2004参院選

創価学会員、
民主に流れる票、懸念




 参院選で「自民党の劣勢」を新聞各紙がそろって伝えた先週末から週明けにかけて、永田町では自民党から公明党への協力要請が本格化した。だが、公明党を下支えする宗教団体「創価学会」の古参会員の間では党の政策決定への異論がくすぶる。公明支援のお願いでさえ、思わぬ反論を受けることがあるという。政党間の協力関係はどこまで実を結ぶのか。

 5日夜。残業をこなしながら東海地方の創価学会員の女性会社員(30)はいらだっていた。前日の新聞各紙が1面で「自民苦戦、民主好調」と書いていたからだ。学会の先輩からは数日前、「このままではだめ。若者が頑張って無党派層を掘り起こせ」と言われていた。

 「早く帰って、知り合いに電話をかけなきゃ」

 比例区は公明党の候補に、選挙区は自民党候補に投票して、と頼むのだが、ノルマがあるわけではない。

 卒業した短大の同窓会名簿をもとに電話をかけると、「選挙のたびに電話をくれるけど、どうしてそんなに頑張るの?」と、旧友からあきれられることもある。

 「平和の党と言うけど自民党と一緒に自衛隊をイラクに出したじゃん」

 そんな反応に「自衛隊はイラクで歓迎されている」と言ったきり、言葉に詰まることもあるが、すぐに「私の役割は選挙に無関心な人たちに呼びかけることなんだ」と自らを励ます。

 「でも、本当は信者の仲間が頑張っているから私も頑張る−−それだけ。選挙はお祭りや部活のようなものなのだから」

 首都圏で学会の地区幹部をしている40代の男性は「親しい会員の半分は、すでに期日前投票を済ませた」という。

 昨秋の衆院選では公示日前から、自民党候補への応援指示を受けていたが、今回は6日の時点で「まだ、何もない」。だが、最終盤では上の幹部から「きっと引き締められる」と思っている。

 学会員にとって選挙活動は「政治の戦いではなく、信心の戦い。法戦なのだ」という。選挙で頑張れば頑張るほど功徳があると信じている。しかし今回、会員の動きはまだ鈍い。古参の会員ほどそう見えるという。

 「憲法改正や多国籍軍参加なんて……」「政府の年金改革は信じられない」。最近、周囲でそんな声をよく耳にする。このままでは公明党に投票しない人も出そうだし、民主党へ流れる票も結構あるかも――この男性はそう感じている。

 6月27日、東京都練馬区役所近く。

 「私は公明党が大好きです」。東京選挙区で公明新顔の応援をした歌手の山本リンダさんが叫ぶと1000人近い聴衆が沸いた。学会副芸術部長としての登場だった。

 聴衆のほとんどはそのまま区役所の期日前投票所へ。公明党関係者は「手続きが簡単になった期日前投票制度を使った作戦。街頭からその足で投票に行ってもらうようにすれば確実に票につながる」と話した。

 別の関係者によれば、学会員たちはあと4日間、人海戦術に入るという。「会員1人で1日に3人の新規開拓。都内でそれを仮に10万人がやれば……」と言った。

(朝日新聞2004年7月8日朝刊紙面)


  • バックナンバー一覧



  • ニュースの詳細は朝日新聞へどうぞ。購読の申し込みはインターネットでもできます。
    asahi.comに掲載の記事・写真の無断転載を禁じます。
    すべての内容は日本の著作権法並びに国際条約により保護されています。
    | 著作権 | リンク | プライバシー |
    Copyright Asahi Shimbun. All rights reserved. No reproduction or republication without written permission