昔から、無法者が英雄を気取ると、ろくな結果を招かない。南極海の公海上で、日本の調査捕鯨船「第2勇新丸」のスクリューにロープを絡ませるなど、航行の安全を脅かした上に、船に乗り込んできた反捕鯨活動家を自称する不届きもの2人が、拘束された。
▼至極当然の措置だが、2人が所属するというシー・シェパードなる団体は、捕鯨は違法だと伝えに乗り込んだと主張している。日本の調査捕鯨は国際捕鯨取締条約に基づいて、国際捕鯨委員会(IWC)が認めた合法的な権利である。捕鯨の是非に議論はあろうが、合法的な権利を暴力で妨害するのは許されない。
▼彼らが根拠としているのは、先ごろオーストラリアの連邦裁が下した判決かもしれない。豪政府はかねて南極大陸の領有権を主張している。日本が調査捕鯨している海域は南極大陸の沿岸200カイリ以内で、豪政府が鯨の保護区域に指定しているから、そこでの捕鯨は違法という理屈である。
▼現在、7カ国が南極大陸の領有権を主張している。国際社会はどこの主張も認めていない。領有権は棚上げにして、学術調査の協力を進める南極条約が結ばれている。したがって、調査捕鯨の海域はれっきとした公海である。南極海の調査捕鯨を違法というのは、豪州による南極大陸領有を容認することになる。