大規模地震の際に、情報収集や被災者対策で拠点になる県と県内各市町の庁舎176棟のうち、現行の耐震基準を満たしているのは47・7%の84棟にすぎないことが県消防防災課の調べで分かった。6400人以上が犠牲になった阪神大震災は17日で発生から丸13年を迎えるが、学校など他の公共施設の改修を優先させたり、財政難から庁舎工事が進んでいない実情がある。
改正建築基準法で耐震基準が強化された一九八二年以降に建てられた建物は、阪神大震災でも倒壊が少なかった。逆に改正法の基準を満たしていない建物は阪神大震災クラスの地震で倒壊する可能性がある。
県消防防災課によると、〇七年四月時点で県と県内市町の全庁舎百七十六棟のうち、八一年以前に建てられた庁舎は百十一棟。このうち三十一棟で耐震診断が行われ、十九棟で現行の耐震性が確保(改修必要なし十棟、改修済み九棟)できた。しかし残り八十棟は診断もされておらず、基準を満たしているか不明だ。
県建築課は「安全確認する意味でも耐震診断をしてほしい」と求めているが、診断費用が一棟で数百万円かかる上、「改修工事の優先順位が決まっていない段階で調査はできない」(佐野市)という市町も多い。
矢板市と下野市は耐震診断の結果、基準を満たしていない庁舎施設があることが判明したが、改修工事に億単位の費用が必要で、さらに学校や公民館など優先順位があることから、改修工事に踏み切れていない。
庁舎のほか、災害時の避難所などに指定されている県内の体育館や社会福祉施設といった「防災拠点施設」二千六百六十三棟の耐震化率も〇七年四月時点で48・6%にとどまっている。都道府県平均の59・6%を下回っており、全国で四十三番目と水準は低い。
耐震診断・改修を早急に進めるため、数値目標を盛り込んだ計画の作成を都道府県に義務付けた改正耐震改修促進法の施行を受け、県内全自治体も〇九年度までに改修計画を策定し、優先順位を決めた上で具体的な改修に移行するという。
県建築課は「行政がストップすると人命にかかわるだけに、策定作業後の速やかな庁舎改修を進めたい」としている。