神道に魅せられて
20歳のオーストリア青年、念願の神職に
神社に仕えて神事をつかさどる「神職」。オーストリア人青年ウィルチコ・フローリアンさん(20)が名古屋市千種区の上野天満宮で外国人としては全国初の神社本庁が認める神職として働いている。
■日本の伝統守る覚悟
ウィルチコさんはウィーン大学日本学日本学科の学生。キリスト教から神社神道に改宗し大学を休学して来日、同天満宮で住み込みで働いている。
「神社は日本にしかない文化で、日本の古い伝統文化が残っている場所。神社の雰囲気がとても落ち着きます」とウィルチコさん。
神社に興味を持ったのは地理教員の父親の影響。自宅にある世界各国の写真集を見て、日本の神社で装束着用時に履く靴「浅沓(あさぐつ)」の特異な形に魅せられた。
その後ウィルチコさんの神社への興味は膨らむ一方で2001年にインターネットで知り合った同天満宮の半田茂宮司(53)に神社の成り立ちなどについてメールで尋ねるなど、やりとりするようになった。02年に父親とともに初来日、日光東照宮や明治神宮など30社を回り、名古屋で半田宮司と初対面。「当時はお父さんと英語を通じて意思疎通していました」と半田宮司は振り返る。
その後ウィルチコさんは2度来名。「(ウィルチコさんの)日本語の上達具合に驚きました」と半田宮司。「神職になりたい」とのウィルチコさんの言葉を初めは「冗談か」と思っていたが、神社に対する熱い気持ちが本物であることを知り、ウィルチコさんへの支援を決めた。
07年4月から半田宮司が身元引受人となり、ウィルチコさんは同天満宮で住み込みで働きながら神職を勉強。8月に熱田神宮の講習会を受講して試験に合格。12月1日、正式に神社本庁から階位を授けられ念願の神職となった。
ウィルチコさんの主な仕事は祝詞や神饌(しんせん)の交換、社殿の掃除、受け付け業務など。さらに神職として日々の勉強に余念がなく、休日はもっぱら全国の神社を訪問。今までに約200社を参拝した。
半田宮司は「今は神社もいかに社会貢献するかという時代。志のある人に頑張ってもらい、(ウィルチコさんに)神社神道の在り方について意見できる人になってもらえれば頼もしい」とエールを送る。
ウィルチコさんは「今後も神職の勉強を続けていき、階位を上げていきたいです。神職として奉仕することで日本の伝統を学び、生きている文化として残すことが目標です」と意欲的だ。
【写真説明】上野天満宮で掃除をする神職のウィルチコ・フローリアンさん
(2008年1月16日更新)