1 名詞・代名詞:名詞と数、総称の you など
1.1 than のあとの格
Q  Stan is stronger than me.(スタンは僕より強い)は正しい言い方ですか。Stan is stronger than I. と、どう違うのですか。
A   (○)Stan is stronger than me. も(○)Stan is stronger than I. も、いずれも使われる形です。Stan is strong. と I am strong. のふたつの文を比較級や than を使って1文にしたのが比較の構文だと考えれば、Stan is stronger than I (am). が正しいのはわかります。ただし、than のあとに代名詞だけを置く場合、口語では、それが主語でも目的格を用いる場合が多いのです。よって Stan is stronger than me. もよく使われます。

発展解説
比較をする場合には、「だれ」と「だれ」を「どんな点で」比べているのかを確認することが大切です。次の例で意味の違いを整理しておきましょう。

(1) She loves him more than me.
(2) She loves him more than I.

 (1) はShe loves him more than (she loves) me. という意味です。ここでは him と me が対比されていて「彼女は私(を愛する)より彼を愛している」ということを意味します。一方、(2) は She loves him more than I (do). という意味で、「彼女は私(が彼を愛する)より彼を愛している」ことを意味します。

1.2 複数名詞と動詞の呼応
Q  Eight years is a long time.(8年というのは長い時間だ)は、Eight years が複数形なのに is で受けてよいのですか。
A   Eight years をひとつの期間と考える場合には単数形の動詞で受けます。特に be動詞のあとに時間的な概念を表す名詞句(ここでは a long time)がくる場合は、is / was で受けることが多いようです。

 Three months is a long time to wait.
 (3カ月も待つなんて長いわ)

発展解説
 なお動詞 pass を使う場合は、まとまった期間が経過したというよりも、1年1年が過ぎていったという気持ちが強くなるので、次の例のように複数形として受けます。

 Eight years have passed since we met.
 (私たちが出会ってから8年がたった)

1.3 100、1000、ダース
Q  hundred、thousand、dozen の前に2以上の数詞が付いたら、それぞれ hundreds、thousands、dozens となりますか。
A

 hundred、thousand、dozen が数詞や several のあとに用いられるときに、hundreds、thousands、dozens となることはありません。たとえば「800」は(×)eight hundredsではなく(○)eight hundred です。

 It cost several thousand pounds.
 (それには数千ポンドかかった)
 なお、「何百もの」「何千もの」「何ダースもの」という不定の数を表すときは、それぞれ hundreds of 〜、thousands of 〜、dozens of 〜となります。

 He has hundreds of books.
 (彼は何百冊もの本を持っている)

1.4 no+名詞
Q  「私には弟がいない」と言う場合、I have no brother. が正しいのですか、それとも I have no brothers. が正しいのですか。
A

 この場合はどちらも正しいと言えます。no は単数(可算・不可算)名詞の前にも複数名詞の前にも用いられ、名詞を単数にするか複数にするかは文脈によります。質問の例では、「弟」はひとりの場合もあるし、ふたり以上の場合もあるので、brother でも brothers でも、どちらでも英語としては正しいわけです。たとえば父親や母親のように、ふつうはひとりしかいない、あるいはひとつしかないものを表現するときは単数にします。

 That cat has no tail.
 (そのネコにはしっぽがない)

また、複数であることが普通の場合には複数にします。

 There are no footsteps in the snow.
 (雪には足跡がひとつもない)

1.5 総称の you
Q  「人は誠実であるべきだ」と言うとき、You should be honest. と We should be honest. のどちらが適切ですか。
A

 適切かどうかは状況によります。一般に人を指す場合には、you、we、they、one などを使います。それぞれ、次のような意味の違いがあります。

  • you: 聞き手(相手)を含めて一般に「人々」を表します。
     You can't drink till you're 20.
     (20歳になるまで酒は飲めない)

  • we: 話し手(自分)と聞き手(相手)を含めた「一般の人々」を表します。
     We should learn from our mistakes.
     (過ちから学ぶべきだ)

  • they: 話し手(自分)と聞き手(相手)を除外して漠然と「人々」を表します。
     They say her husband ran off with a younger woman.
     (彼女の夫は若い女と駆け落ちしたそうだ)

  • one: 最も普遍的に「一般の人」を表し、書き言葉でよく用いられます。
     One can never tell when a natural disaster will occur.
     (天災はいつ起こるか決してわからない)

 上記に照らして使い分けましょう。なお、これらの you、we、they、one は必ずしも日本語に訳出する必要はありません。

1.6 everyone を受ける代名詞
Q  Everyone else in the park is walking their dog.(公園のほかの人はみんな犬を連れて歩いている)は 〜 walking his dog. となるのではありませんか。
A

 everyone、everybody は単数ですから、his か her で受けるのが原則です。しかし、特に会話では、複数形の代名詞(ここではtheir)で受けることがよくあります。この場合の they、them、their には複数の意味はありません。指す人の性別を特定しないために、he or she や him or her、his or her の代わりとして使われています。英語には、たとえば chairman(議長)のように、本来男性と女性の両方を対象とするものでありながら,男性しか指し示さないかのような表現があります。そこで近年は、無意識のうちに女性を排除してしまう男性中心の表現は避け,平等を意識できるものが使われる傾向にあります(chairman は、chair あるいは chairperson と言うのが普通です)。

1.7 疑問文中の some
Q  Would you like to have some more coffee?(コーヒーをもう少しいかがですか)は疑問文なので、some でなく any になるのではありませんか。
A

 確かに some(thing) は普通、肯定文で用いられ、any(thing) は疑問文と否定文で用いられます。しかし、質問の文のように人に物を勧める場合は普通、some を使います。some を使うと「はい」という返事を促す意味合いが出て、どうぞ召し上がってください、という気持ちが伝わるからです。次のように any を使うと、コーヒーが要るか要らないかを尋ねているだけの、ぶっきらぼうな言い方になります。

 Do you want any more coffee?
 (コーヒーをもう少しどうですか)

発展解説
any は、次のような否定的な文でよく使われます。

 There's hardly any coffee left.
 (コーヒーはほとんど残っていない)

1.8 that か one か
Q  His behavior was that of a gentleman.(彼の振る舞いは紳士的だった)の that は one で置き換えることができますか。
A

 that はすでに述べられた名詞の繰り返しを避けるために使われます。質問の文では、that は the behavior の代用です。behavior(振る舞い)は不可算名詞なので、one で置き換えることはできません。one はすでに出た名詞(可算名詞)と同種で、かつ「不特定」のものを指すときに使います。

 I lost my umbrella yesterday. I have to buy a new one.
 (昨日、傘をなくした。新しいのを買わなくては)

 なお the one とすれば、that と同じように「特定」の可算名詞を指すことができます。

 The sculpture is very similar to the one [that] in the foyer of the Ritz Hotel in Rome.
 (その彫刻はローマのリッツホテルの入り口にあるものと、とても似ている)
 *the one [that] は the sculpture を指す

 ただし、所有やそれに近い意味を表す of 〜 が続くときは、the one ではなく that が用いられます。

 The population of India is much bigger than that of Japan.
 (インドの人口は日本の人口よりずっと多い)
 *(×)〜 than the one of Japan. とは言わない


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