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現在位置:asahi.com>社説 社説2008年01月17日(木曜日)付 株安・円高―「もろさ」克服の機会に日本経済の「もろさ」が一気に噴き出している――。市場はさながら、そんな展開といえよう。 株安と円高が止まらない。日経平均株価は連日売られて1万3504円へ急落し、円相場は東京で一時1ドル=105円台にまで上昇した。 戦後最長といわれるいまの景気だが、内需の主役である個人消費はずっとさえないままだ。賃金所得が増えないのだから、それも当然といえる。輸出の好調が企業の収益を潤し、それが設備投資に回るという1本足打法の景気構造は、もともと弱さを抱えていた。 米国経済の雲行きが怪しくなり、輸出に不安がよぎれば、株価が打撃を受けるのは目に見えている。 しかも、東京株式市場は売買の6〜7割を外国人が占める。下げ基調の市場を嫌って資金を引き揚げ、中国やインドなど上げ潮相場の国々に回しており、東京の下落を加速させた。「外国人頼み」のもろさが露呈している。 一方で、震源である米国のサブプライムローン(低所得者向け住宅融資)問題は、米国の景気悪化へ波及してきた。昨年12月の失業率が5%に上昇。クリスマス商戦も5年ぶりの低調に終わった。クレジットカードの延滞率が上昇するなど、米国経済の7割を占める個人消費に失速の警戒感が出始めた。 米国では、大手の銀行・証券が10〜12月期決算でも巨額の損失を計上した。動揺を防ぐため、中東やアジアの資本家やファンドから相次いで出資を仰ぐ。 日本のみずほコーポレート銀行も大手証券メリルリンチに1300億円を出資する。長期的にみれば有利な投資と判断したのだろう。不良債権の泥沼から立ち直った表れであってほしい。 たしかに、米国の大手金融機関が破綻(はたん)したり、ドルが暴落したりする可能性はごく小さいだろう。しかしサブプライム問題の拡大ぶりをみれば、米国経済の変調は想像以上に根深いのではないか。景気がかなり悪化すると厳しめに考えておいた方がいいだろう。今年前半はマイナス成長に陥るとの予測も出ている。 日本はそれにどう備えるか。好調な中国やインドなど新興経済圏への輸出が支えてくれる面はあるものの、新しい成長の道を切り開く必要がある。 ひとつは、国政の停滞感を打開することだ。株安には福田首相の受け身の政治姿勢が少なからず影響している。与野党は、国会のねじれ状態を乗り越えスピード感をもって改革を進めていく、という信頼を取り戻す必要があろう。 企業も長く異常な円安のぬるま湯につかり、輸出依存を改善できなかったことを大いに反省すべきだ。円高はこの体質の転換を促し、原油・穀物相場の高騰を和らげるプラスの効果ももつ。 この機会にサービス部門の生産性を上げるなど、内需主導の経済成長に向けた自己改革を進めなければならない。 三菱車判決―安全こそトップの責任だ「わしゃ、よく知らんかった」というような社長の弁明は通らなくなった、ということだろう。 02年、三菱自動車製の大型冷蔵車がクラッチ系統の欠陥から暴走し、建物の壁にぶつかって運転手が死亡した。この事故をめぐる裁判で、元社長の河添克彦被告が業務上過失致死罪で禁固3年執行猶予5年の判決を言い渡された。 三菱自動車は車の欠陥を隠してリコール(回収・無償修理)を怠っていた。そうした行為について、トップにまで広く刑事責任を認めた意味は大きい。 車は便利な一方で、ひとたび暴走すれば、乗っている人や歩行者らの命を奪う凶器となる。そうした製品を世の中に送り出している最高責任者である以上、責任を問われるのは当然だろう。横浜地裁が「代表者としての自覚に欠けた無責任な態度」と批判したのもうなずける。 同社製の欠陥車をめぐっては、トレーラーから外れた車輪が母子を襲って3人を死傷させた事故の一審判決が先月あり、中間管理職2人が有罪となった。今回の裁判が注目されたのは、トップが幹部3人とともに起訴されたからだ。 三菱自動車製のトラックでは、1990年ごろからクラッチ系統に亀裂ができるトラブルが多発し、事故も起きていた。だが、同社はリコールせずに、こっそり改修していた。 それというのも、同社では経費節約とブランドイメージを守るため、様々な欠陥を長年にわたり隠してきたからだ。 ほかの欠陥のクレーム隠しが発覚したのは、今回の事故の2年前だ。当時の運輸省は改善が必要な欠陥をすべて報告するように求めた。ところが、同社はクラッチ系統の欠陥を隠し続けた。 当時社長だった河添被告は、自社製品のクラッチに欠陥があること自体は知らなかった。しかし、部下が一部の欠陥を隠して運輸省に報告することを承認し、記者会見してリコール隠し問題に区切りをつけるとまで宣言した。 判決はこうした経過を認め、「事故は予測できなかった」という無罪主張を退けた。 そもそも河添被告は、社長に就任した当初から長年にわたるリコール隠しを知っていたのに、発覚するまで何も手を打たなかったというのだから、なんとも理解しがたい。 パロマ工業製のガス瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒事故でも、同社の前社長が業務上過失致死傷罪で起訴されている。製品の欠陥が原因で事故が起きた場合、トップの刑事責任が厳しく問われる時代になったのだ。 これまで以上に自社製品の事故情報をいち早くつかみ、迅速に対策を講じる。そのためには、社内の風通しをよくし、会社にとって不利な情報こそ、ただちに届くようにしなければならない。 そうしたことが、この事件から学ぶべきトップの教訓だろう。 PR情報 |
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