収代金の支払期日の12月になると、林徳からパルヒム郡のイレディ郡長に「送金の許可が政府から下りない。期日までに支払えない」と、連絡があった。

 理由についてパルヒム郡関係者は「両国の政治的な意見の不一致から支払いの許可が下りない」と林徳から聞かされた。州政府関係者も「ダライ・ラマ14世訪独による独中関係の悪化が関係していると解釈せざるを得ない」とこぼす。独連邦政府は「州の所管事項でコメントできない」との立場だ。

 林徳も困惑しており、社長が今月中にも訪独、分割払いなどを検討するという。イレディ郡長は「時間をかければ許可も下りるだろう。それまでの対応を協議するしかない」と話す。

 メルケル首相は15日、10月に北京で開催するアジア欧州会議に出席、中国との関係改善に取り組む意向を示した。これに対し中国外務省の姜瑜副報道局長は17日、「メルケル首相の態度表明を重視している」と述べた。

 ただメルケル氏は「ダライ・ラマ14世との関係は変わらない」とも述べており、ダライ・ラマ14世は春にも再び訪独の予定がある。両国関係は当分ぎくしゃくしそうだ。

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